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突入、ウォーデン領



「頭痛いです」

「昨日の事覚えてる?」

「…忘れてくれませんか?」

「わかった」


 朝、宿で朝食を取ろうとするとちょうどエルヴァ達も起きて来た所だった。

 

 それにしても酷い顔だ。


「今日帰れんの?」

「無理です、動いたら吐きます。乙女の恥です」

「でも、ゼタールは帰る気満々だぞ」

「…せめて昼過ぎで」


 まあ、本人は帰る気満々だけど二日酔いでベッドから起き上がれないし。


「あ、あの…おはようございます」

「ん、おはよう」


 ノリコも一緒だったようだ。


「腕がな…物寂しいんだ」

「アルマ欠乏症ですか?大変ですね」

「だろ?」

「あの…昨日から言ってるそのアルマって方は?」

「相棒」

「命の恩人」

「な、なるほど?」


 どう教えられてるのかは知らないが魔族とは言わない方がいいだろう。


「それで?アクト達は今日出発なんですか?」

「そうだな」

「帰りはいつ頃で?」

「知らね。今すぐ帰っていいってんならお前らと帰りてえわ」

「はは、これ以上重い馬車引きたくないですよ」

「え?エルヴァさんが馬車引くの?」

「御者ですよ、御者」


 ああ、そこも言わない方がいいのか。


「今度は周りに味方なんていないんですから、死にかけないでくださいよ?誰も助けてくれませんからね?」

「わかってるよ」

「…幸運を。今度はアルマを泣かせたら許しませんからね」

「お前もな、気を付けて帰れよ。あ、それからアルマには心配すんなって伝えといてくれ」

「ムカデ」

「…肯定でいいんだよな?」


 お互いに軽く拳同士をぶつけ合う。


 また今日からしばらく地獄の始まりだ。



ーーーーー



 着きましたよと声をかけられたのはあれから何日後の事か…結局勇者どもがだらだらやってて遅れに遅れた。

 それで昼寝してたら御者の老人に起こされて…何やら外で騒いでいたので馬車から顔を出すとどうやら目的の場所に着いたみたいだ。


「長旅ご苦労様ですと言いたいですが…ここからが本番ですね」

「はぁ…嫌だ」

「ご武運を祈っておりますよ」

「とは言っても俺は四天王城?城?までの警護なんで」

「それでも立派な仕事ではないですか」

「…ありがとうございます」


 この人がどこで待機してるのかは知らないが、どうか襲われませんように。


「おい、無能なにしてる。邪魔だ、どけ」

「…はぁ」


 なるべく見ないようにしてたが…改めて顔見るとうざったい連中だ。


 ズカズカと馬車に乗り込んでくると中にしまってあった各々の装備を袋に詰めて持つ。

 なら最初からそうしろよとか言いたい。


「さっさとしろ」

「…へいへい」


 地獄の始まりだ。



ーーーーー



 別にクリスマスにイチャイチャするカップルを見たって、お幸せにとかしか思わなかったが…後ろで延々とイチャイチャと緊張感のない連中の声を聞いていると爆発しろとかじゃなくて、単純に生理的嫌悪感を感じる。それほどこいつらが嫌いだ。


「はぁ…」

「おい、どうした無能。早く行けよ」

「…本当にこっちで当ってんのか?」

「そうだよ。だから、早くしろ」


 魔族と人間の住む領土のちょうど真ん中らしいが…何というか不思議だ。

 見たことのない植物がそこら中に生えてるし、なんか空紫色だし…変な鳥飛んでるし…ん?鳥。


「おい、ソイツはデビルバードだぞ!」


 知らねえよ。何いきなり?大声出されても…って…


「でっか!」


 思ったより数倍大きかった。


 巨大な怪鳥は鉤爪を此方へ向けて俺の事を捕まえて逃げ去るつもりだったのだろう。

 それはそれでいいのだが、流石にあの爪が腹に食い込むのは嫌なので【クラウノス】を撃つ。


『ギョエエエエエェェッッ!』

「…焼き鳥食べたいな、アルマ…そうだいねえんだ」

「…チッ」


 何やら舌打ちが聞こえてきたが気にしないでおこう。


 デビルバードとか言う未知の魔物も倒せたわけだし。


「無能さん?終わったなら早く進んでくださる?貴方と違って私達に暇は無いのよ?」

「はいはい、さーせん、さーせん」


 突っ立ってるだけのくせして偉そうに。暴力女が。


 それから暫く進んだが特にこれと言って何もなかった。

 他にも未知の魔物らしき姿は見えたが、大抵は戦わずに逃げ出してしまう。もしかすると大人しい魔物が多いのかもしれない。


「…なあ、無能。ところでその剣。随分といい奴みたいだけどどこで買ったんだ?使いこなせてないし寄越せよ」

「断る。第一これはお前の大嫌いな俺のエンチャントした武器だぞ?」

「はっ、取られたくねえからって嘘つくんじゃねえよ、ボケ。いいから貸せ」


 強引に魔剣を引ったくられるとクロードが引き抜く。

 途端に目の前に巨大な火柱が立ち上り…ものの数秒経つと炎は弱まっていきやがて消えて元の剣へと姿を戻した。つまりは所有者の魔力切れ。クロードがへなへなと力なく座り込む。


