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代行教師な1週間 その4


 今日の授業も無事に終わってアルマと王都の散策をしていた。

 どれを見ても高級品ばかりで値段も高い。そしてその割には大して需要もないだろって物ばかり売っていたり、値段の割には美味しくもない食事だったりと…正直生活の方はあまり充実しそうにない。


 それでも腹は減るので安い店を探していると、ふとアルマが口を開いた。


「……アクト授業中に呪いかけられてた」

「呪い?」

「……ん」

「へえー」

「……念の為に伝えとく」


 何やら命を狙われているらしい。

 そういや昨日飛んできたナイフもあったし、暗殺者でも雇われたのかな?


「うーん…恨まれるようなことは…あるなぁ」

「……アクト凄い。命狙われるくらい…に有名になった」

「それは素直に喜んでいいのか…?」


 まあ、兎も角気を付けろという事だろ。


「しっかしまあ、誰なのか知らないけど三流にも失礼ってくらい腕が悪いよな」

「……ね、人目のつくところだし」

「しかも、失敗してるしな。見習いもいいところだろ?腕にワッペンでも縫い付けてあるんじゃねえの?」

「……エレン達の付けてた初心者の?」

「そうそう、あのダッセーやつ」


 アルマの手を引き路地裏へ向かう。まあ、別に周りに人がいなきゃどこでもいい。


「そんでもって、簡単に挑発に乗ってくる能無しってわけだ」


 後方に向かって回し蹴りをするとメシャッと音がして壁に何かが追突する。

 アルマの言葉で確信が持てた。昨日から気色の悪い視線を飛ばしてたのはコイツか。


「いっっっだ!歯ぁ、歯ァァ折れたぁあ!」

「安心しろって歯なんか魔法で治せるだろ?それよりもお前誰?」

「は、はぁ?何なんだお前急に!」


 アルマを守るように前に立ち、その男と対峙する。


 何やらボロボロの服装に何日も風呂に入ってない様な鼻の曲がる臭いをしていて一瞬だけでも関係のない浮浪者に見えるが…


「お前…王都に浮浪者なんているわけないだろ。邪魔なのは全員外に捨てられてるぞ?」

「最近、仕事が無くなったんだよ!」

「あともう一つ。浮浪者はそんな物を腰に隠してねえよ。剣なんてあったら即質屋に入れてるわ。ボケ」


 家宝売ってまで酒飲んでる奴があのニルアにいるし。


「……!」

「まあ、でも王都とニルアじゃ違うと思うし、浮浪者も元貴族かもしれない…が、動揺し過ぎだし何よりもその眼は見たことあるぞ?この間の狂信者どもと一緒だ。他人を身代わりにしてでも自分は生きながらえたい奴の眼だ」

「…くそっ!魔族狂いの糞野郎が!人間モドキ共々必ず殺してやるからな!」


 逃げようとしたのだろう。まあ、既に遅いが。


「なんだ…?体が動かない!?」

「……アクト、どうするの?」

「ん?いやちょっとお話を聞くだけ」


 アルマにちょっと離れていてくれと言って…それから男を縛り上げると取り敢えず話すまで指の爪を剥いでいった。それでやっと8枚目で話してくれた。


「暗殺者ギルド?」

「ああ…そうだ、俺はそこのリーダーをしている」

「へえー…何を暗殺すんの?家畜?」

「人間だ!」

「え、その腕で?」


 ギルド…組合って事だよな?そんな物騒な物まであんのか。


「……一応は合法」

「マジか」

「……でも、大抵は貴族のお抱え」

「うーん貴族ねぇ…貴族…」

「「…あっ!」」


 お互い同時に思い浮かんだのか同じタイミングで声を上げた。


「シド君とこの回し者だなお前?」

「……違うアクト、それお肉屋さんの息子…この間のはサジ」

「あり?そうだっけか?で?当たってる?」

「はっ、言うわけないだろ」

「アルマあっち向いてホイ」

「……ん」


 コイツはアルマの正体を知っていてそれで…人間モドキと。害意を持ってるなら、下手に情なんてかける必要もない。


「…あっ」

「げぎっ!?ギャアァァァァッ!」


 あらら、手が滑って爪を剥がさずに指を折ってしまった。


「……アクト、趣味悪い」

「いやいやいや!何て言われようがだ!アルマの正体を知っている暗殺者だぞ?痛め付けて情報抜いたらさっさと殺して…あり?」

「……逃げられた」

「…やばー」

「……それ、アルマの台詞」


 どうやら逃げられてしまったようだ。

 電気ショックが足りなかったか?


