最悪との再会
「…すまねえ、てめえら!俺が…俺が不甲斐ねえばかりに!」
手をつき謝るガルドを組合の誰1人として責められかった。
曰く、昨日突然王都に呼び出されたというのだ。そのくせして、何も話すことなく先方が忙しいと言われたので一晩泊まらせられ今帰ってきたのだ。
「ガルドさん、ともかく今はアクトを助けに行かねえと…よ」
「そうですぜ、アニキ!」
「てめぇら…」
「……暑苦しい男の友情は…いいから」
そんなことしてる場合じゃない。
「アクトは王都の連中…あの、メルカとかいう性悪女に連れてかれたんだよな?」
「……ん」
「じゃあ、今すぐ王都まで行きゃあ!」
「……無理。そもそもアルマじゃなくても普通の人…が入るには通行証が必要…それにアクトは多分…」
剥がされた王都の新聞を見る。勇者コダマ アクトと…
「……王城には入れないし…多分、旅に出させられる」
「そんな…!」
「どうにかするしかねえ!」
どうも出来ないだろうと思った。下手にそんなことすれば…この街も組合も権力で潰される。
「……無事でいて」
胸の奥が締め付けらる。不安しかない…けれど、アクトならきっと大丈夫と。そう願うしか無力な自分には出来ない。
ーーーーー
「……」
「久しぶりだな、無能」
心折られた直後にメルカ以上に逢いたくない連中と合わされるのは最早、拷問にしか感じない。
「さて、アクト君。本当に不本意なんだけどさ…君の力を貸してもらいたいんだけど…ああ、拒否権は無いから。拒否するならあの魔族を晒し首にしてもいいし…組合だって取りつ─」
「喋んな」
メルカの腹部に蹴りを入れるとメルカは壁に叩きつけられ腹を抑えて蹲る。
コイツのせいだ。コイツのせいでガルドさんに疑われた。諸悪の権化が。今ここで殺してやる。
しかし背後に殺気を感じたので軽く避けるとノロマな剣が今いたところに振り下ろされた。
「お前何してるんだ!サツキ!急いでメルカさんの治療を!」
「わかった!」
クロードは殺意の眼を向けてくるが…正直この間のドラゴンとの戦いのせいか全く怖くない。感覚が麻痺してるな。
ああ、なんだ…こんな連中に俺は半年近くも怯えてきたのか。
「ゴホッ…ふ、はははは!アクト コダマ。わかってるのか、私に手をあげるっていうのは、お前の仲間の首を1人ずつ絞め殺して言ってるようなもんなんだぞ」
「……」
「されたくなかったら謝ってもらえるかな?ああ、君らの元いた世界の最上級の謝罪の土下座でね」
「……すみませんでした」
早く死んでくれないかなとか思って、言われるがままに土下座するとツバキが腹を思い切り蹴ってくる。まあ、全く痛くも痒くも無いけど。
「…で、なんなんだよ?わざわざ人の心を折って何?肉壁でも足りないの?そこら辺の練度の低い兵士でも連れてけよ」
今度はエイジにスキルを使って殴り飛ばされた。
「…お前程度の命と国を憂う兵士達の命が同価値だと思うな」
「はいはい、悪うござんした」
「態度が悪いなお前。もう1度、力の関係を示してやろうか?」
阿呆らしい。
「まあ、再開の喜びはそこら辺にして…コダマ。君も一応は元勇者なんだし魔王軍くらい知ってるだろ?」
「はぁ、」
「…で、だ先日、魔王軍の幹部の1人が侵攻を開始したんだ」
「ああ、たしかどこぞの勇者様方がボロ負けして帰ってきましたよね。いやー、どのツラ下げて帰って来たんだが…血税ドブに捨てた馬鹿どもの敗走は酒場の吟遊詩人もネタに困らないって大喜びでしたよ?」
「…ッ!」
見なくてもわかる。苛立って今すぐにでも殺してやるって顔してそうだ。
「…で、君も弱いと言えど勇者として召喚されたわけだし…手伝ってくれない?」
「あんた役に立たないからって俺のこと追放した癖になんで今更…大体、俺はそこの勇者様方より弱いんですよ?何もメリット無いですよね?」
「そうだね。だから言ってしまえば四天王までの道中に彼らが無駄な労力を使わないように君に代わりに戦って欲しいってわけ」
なんだ、たまに受ける身辺警護のクエストみたいなもんか。報酬はもらえないだろうけど。
「まあ、そういうわけだから君のそのボロボロの剣とか渡してもらえる?身なりが悪いと…ね?」
「いやです。それにどうせ使い捨てでしょ?身なりなんざ整える必要もありませんよ」
「…そんな鈍より、よっぽどいい剣を渡せるけど」
「宝の持ち腐れって言葉をご存知ない?」
そもそも、こんな連中にレーヴァテイン渡すかってんだ。どうせ、悪用するんだろうし。
