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2人の関係 その2

 またかよとクララは内心呆れていた。友達になって1ヶ月。この魔族少女とこの子の相棒である異世界の元勇者は事ある毎に喧嘩して仲直りを繰り返している。


 もういっそアタシと組まないかなんて言うとアクトが可哀想ってなるんだったらアタシら巻き込んで喧嘩しないでくれって言いたくなる。


「……それで、アクトがドラゴンの第二形態と…戦ってた」

「へえ」


 で、今はアクト対ドラゴンの話をクスリソウを摘みながら聞いている。

 にわかには信じがたいがアクトがそんなに強いなら今度相手してもらいたい。デンも強いのだがアイツは女相手だと変に手を抜いてくる生っちょろい奴だから嫌だ。


 それに前にもうちょっと女の子らしくお淑やかになんて言われて少し腹が立った。女らしさなんていらない。冒険者らしく荒々しく生きたいんだよ、アタシは。


「……ドラゴンがアルマの両足を…吹き飛ばした後、アクトが怒って…くれた」

「え?大丈夫かよ、アルマ!お前それ義手なのか!?」

「……正真正銘アルマ…の足」


 チラリ、ショートパンツから覗く生足とずらしたタイツの隙間には、塞がっているが痛々しい傷跡がある。


「……生えてきた」

「魔族凄え!」

「……嘘。温泉のお陰」


 それでも十分凄いだろと思う。


「しっかし、生傷絶えねえ職業だけどよぉ…デンの野郎、前に1回アタシが大怪我した時に冒険者やめないかって言ってきたんだぜ?」

「……それだけクララは…デンにとって大切な…存在」

「…あー、改めて言われるとなんだな、照れるわ」

「……羨ましい」


 デンの言う通りだった。やっぱりどこか変だ。

 いつもよりもこう…ハリがないというか、なんというか…


 ぷちりぷちりとクスリソウを根っこから引き抜く。ランク1以外の冒険者でも受けられるこのクエスト日銭を稼ぐのもちょうどいいし、何よりも楽だ。

 

 そもそも今日はアタシらが討伐でデンとアクトが採取クエストだった筈なのに…なんで、逆になってんだよ。


「……」

「あーもう!イライラする!アタシはこういうチマチマしたの嫌いなんだよ!武器振り回してえんだよ!」

「……クララ、終わった」

「え?おわっ、相変わらず早いな…」


 直ぐに癇癪を起こすのは君の悪い癖だよとデンに言われたのを思い出す。

 

「…こんなに早く終わるとは思わなかったんだけど、どうする?」

「……武器屋行きたい」

「えー、まあいいけどよ」

 

ーーーーー



「おっ、アルマちゃん、久しぶり」

「……おひさー」

「この間のツインハンマーどうだった?結構自信作だったんだけど」

「……壊れちゃった」

「ええ!?マジかよ!結構強度とかもしっかり計算して作ったつもりだったんけどなぁ…」

「……相手がドラゴンだった…から」


 武具屋は殆ど縁のない場所だ。

 何せ、クラフターという職種は適正の武器が短剣とこの2本の錬金槌と呼ばれる大きくなった手鎚のみ。それ以外だとろくにスキルも使えなくなってしまう。他と比べると中々に使いづらい職種なのだ。


 まあ、アルマみたく自分の技量だけで武器扱うような奴にはそういうのは関係ねえんだろうけどな。


 何やら鍛治士とやいのやいのと楽しげに話している。

 

「…あー、やっぱり?」

「……うん」

「まあ、そこら辺はおいおいだな。あっ、そうだ例の物出来てるよ」


 ちょっと待っててとだけ言うと武器屋は奥に引っ込んでしまう。

 客をほったらかしにするのはどうかと思う。


「……クララも武器…買う?」

「アタシはいいや」

「……次のフェスティバルで…上位職になれるなら、新しいの用意しといたほうが…いいよ?」

「あー…どうなんだろうな」


 上位職…まあ、人によっては最初からって奴もいるが大抵はその下位の基本職からコツコツ積み上げていく。

 と言うのも戦い方自体は変わらなくともスキルがかなり変化してくる。


 攻撃型の錬金術師であるクラフターはバトルアルケミーという上位職になれる。

 が、既存のスキルに加えて他の攻撃系であるブラックスミスとバトルクラッカーを足して良いところだけを取り出したスキルも使えるようになり、下手に転職などすればあまりのスキルの違いに慣れるまで時間がかかるだろう。