「…まあいいか。リーダーがあの程度なら部下もタカが知れる」

「……それよりもアクト。さっきのは何?」

「え?」

「……あんな酷い事するのは…めっ」

「いや、あの…」

「…めっ!」

「はい…」


 やっぱりアルマの前では控えめにしておこう。

 なんか怖いし。



ーーーーー



 痛む両腕でも何とか約束の酒場へと着く。

 止まらない血と折れた指が必死になって目を逸らしても痛みで訴えかけてくる。


「おや、遅かった…どうしたの?」

「どうしたもこうしたもあるか!聞いてねえぞ、あんなクソキ○ガイ野郎の暗殺だなんて!見ろ!この指を!これじゃあ仕事なんて出来たもんじゃねえよ!」

「まあまあ、落ち着いて。ギグス、彼に回復魔法を」


 怒鳴ったからか周りの客達が一斉にこちらを見るが直ぐにまた談笑を始める。ここは王都でも特に治安の悪い場所にあるせいか、柄の悪い連中も多く怒鳴り声など日常の音に過ぎないようだ。


 そして自分の雇主…メルカは相変わらず上っ面だけは心配そうにしてきた。


 ギグスと呼ばれる男によって何とか折れた骨や指の痛みは無くなったが…それでもコイツらへの怒りは治らない。


「お前らが簡単だって言うから受けたんだ。俺の指がしっかりと治らなかったら…どうなるかわかってんだろうな?」

「おお、怖い怖い。でも、そんなに怒らないでよ。私はただ、本当のギルドのリーダーや他実力者達が私の頼んだ仕事で死んでしまったから、その埋め合わせにって頼んだんだ。私もこうなるなんて知らなかったんだよ」

「…チッ」


 事実ではあるが、コイツの口から改めて言われると腹が立つ。


 デカい仕事だと意気揚々に出かけていった彼らの死体とともにメルカはうちのギルドにやってきた。


 あのアクト コダマと言うガキはこの国の元勇者だったのは聞いていたが…元より戦闘能力など皆無に等しかったので、簡単な仕事だと、新しくリーダーになった俺の元へ話を持ちかけてきたのがコイツだ。


「いや、しかし驚いた。あんなに強いとは思ってなかったよ」

「…おい、本当にコダマが殺したんだろうな?」

「ん?そうだよ?体感しただろ?あの残虐性と頭の悪さ。まるでオーガだ。

 それに側に薄汚い髪色の人間みたいなのいたでしょ?やだよねぇ、人間の真似して…まあ、コダマも魔族に肩入れするからいるんだろうし」


 化け物だよとメルカが呟いた。


 たしかにギルドに届けられた死体はどれもこれも力付くで胴体と首を引きちぎられた物ばかりだった。

 それは最初にコダマがガキども相手にイキリ散らしてた時だ。あの力さえ有れば人間なんて飴細工みたいに殺せる。


「ふぅ…取り敢えず追加のお金を渡しておくよ。あと…ちょっと頼まれてくれるかい?」


 こっそりと耳打ちしてきた内容はコイツがどれだけ人の良い笑顔を浮かべていても中身は糞野郎だと言うのがわかる。


「…いいのか?」

「ああ、構わない」

「国王様が聞いたらさぞ喜ぶだろうよ」

「ははっ。大丈夫さ、私は誰でもない、この国の為に行動してるんだから」


 どの口が言ってんだよと言う言葉は飲み込んで痛みの抜けた手でアジトへと戻った。



「…よろしいのですか?」

「え?なにが?」

「アクト コダマではなくアルマ=マグナウを殺せ。死体はブービートラップにでも使用しろとの」

「ん?ああ、あんなの嘘に決まってんじゃん。

 アクト君もアルマ君もこの国にとってはとても重要なスキルを持ってるんだよ?価値のわかった今、そうそう簡単に棄てるわけないだろ?」

「勇者達との例の件も?」

「うん、概ね成功だよ。あとはクロード君の薄っぺらいプライド次第だけどね。

 てさギグス、手の空いてる騎士を扇動して害虫駆除をお願い」


 ヒラヒラと手を振る上司はいつもの作り笑いではなく心の底から楽しんでいるようだ。


「罪状は?」

「元勇者暗殺でいいよ。1人残らず根絶やしにしといてね」

「了解」

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