「いいですよ、メルカさん。本人も言ってるじゃ無いですか。それに、そんな奴に上等な武器を持たせるなんて勿体ない」
「それもそうだね。さて、コダマ。悪いんだけど兵士用の武器エンチャント場行ってもらえる?」
「なんですかそれ」
「君ら冒険者と違ってね、日々の鍛錬で武器を磨耗するから、エンチャント武器は多い方がいい。例え君程度のでもね?」
「へぇー」
お前らなんかより余程武器消費してるわとか訳の分からないマウントなど取りたくないが、王都の周りで遊んでるだけで武器摩耗するのかとか疑問には思う。
まあ、いいや。さっきからゴミを見る目で見られてるのがいい加減に頭に来てたし。
さっさとメルカに案内してもらってここの地獄から抜け出そう。
ーーーーー
案内されたのは城から出てすぐの宿舎らしき場所。どうやらここで王国直属の騎士達は鍛錬や休息などを行なっているらしい。
「広いな」
「そりゃあそうさ。ここには、王都の兵士全員が住んでいるのだからね」
初めて王都にあるもので感心した気がする。
「ノリコちゃん、次こっちお願いね」
「は、はい!」
「あ、終わったら次こっちも」
そんな宿舎の奥。一際熱気を放っているのは工房らしき場所。
どうやらここが仕事場らしい。
「…明日、早朝までだけど王城に君の居場所は無いから、ここで寝泊まりしてね」
「ああ、助かりますよ。次何か言われたらストレスで胃の中の物ぶちまけるところだったんで」
心底嫌そうな顔してくるが明日からの事を考えると少しでも多く休みたいのも事実だ。
メルカは何やら奥にいた少女と一言二言だけ話すとそのまんま帰ってしまった。
たまたま飛んできた剣に頭刺されて死ねばいいのに。
「あ、あの!」
「ん?ああ、ごめん。出入りの邪魔だったな」
「いえ、そうじゃなくて…」
「おい、ガキ!突っ立てるだけならこっち来て手伝え!」
「無理っすよ、俺金槌握った事なんて学校の図工くらいですし」
「違えよ!ノリコちゃん手伝えってんだ!」
ノリコ…ノリコ?はて、聞いたことあるような…前の世界でか?
「さっさと、エンチャントしろ!何のために来やがったんだよ」
「知らねえよハゲ」
投げられた金槌を避けるとたまたま後ろを通っていた兵士の1人にヒットしたが見て見ぬ振りをしておこう。
工房に入り、渡された剣にエンチャントを施す。【エンチャント・夢幻】と違って、考えなくとも多少の強化でいいらしいので楽だ。
「あの…コダマさん?ですよね」
「そうだけど何?」
「いえ、あの…私の前の…前任者の方だって…あ、あの…汗臭くてすみません…その…私ノリコ ニシカワって言います!」
「前任者…?ああ、俺の代わりに勇者パーティーに補充されてたね。コダマ アクトでーす。見下すなり暴力振るうなりどうぞ」
「え!?そんなことしませんって!」
何がと言いたい。どうせお前はクロード共と楽に行動してんだろうが。
「はぁ、」
「しかし大変ですよね!急に異世界になんて転生して…まるで物語みたいで…」
「…阿呆らしい」
「え?」
「いえ、なんでもないです」
物語みたいってんなら何も考えずに自分の格下相手にイキリ散らしたいよ。物語なら。ここ現実だし。自分の仲間だけ都合よく生き残るなんて事もそうそう無いよ。なんでわざわざ死ににいくような事するのか理解出来ない。
「しかし、新しい勇者様は大変ですね。煌びやかな装飾品や、香草の匂いしかしない料理を食べずに、こんな鉄と汗臭い場所で奴隷みたいにこき使われてて」
今度は二本金槌が飛んできたのでまた避ける。仕事道具はもっと丁寧に扱えよ。
「私…弱いじゃないですか?だから、その…少しでも皆さんのお役に立てるように…って」
「自己満足で他人から得る肯定感はさぞ嬉しいでしょうね」
今度は剣が飛んできた。物投げる前に口で言えよ、蛮族かよ。しかも言われてんのお前らじゃなくて目の前の女だし。
「…性格悪いって言われたことありませんか?」
「そう?これでも後輩や生徒達からは慕われてる方だけど」
「…言葉があからさまに仲良くなる気がないですよね」
「わかってんなら話しかけないでもらえますー?ユウシャサマー?」
この子は正直アイツらとは関係ないし、悪口言ってきたわけでもない。でも、変にポジティブな連中よりもこうやって言葉一つで感情が浮き沈みしてる奴の方が罵倒するのは楽しい。
…また、心が荒んできたな。他人に当たって何になるってんだ。馬鹿野郎。
そういや、アルマ大丈夫かな?急に俺居なくなって…いやいや、別に俺が居なくてもあの子はやってけるか。自惚れるな。