 それはデンも同じでアイツのなりたいガンスリンガーも同様に様々な基本職のスキルを足して割ってという感じで…なりてえって言ってたし、やっぱりアタシが来年まで待つかな。あいつなんだかんだで他の基本職全部取ってたし。


「……これとかどう?」

「どうって言われても…こりゃ、ライフルだろ?」


 異世界から伝来した武器でもあるし、ガンスリンガーの適正武器だ。

 威力が強過ぎるために国家間でも単発以上の改造が禁止されてる物で、1発1発装填しないといけない。


「……プレゼントすればもっと…仲良くなれるよ?」

「へっ…いやいやいやいや、なんでアタシがしなきゃいけねえんだよ!」

「……フェスティバル後は武器屋…から、商品が消える」

「…そりゃあ、そうだけどよ」


 事情を知らないし、別に同情だとかデンよりもアタシが先!みたいな事言いたくないが、アルマにアタシよりもデンが先に上位職になった方がいいって遠回しに言われてるようで少し嫌な気分にはなる。


「……あ、違うよ?」

「え?」

「……後衛は、前衛を援護する…から、デンが先に転職先に慣れれば…来年、クララが上位職になった時…に安心」

「…なんか、ごめんな」

「…?」


 そうだよ。この子は基本的にいい子なんだ。アクトが絡むとたまに意地悪になったりするがそれでも根は純粋で優しい子だ。


「……アクトとアルマは、お互い巻き込まないように離れて…戦う、デンとクララはお互いを信じ…合って背中を預けてる」

「え?」

「……羨ましい」


 そんな事ないだろ?とも言えなかった。

 アクトとアルマの実力が違うのは考えなくてもわかっている。

 アタシだって本当は認めたくはねえが…ほぼ1人でドラゴンぶっ殺しかけたんだろ?…そんなのアタシには無理だ。


 ガルドから公表された話とは別に、事の顛末を聞かされていた。

 無論、アクトという存在が化け物に感じた。だが、同時に可哀想という心も生まれた。

 見下してるわけじゃない。ただ、強過ぎる力は大抵身を滅ぼすか、或いは大切な物を失った後に後悔するものだ。


「アルマ…」

「へい、嬢ちゃん!コイツが次の試作品の魔剣だ!」

「…これが…!」


 しんみりした空気になりかけたがタイミングを見計ったかのように店主が何やら珍妙な物を持って奥から現れる。


「嬢ちゃんが持ってきたドラゴンの魔石片を剣身に!そして、この間のサラマンダー討滅作戦の時に大量に余ったサラマンダーの鱗を持ち手に!俺達の考えた新時代の魔剣、第一号だ!コイツは流行るぜ!」

「…おぉぉおお!凄い」

「おぉ…うん?なんだそりゃ」


 何やら握りはしっかりとしている。ただ、レイピアや普通の剣のような(つば)ではなく曲線を描いている。そして極めつけは持ち手が普通サイズなのにできそこないかと聞きたくなるほどに短か過ぎる剣身。お世辞にも強そうには見えない。


「しっかし、まあ。こんなのよく考えついたねえ」

「……アクトはきっと、妄想の中に沢山友達…がいるから、想像力豊か」


 しれっと酷い事言ってるが聞かなかったことにしよう。


 それにしてもどんな使い方なんだ?ガルドの舎弟連中のジャックナイフブラザーズの武器の方がまだ使えそうだ。


「調整はまだ出来てねえし安全装置も無いんだが平気そうか?」

「……やってみる」

「何!?待て待て、店の中はやめてくれ!せめて、裏庭で!」


 そんなにヤバイのか?


