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薬草求めてどこまでも その2

 どうしようかと取り敢えずアルマを下ろすと受付のお姉さんがちょいちょいと手で招いてるのが見えた。

 なんだかやっとひと息付けた気がする。朝からしんどい。


「…ガルドさん、ここ数日のお上からの書状でイライラしてるんですよ」

「はぁ…」

「あっ、アクトさん関連と言うよりかはちょっと魔王軍が動き始めてましてね?冒険者を兵士として繰り出せみたいな案も出てるらしくて…」

「……ごめんなさい」

「アルマさんは悪くありませんよ。悪いのは現魔王ハルグですから」


 なんだか大変だな。


「ほら、馬鹿勇者共が意気揚々と旅に出たのはいいんですけど、四天王にボロクソにやられたらしくて今敗走中なんですよ。

 それで、護衛に冒険者を寄越せって国からも来てて…」

「本当にすみません」

「いやいや、アクトさんも悪くありませんって」


 人間って環境が変わるだけでここまで人が変わるのだろうかと思うが、少なくともああなってしまったのは事実だ。


「あ、それでショウガマの採取でしたよね?徒歩1日程度の距離ですけど馬とか借ります?」

「乗れないっす」

「……アルマも無理」

「あちゃー、あそこら辺まで乗せて行ってくれる行商の方いますかねぇ…」


 その言い方だと結構危険な場所なのか。


「【幻影の森】って場所の奥地にしか生えてなくて、霧も濃いわ、幻は見るわであそこに近づく方あまりいないんですよね…」

「幻惑…」

「……ぷるぷる」


 つい先日の嫌な思い出が蘇る。


「まっ、霧が出るのは決まって満月の夜だけなので、普段は至って普通の森ですよ。魔物が多いから近付きたく無いってのが多い理由ですし」

「なるほど…ゼタールにでも頼んでみるか?」

「……今、秋の大還元?せーる…ってのでいないよ?エルヴァも付き添い」

「何それ?」

「……奴隷を買ってくださった方には…もれなくもう1人差し上げ…ます」

「人の道を外れすぎだろ!?」


 なんだよ、ピザじゃねえんだよ。人の命をなんだと思ってやがる。


「……奴隷は、アクトの思ってるような…のじゃないよ?」

「ああ、異世界の方ってよく勘違いされてるらしいですね。別に奴隷狩りとか行ってませんからね?

 ゼタールさんのところの奴隷達は働くあてもなく、金も家も無いからって奴隷になって身売りしてる方が多いので」

「……現に、ムカデ時代も…お客さんを選んで売ってた…よ?」


 …価値観の違いなのかな。まあ、それが此方のルールなんだ。しょうがない。


「まあ、ともかくですよ。頑張って歩いて行ってくださいね。袋はこちらです」


 いつもより少し大きめのを渡された。


「…ところでショウガマってどんな見た目なんですか?」

「ああ、カエルです」

「カエ…ル?ガマガエルって事ですか?」

「ああ、それと似てますね。背中に油塗れの植物の生えたカエル型の移動植物です」

「え、結局カエルなんですか?植物なんですか?」

「植物です。カエルの部分は根が移動用に進化しました」


 流石異世界。一年いても飽きる事がない。


「ちょいちょい、アクト」

「ん?あれ?ジャックさん?」


 さて行くかと意気揚々にしているとガルドの弟分のジャックがヒソヒソと話しかけてきた。


「裏でラークス達が待ってるんで。連れてけって兄貴が」

「え?マジすか?」

「遠方でのクエストは早めに慣れておいた方がいいからって。こっちはどうにかしとくからよ。さっさと行ってきちまえって」

「ありがとうございます」

「なーに、こんくらい朝飯前。今は昼飯前だけどな」


 なんか、いつもありがとうございますとしか言えなくて申し訳ない。


 感謝の気持ちで心がいっぱいになってるとアルマに手を引かれ組合の裏口から出される。


「チース!アクト先輩!アルマ先輩!」

「おはようございますでしょ!馬鹿ラークス!」

「2人とも落ち着いて…あっ、おはようございます。御二方」


 三者三様に挨拶して、いつも通りに新人冒険者達が待っていた。

 


