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薬草求めてどこまでも その5

 村へ着いたとき、何やら火を囲って怪しげな儀式を行っていた。


「我等が生贄を承りし魔樹よ、どうか我等に安寧を、どうか我等に祝福を」

「「「祝福を」」」


 …どうやら村長は教祖?らしい。1番偉そうにしてるし何やら呪文めいたことを最初に言っているし。


「あー…もしもし?村長さん?」

「っ!?お、おや…冒険者さんじゃないですか!よかった、ご無事だったんですね」

「ええ、大変でしたよ。いやーしかしどうしたんですか?その格好は?」

「あはは、皆さんが無事に帰ってこれるようにお祈りをと…」


 全身黒ずくめに人なのかはたまた人に似た何かなのかはわからないが辺なドクロの首飾り。そして村長は骨をいくつも纏めて作られた杖のようなものを持っている。


「わざわざありがとうございます。全員無事に泉までついてそろそろ街へ戻ろうかと…それで、皆さんにお別れの挨拶をと思いまして」

「なるほど、そうでしたか」

「大変でしたよ。何せフォグプラントとかいう無駄にでかいだけの生産性の無さそうな魔樹を切り倒したんでね。まあ、これでしばらくここら辺も安定だと思いますよ」

「切り…倒した…?」

「ええ、そりゃあもうスッパリと」


 ジェスチャーを備えて説明すると何やら全員が肩を震わせている。寒いのだろうか?