 言われた通り裏庭に回るとアルマが剣?を構える。


 それは初めて2人にあった日に見た大火の如く、空へと火の柱が突き抜けた。


「……ん。完璧」

「ひえー…やっぱ、魔王の娘さんは持ってるもんが違うなぁ…とんだじゃじゃ馬作り出したと思ったらもう使いこなしてら」


 あれは見たことある。アクトの使っているレーヴァテインとかいうエンチャントされた剣だ。

 まだ幼い頃、村にたまに立ち寄ってくる冒険者達のエンチャントされた魔剣は見たことがあるが、斬りつけた瞬間に炎や氷など属性が放たれる仕組みだった。

 だが、アクトのは違う。常に炎を纏い、否剣身が揺らめく炎となっている。大きさも質量も自由自在。アルマの使っている剣もまさにあれだ。


 彼女の戦闘スタイルは蛇腹剣を鞭のようにしならせて戦ったり、或いは剣としてインファイトしているのをよく見るが、武器屋の言う通り持ってる才能がちがうのだろう。もう既に身に付いてきている。


「調子はどうだい?」

「……ん。魔力消費が多い…魔石は普通の魔物のでいい…と思う。あと、常に意識しないと炎が纏まらない…から、1つの形に固定するとみんな使え…そう」

「おお、なるほどな。了解、了解…うし、早く完成さしてがっぽり儲けるぜ!ガハハハ!ああ、あと何かあったらその都度教えてくれや!それと約束通り、それは嬢ちゃんへのプレゼントだ」

「……やった」


 なるほど。試作武器の調整を頼んでたのか。いや、アルマが素材とアイデア渡して、武器屋が試作して仕上げて儲ける。アクトが前にアルマは変な武器マニアと言っていたがそう言うことか。


「おっ、そうだ。兄ちゃん、ほれこれやるよ」

「…あ?もしかしてアタシのことか?」

「え?あっ、女だったのか…?」

「そうだよ!」


 失礼な奴だ。可愛いと言われるよりはかっこいいとか言われたいが流石に頭にくる。


 悪い悪いと平謝りして何やらラッピングされな細長いものを渡してくる。

 なんだこれと受け取ると結構ずっしりした重さだ。


「毎年、新作が出るんでな。その都度デザイン更新だなんだって型落ち扱いされんだ。まあ、性能自体は殆ど変わんねえからよ」

「なんだこれ?」

「プレゼントだよ。プ、レ、ゼ、ン、ト。ダチ公かと思ったらなんだよ。これか?」


 そう言って親指を立ててくる。なんだかわからないが無性に腹が立つ。


「この間の討滅作戦の時に1番貢献度稼いでただろ?凄いよな。あんだけ人がいるのによ。

 それに、今日もドレッドスパイク捕獲しに行ってくれてるしな。サービスだよ」

「…あー、なんだ。ありがとうな」

「武器、防具その他諸々。お買い求めも修理も今後ともウチをご贔屓に」


 …アタシもそうだけど、デンも褒められてるってことだよな?嬉しくてにやけちまう。


「……クララ、お顔真っ赤」

「えっ!?マジか!」

「……嘘ー。引っかかっむにぇえー」

「このやろ、ハメやがったな」


 むにむにと子供特有の柔らかさを残すアルマの頬を軽く引っ張る。よく伸びるんだな、これが。


「……ふぁめへー」

「はははー、まいったかーこのこの」

「……ひゅへー」

「あ、あの…アルマさん!」


 むにむにとアルマで遊びながらそろそろデン達も帰ってくるし今晩は何にするかなと考えている時、ふと前から歩いてきた歳の頃はアタシと言うよりかはアルマに近しい少年から声をかけられた。

 そしてたった一言。その言葉が耳に入った瞬間。良くも悪くもアタシとアルマは凍り付いたように動けなくなった

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