ーーーーー



 徒歩1日と言うのはあくまでも休憩せずに歩き続けた場合で実際には途中途中で休憩を挟みつつ進んでいく。


 結局何度か休憩を挟み、森には着いたが夜は危険だと今日はその近くで野宿だ。

 廃村も近くにあったが何やら争い事の起きたあとなのか荒らされていたので一応は警戒しておこう。


「アクト先輩も最初は勇者として自覚していたのですか?」


 眼鏡をかけた大人しそうな少年ゲラルドは真面目な顔してスープを混ぜながらそんなことを聞いてきた。


 はて、自覚とな?生まれる前に見下され始めたからな…


「無いな」

「そりゃ、そうっすよ!考えてみろよゲラルド。アクト先輩とあの自称勇者共。どう考えたって、アクト先輩の方がかっこいいし、強いしよ!」

「黙っててくれラークス。僕は今、自覚について聞いているんだ」


 因みに女子2人は近くの川で水浴び中だ。

 汗臭いのは嫌なのだろう。お年頃だしな。多少値は張るが携帯式のシャワーがあるらしいから買っといた方がいいかもしれない。


「僕は今、新人冒険者として新たな門出と共に命を奪い人を救う。そう自覚する事で戦えるようになってきました…ですが、どうにもアクト先輩の様な戦いが出来ないのです」

「うーん…体に悪いからやめときな?」

「僕がしっかりしなければ、2人が危険な目に遭います!」

「抱え込みすぎんのもねえ…」


 ラークスは自由奔放だが、バトルセンスは1番ある。ゲラルドは冷静に行動して状況を判断出来る。エレンは…たしかにこの中では1番強いが前に出過ぎて…

 ああ、ダメだ。そこら辺全部アルマに任せてたから無理。


「ゲラルドは硬すぎるんだよ。もちっと柔らかく行こうぜ?」

「君は柔らかすぎるんだ!もう少し考えて行動してくれ!」

「落ち着けって」


 幼馴染みらしいが…しょっちゅう喧嘩してるのを見る。どうなのだろうか?


 完成したスープを人数分よそい、2人が戻ってくるのを待っている間も淡々と口喧嘩してる。最初のうちは止めていたがもうやめた。放っておくのが1番だ。


 ……ん?


「おい」

「い、いや違います!これはゲラルドが悪いんじゃなくて俺が言い過ぎたのが悪いんす!」

「いいや、僕が言い過ぎた!悪いのは僕です!」


 ごちゃごちゃ言い合ってる二人を放置し、持ってきていた予備のフォークに電気を流し投擲する。


 何やら2人して抱き合ってビクついているが。何をビビっているのやら。


「ぐっ…貴様─」


 暗闇から覗いていた連中の1人に深々と刺さったフォークは中継器の様に指先から出した電流を受け、辺りを囲ってた奴らに放電する。


 暫く辺りが閃光と苦悶の叫びに包まれたがそれが落ち着くと十数名程がバタバタと倒れる。


 だが、1人だけ電撃耐性でもあったのか意識がある奴がいる。好都合だ。

 髪を鷲掴みにして逃げられない様にする。


「誰だお前ら?」

「くっ、そ…聞いてねえぞ」

「よし、ラークス君。コイツの爪を一枚ずつ剥がしていけ。爪が無くなったら次は歯を折っていけ」

「いやいやいや、無理っす!」

「冗談だよ。で、何?追い剥ぎか夜盗?」

「ふっ、聞いて驚け…我らはガッ」


 長くなりそうなので一度思い切り顔面を地面に叩き付けた。

 

「誰だって聞いてんだよ」

「ゴダだ…」

「ゴダさん、目的は?」

「金と食料…あとはあの女共…」

「あっ…」

「あってなんすか!?まさか、忘れてたんすか!!」


 ゴダを放り投げると急いでアルマ達が向かった川へ走る。武器は持っていくとは言っていたが水浴び中は無力だ。ヤバイ、どうなった?クソ、なんで助けにいかなかった…


「アルマッ!」


 林を抜けて川に…


 せせらぎの音と月明かりの下になだらかな平野と起伏の激しい山があった。


「キャッ!?あ、あぁああ、アクト先輩!」

「……」

「……」

「……アクト?」

「…全て受け入れるよ」


 目を瞑り、男としての本能で瞼に焼き付いた2人の女性の体と、歳が近いのに成長差がこんなにも…と。そんな事を考えながら久しぶりにいいビンタをアルマからもらった。



ーーーーー



「アクト先輩、悪い事があった後にはいい事があるっす」

「うん、ソウダネ」

「ところで…その、どんな感じだったんすか?」

「……ラークス?」

「ヒイッ!」


 顔面に小さな紅葉を刻まれてしまった。ジンジンと痛みは治まらない。


 結局2人の前に先ずは邪魔な男が先とアルマ達にはまだ手を出していなかった様だ。

 普通に水浴びしてる時に突っ込んでしまった。


「……アクト」

「…はい」

「……見たいなら言って。我慢するから。だから覗きは…ダメ」

「いや、違うんです本当に。事故だったんです。あと、ご自分の体をもっと大事にしてください」

「……怒ってないよ?助けに来てくれたのは…事実だし」


 どうだか…


「ぷしゅー」

「ところで、エレンがいつまで経っても真っ赤なまま戻ってこないのですがどうすればいいですか?」

「時間が解決してくれる」


 それしか無い。


「しっかしまあ、たった1人でねぇ…でも運が悪かったな」

「いやはや、こちらの方が人数は多いとは言えど…太刀打ちできそうにもなく…」


 先程倒したのは村の男衆と夜盗。どうやら、女子供を人質に手伝わされていたらしい。


「本当に助かりました。なんとお礼をしたら良いやら…」

「いえいえ、泊まれる場所を用意してくださっただけで十分です。それに電気流しちゃいましたし…」

「はっはっはっ。畑仕事してる時によく雷に撃たれますからな。このくらい大丈夫ですよ」


 どんな場所に暮らしてんだよって言いたくなる。

 一応備蓄用に大量に買ってあったハイポーションを渡しはしたが。


「ささっ、明日に備えて英気を養ってくだされ」


 スープとパンのみの筈が無駄に豪勢になってしまった。


「……食べよ?」

「そうだな」


 まあ、アルマが嬉しそうだしいいかな。


 この数分後にエレンが気が付いたと同時にアクト先輩のエッチなどと言われ重ね紅葉が出来たのは言うまでも無い。

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