「なんだこの鈍!お前みたいな無能にお似合いの糞武器じゃねえか!」

「使いこなせないからって物に当たんな。ガキかよ」


 投げ捨ててきたので魔剣をキャッチするとサツキが追い討ちに魔法で攻撃してくる。

 まあ、体を電気化させたのでダメージなんて無いが。


「…クロード、大丈夫!?」

「体に力が…くっ」

「ただの魔力切れだよ。馬鹿だなぁ」


 本当のことを言ってやったのに今度はエイジが殴りかかってきたので軽く避ける。


「…チッ。避けるな」

「そんなに何か殴りたいなら横の乳袋でも殴ってろよ。脂肪の塊なら衝撃吸収がいいんじゃねえのか?」

「…最低ね、この屑が」

「どうとでも言え、暴力女が」


 本当にこいつら嫌い。


「マナポーションでも飲むか時間経過を待つか、どっちかにしろよ」

「わかってんだよ、お前は黙ってろ」

「へいへい、さーせーんしたー」


 あの頃もこうやって流してればもう少し精神的ダメージも少なくて済んだのかもしれない。

 いや、今だからか。今は帰る場所も帰らなくてはならない理由もある。少しは俺も成長したのかもしれない。


「今からここに野営地を設営する。明日早朝にヴォーダンの城へ攻めよう。それでいい?」

「大丈夫」

「…ああ」

「問題ないわ」

「わかりました!」

「で、無能。お前の分のテントは…って言わなくてもわかってたか。多少は知恵が付いたみたいだな」


 自分が馬鹿やったせいで魔力切れ起こしたのによくリーダーヅラ出来んな。馬鹿みてえ。


 どうせ度の低い嘲笑でも言われるのだろうと思って早々にあいつらの側を離れて正解だな…なんならこのまんま帰ってもいい気がするが…バレたらアルマや組合の仲間達がと思うと…やっぱり踏みとどまってしまった。



ーーーーー



「まっず、なんだこれ」


 先程丸焼きになったデビルバードとか言うのの肉を焼いて食べてはみたが…とてもじゃないが食べられたもんじゃない。何かドブ臭いし、硬いし…最悪だ。


 しょうがないから持ってきていた干し肉と黒パンだけ食べたらさっさと寝よう。

 あと数日の辛抱だ。それで全てが終わる。


「あ、あの…」

「……」

「寝たふりしてますよね?」

「してるって事は話したくないってことなの理解出来る?なんでわざわざ隣に座るわけ?」

「いや、焚き火から離れたら寒いかなって」

「…あっちには毛布なり、異世界の暖房器具あんだろ。あっち行けよ」


 またノリコだ。なんなんだよこの女。


「あの…明日は死闘だろうって…その」

「…ああ、おっ始めたのね。猿かよ」

「ははは…」


 生命の危機に瀕すると人は子孫を残そうとするらしいが…あの連中はなんで死ぬ予定も無いのに毎晩飽きもなくやってるんだろうか?それでしか愛情表現ができないとか?それは所謂恋人ではなく性的な友人とか言う奴なのでは?

 まあ、連中のなんて想像するだけで悍しくて胃の中身が逆流してきそうなので考えたくもないが…


「あの…コダマさん?は童貞ですか?」

「あんたが何言いたいのかは知らないが一つだけ言わせてもらうなら、2度と近づかないで欲しい」

「…ごめんなさい」

「わかってんならあっち行っててもらえます?寝るのに邪魔なんで」

「…うぅ、」


 助けてアルマ。


「静かにしてるんでお願いします。こっちにいていいですか?」

「…い、いですよ」

「露光に嫌そうな顔しないでくださいよ…」


 うるさい女だなぁ…


 パチパチと燃える焚き火の音だけが辺りに響く。時折気色の悪い嬌声が聞こえてくるが梟の鳴き声だとか思えば無視できる。


 しかしなんでノリコと背中合わせて寝てるんだか…別に普段からアルマと同じ部屋で寝てるせいか変な気分にはならないが、何か現勇者パーティーに背中向けてると刺されそうで怖い。


「…な、なんだか恥ずかしいですね」

「別に」

「…あ、そうだ!よかったら今度コダマさんのエンチャント見せてくれませんか?私も参考にしたいので」

「そのエンチャントが弱いから捨てられたのに今更俺から何を学ぶの?」

「…もしかして私が召喚されたせいでクロードさん達と別れてしまったのを怒ってますか?」

「うん、ごめん。今までの悪口は全部謝るからさ。そんなこと言わないでくれる。マジであんなクソ共と行動するだけで吐き気がするから」


 本当にやめてもらいたい。今ちょっと普通に殴りそうになった。


「ごめんなさい…」

「明日早いんだろ?寝てくんない?」

「…はい」


 やっと静かになった…はあ、これで寝れる。


「あ、あの…なんだかキャンプみたいで楽しいです…ね。お、おやすみなさい!」


 最後までうるさい女だ。

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