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とある異世界少年の話



 あれから更に2日程、ようやくゲルダに魔法を解いていいよと言われ解除すると何だか妙に体を締め上げていたような感覚と言うか、体が軽くなった気がした。


 仙湯って本当に凄いと思う。俺の体も寿命も、アルマの切断された両足も治った。

 一部を除けばだが元通り、エンチャントを解除したから寿命も減らない。

 なんだかすごく清々しい気分だ。


「アクト」

「ん?」

「その手はあんたへの罰だよ。

 リハビリをすれば治るが…暫く不便だろうけど私はあんたの考えを変えるまでは診察しないよ。少しは先の事を考えな」

「わかってる」

「どうだか」


 治るなら別に構わない。願わくばヤバイのに出逢いませんようにと心に思っておこう。


 それから久しぶりに着替えて街を散策する。

 今日の午後には戻る予定だ。まあ、土産は結局幸運を呼ぶ呪いの人形だけだが…


「よし、アルマ。何か食べたい物あるか?奢るぞ」

「……うん」

「…?」


 あと、あれ以来アルマの様子が変だ。目を見て話してくれないし顔を合わせる回数も減ってきた。

 何だろうか?何か俺はやってしまった?アルマが不快になるようなことをした覚えはないが…


「…ムカデを噛み砕く」

「なんて?」

「……脳足りん…だって」

「あ?」


 胃がキリキリしてきそうだ。ずっとこんな感じだ。とてもギスギスしている。爆弾抱えてる気分だよ。


「あっ、おいコダマ。生きていたのか」

「ん?ああ、アタギ君。居たんだ」


 なんか酷く残念そうな顔しているが、ここ数日ラケルさんとか見てないのでてっきり国に帰ったのかとばかり思っていた。


「僕らはどうやら、ドラゴン討伐の勲章を授与されるらしいぞ。陛下が仰っていた」

「あ、俺パスで」

「……アルマも」

「ムカデ」


 目に見えて分かるぞ。女を使うか金を使うかは知らないが絶対にセルンに繋ぎ止める気だ。

 そして俺達もあわよくばセルンの勇者…なんて扱われる可能性もある。


「アタギ君1人で倒したことにしなよ」

「えっ、いやいや無理に決まってるだろ?手も足も出なかったし…」

「目撃者少ないんだろ?じゃあ、ほら…君の物だ。それに勲章なんて貰えるなら君の大好きな金と名声と女が同時に手に入るぞ。オメデトウ!」

「そんな物は要らない」


 前の様な濁った目じゃない。確かな自信と決意を持った瞳でこちらを見てくる。


「僕は1からやり直すことにした。

 もっともっと強くなって、この矢の届く限りの人を全員救いたい。それに勇者なんてガラじゃ無いし」

「あっ、そう。頑張ってね」

「ああ、その時までしばしの別れだ。じゃあな。今度は肩を並べて戦える様に僕も頑張るとするよ」


 それだけ言い残すとさっさと街の門の方へと行ってしまう。

 なんか、若干熱血漢的な感じになりかけていたが多分もう2度と会うこと無いだろうし別にいいか。


「……アクト」

「うん?」

「……あの人友達?」

「まさか!あいつが一方的に言ってるだけだ」

「……そう」


 それだけ言うと再びそっぽ向く。

 言いたい事があるなら言ってほしい。


 ……


「ムカデを縦に裂く」

「……みゅるめくすのおうちに…行く…って」

「ん、行ってらっしゃい。時間には戻ってきてくれよ」

「アクト謝れ」

「あ?おま、は?え、話して」


 エルヴァもさっさと走って行ってしまう。

 心の中でムカデの連中への恨み辛みより俺への苦情が勝ったのか?たしかに謝れって言ってたけど。


「……」

「あー…言いたい事があるなら言ってもらえると助かるんだが?」

「……アルマはアクトを大切だと…思ってる…」

「う、うん」


 じいっと顔を見て目を合わせて恥ずかしげも無く言ってくる。逆に俺が赤面してしまいそうだ。


「……だから居なくならないで。自分の気持ちに…素直になって」

「……」

「……本当は一緒にいたい…よね?」

「よくわかんないんだよ。友達と話してた時もそうだった」


 小学生の時点で既に俺は平気で友達を見捨てて新しく作る様な奴なんて後ろ指刺されていた。だから、中学校も土下座して頼み込んで少し遠くの知り合いの居ない場所を選んだ。


 そこで新しく友達を作ればいいなんて思ってたのに…


「直ぐに出来たさ。気前のいい奴らでさ。俺はこいつらとずっと一緒に楽しく過ごしたいって思ってた。

 なのに、1年経って母親の言いつけで自分に有用な友達を新しく作れなんて言われ続けてきたのも無視して、嘘付いて彼奴らとの付き合いを続けようと思った…」

「……」

「だけどさ、ずっと1年間だけって思ってたらさ、なんだか俺…本当にいいのかなって、俺みたいな奴が友達でって…」


 そしたら糸が切れるように簡単に。関係も、何もかもが無くなった。


 アルマともきっと同じだ。まだ一年共に過ごしては無いがどうせ一年経てば俺は…

 本当に最悪の人間だ。しっかりと親の血を引いている。

 いや、人のせいにするのはよく無い。変えようとしなかった俺が悪い。


「……アクトはもう自由だよ?」

「自由って言葉は結局、決め事に反した生き方だろ?本当の自由ってなんなんだろうな」

「……そんなの、アルマが…分かるわけない…」


 そりゃそうだ。

 何を馬鹿な事を言っているんだ。人に当たるな。俺が悪いんだろ。俺がしっかりしないからだ。全部俺が悪いんだ。


「……ごめんね、アクト」

「ん、なにが?」

「……アルマも、アクトも強くなった…から、大丈夫だって…負けないって思ってた…でも、アルマのせいでぐすっ…アクトが傷付いた…アルマのせいでアクトが…また死にかけた…」

「…大丈夫だってアルマ。俺もお前も結果として生きてるんだ。そんなに自分を責めるなって」


 優しく涙を拭いてあげる。だからどうか泣かないでくれ。だって俺が悪いのだから。俺がやらなきゃいけないのに俺が弱いから。迷惑をかけた、心配させた。何よりも危険に晒してしまった。


「……アクト、頑張ってアルマもっと…強くなる」

「いいんだよ。無理をする必要はなんてどこにも無いんだからさ」

「……アクトを守れるくらいに…強くなる」


 嗚呼、神様。どうか存在するなら1つだけ願いを叶えてくれ。

 早くアルマと騎士様を会わせてあげてください。愚かな俺が自分の心に素直になる前に、どうか…



 休暇と言う割には随分と精神的にも肉体的にも疲れた。

 

 結局、アルマとも仲直り出来たのかよくわからなくギクシャクしたまま、ニルアへの帰路をエルヴァに揺られながら帰るのだった。

 

 とんだ休暇になってしまった

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