「よくも…」

「ん?」

「我らが神樹によくも!この異教徒がッ!」

「さっき魔樹って自分らで言ってたじゃねえか」


 魔法による攻撃や遅い剣撃をすれすれで避けていると何を勘違いしたのか、自分たちの方が強いと思ったのか急激に距離を詰めてくる。


「死ね!神を信じぬ愚か者が!」

「信じる信じないは人の勝手だろ?」


 たしかこいつは…ああ、そうだ。夜盗役の男だ。

 ここで【クラウノス】やレーヴァテインを使えばアルマ達に気付かれてしまう。

 だから丁寧に1人ずつ─


 ゴキリ


「ごぴゅっ…が、ぐ…」

「しっかりと首を縊ってやるよ。大丈夫、全員ちゃんと信じる魔樹様の所へ向かわせてやるからよ。安心して死んでくれ」

「ば、化け物が!」

「お前らもだろ?大体、俺はともかく罪のない少年少女を魔樹の餌にしようとした癖に何言ってんだが…」


 2人、3人と首を縊り血の泡を吹きながら人が倒れていく。

 逃げ出そうとする奴は率先して其奴から殺す。


 もう決めた事だ。アルマはきっと俺を離してくれない。彼女が騎士様と再開しても俺と一緒にいるつもりだ。

 だったら尚更彼女の邪魔をする者や危害を加えてきた奴を生かしておけない。

 流石に会った全員とまではいかなくとも殺れるなら殺っといた方がいい。


「さて、村長。そうこうしているうちにあんたで最後だ。何か言い残すことはあるか?」

「つ、罪の無い人間を私は大勢殺したと言うが、ならばお前こそ信者達を皆殺しにしたじゃないか!」

「そりゃあ…うーん…まあ、いいや。話すの面倒くせえし」


 ああ、でも森から離れていてよかった。人の悲鳴なんぞが聞こえてきたらアルマ達が来てしまったかもしれない。


 ゴキリ



ーーーーー



「つ、着いたー…」

「もうダメ、無理…」

「あ、明日はみんな休もう…ね」


 平原のど真ん中で一泊野宿し翌日の昼過ぎにはなんとか街まで帰ってこれた。

 これでショウガマ採取の遠征クエストは終了だ。


 特に何も起こることはなく。しいと言えばゲラルドの新しい相棒がとてもうるさかったということだけだ。


「しっかし便利っすね、魔法の袋」

「たしかに…この状態で交代しながら薬草の袋を持たされるのかとばかり…」

「無理よー、絶対無理」

『文明の利器ね』


 1人増えた。まあ、俺もやりたくはなかったが。


「……1つ銀貨60枚。結構いいお値段」

「俺たちが買えるのはまだまだ先になりそうっす」


 前にアルマにプレゼントした時はこんな高いの受け取れないと最後まで言っていたが折角だし3人にプレゼントするのもアリなのかもしれない。


「あー…取り敢えず俺は今から組合に報告行った後に先生に薬草渡してくるから帰って大丈夫だぞ。

 報酬は明日渡すから取り敢えず今日は帰って寝るなり飯食うなりしとけ。じゃあ解散」

「「「お疲れ様でしたー!っす」」」


 さて、もう一踏ん張りだ。


「…ところでアルマさん。なんでそんなに離れているんですか?」

「……臭いから」

「え?俺そんなに臭う?」

「……アクトじゃなくてアルマ。沢山汗かいた…し」


 そうだろうか?女性特有の甘く優しげな匂いしかしないが。


「でも、後輩達の前で強がってはいたけど動ける?」

「……むり」

「じゃあ背負うよ」

「……乙女の危機」

「気にするなって」


 そのくらいと思い軽々とアルマを背負う。

 お腹が空いて動けなる時もあるからしょっちゅうおんぶはしてる。


「……ア、アクト」

「ん?」

「……そこ、お尻」

「すまん」


 なんか柔らかいなーとか思ってたが、どうやら自分でも思ってたより疲れているようだ。早くクエストを完了させて寝るとしよう。



ーーーーー



「今回は本当に助かったよ。ありがとうよ」

「いえいえ」


 ゲルダに薬草を届けるとゲルダは何か察したのか即座にアルマにシャワー使っていいよと言いアルマは閃光のように行ってしまった。多少背中に物寂しさが感じる。


 なんとか布団から起き上がれるようにはなっているが老人なんだ。無理しないでもらいたい。


「しっかしなんだい?その格好は」

「え?いつも通りだが」

「そんな死臭だらけで…デスにでも沸かれたらこっちに迷惑かかるんだよ」

「は、はぁ…」


 なんじゃそりゃって顔してるとまあ、元々愛想なんて無いがいつも以上にぶっきらぼうに死神だよとだけ言ってくる。


 …そもそもババアに愛想なんて無いか。


「何人殺したいんだい?」

「道中で何度か魔物を…ああ、医者としては魔物も人扱いなんですね」

「馬鹿にすんじゃないよ。こちとら伊達に医者続けてんじゃないんだ。魔物と人の臭いくらいわかるよ」

「便利な鼻ですね」


 ……


「アルマに何かあったのかい?」

「いいえ、アルマは関係ないですよ」

「じゃなんだい?殺人鬼にでもなったのかい?」

「【幻影の森】の近くの村が魔物信仰のカルト村だったんですけどね…」

「へぇ、何のだい?」

「フォグプラントです」

「ああ…それで?」

「皆殺しにしました」


 先生は珍しく理解出来ないって顔している。


「…なんで?」

「いや、俺らのことフォグプラントの養分にしようとしたんで」

「はぁー…馬鹿だねえ」

「自覚してます」

「どうするんだい。ちゃんと討伐前に申請しないと報酬金貰えないよ?」

「いや…え?」


 何て?報酬金?人殺して?


「あれ、お前さんこっちきて一年だっけ?」

「え、ああ、そうです。あっでもその一年は殆ど街とかも行ったことありませんし…」

「それはどうでもいいんだよ。私が言いたいのはね、いい加減にぬるま湯みたいな前世の倫理観に囚われんじゃないよって話だ」

「は、はぁ…」


 そこは人間として1番捨ててはいけない部分ではと思うが、黙っておくことにしよう。


「ただでさえね魔物だ魔族だ。最近じゃ獣人だって何考えてるかわかりゃしないよ」

「はい」

「いいかい?別に何を信じようが勝手だし、自分らに有益なもんだけ残して後は排斥しようってんじゃないんだ。ただ、今この世界を見て自分ら食っちまう化け物を崇拝する連中の居場所なんざどこにも無いんだよ」

「……」

「どちらにせよ近いうちに殺される連中に違いないって話さね。それに冒険者やってんなら盗賊やら要人警護やらで人を殺すんだ。一々気にかけるんじゃないよ。みっともない」


 そうだよな。ここは元いた世界じゃないんだ。いつまでも前の世界の価値観なんて持ってたら…大切な物まで失ってしまう。それに人の生死なんて関係ないだろ?結局のところは他人なのだから。


「わかったんならいつまでも腐ってないでさっさと薬草を取ってきな」

「…うっす」

「やれやれ、フニャチンが。童貞は卒業してんだろ?」

「してないですよ」

「ヤるべきほうじゃないよ、殺しだよ。そっちが童貞なのは見てりゃわかる」


 失礼なババアだ。殺してやろうか。


「まあ、ともかくだ。今回は怪我することもなく帰ってきたのは私としても嬉しいよ」

「…腰痛めた時に頭も打ったのか?」

「ははは!失礼なガキだね!ホルマリン漬けにしてやろうか!」

「ははは、笑えねえ」


 仲良く?笑い合っていると扉が開けられて病院に誰かが入ってくる。


「急患か?」

「勘弁してほしいね、私今動けないよ」

「患者じゃない」


 ぬうっと病院の奥へやってきたのはガルドだった。


「ん?アクトか。悪いな、今回は迷惑かけちまってよ」

「え、いや大丈夫ですよ。アイツらにもいい経験になったろうし」

「…そうか。報酬は上乗せしとくからな」

「は、はぁ…」

「全く…歳なんだからもう少し落ち着いてくれ」

「うるさいねぇ。あんたこそいつになったら孫の顔を見せるんだい」

「それはギミーに頑張ってもらえ。まだまだ現役やってるんだ。嫁さんなんか取れねえよ」

「とんだ親不幸もんだね」


 孫?親?んん?


「……出たー」

「おお、アルマいたのか。悪いな家族の事情に巻き込まんじまってよ」

「……ん。大丈夫」

「どちらにせよ必要になったんだからいいだろ?組合の頭ならもう少し部下を顎で使うってことを覚えな!馬鹿息子」

「部下じゃない。仲間だ。俺は俺のやり方でやってるんだから黙っててくれお袋」


 んんんん???お袋?馬鹿息子?


 なんだかいつもよりガルドさんも優しげだし、先生も優しげだし…んん?


「えっ、もしかして親子?」

「そうだよ」

「…テメェ知らなかったのか?」

「いやー…あははは…似てないっすね」

「ガルドは旦那似だよ」

「弟のギミーってのが他の街で冒険者やってんだがな。そっちがお袋似だ」

「……ガルド=グラトンとゲルダ=グラトン…だよ?」


 ……


「どうした?」

「いや、なんか…疲れたなって」

「明日はクエストねえんだろ?久しぶりの仕事だからって根詰めすぎたな。ゆっくり休め」

「…っす」


 じゃあここら辺で帰りますとアルマが頭を下げると手を引いていつもの宿へと戻る。


「……いい匂い?」

「そうだなぁ、ははは」


 理由はよくわからないがなんかとても疲れた。そんな3日間だった。

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