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エボリューションエネミー




 爆風も収まり始めた頃、ドラゴンの魔石とかあるのかな位の気分で近づくと木っ端微塵になっており、とてもじゃないが見つけられそうになかった。


 …ん?たしかに肉片ばかりだけど…おかしいなこれ。


 動く山と言っていいほどの大きさではあったがその割には肉片が少ない。

 爆発で全部吹き飛ばした可能性もあるが、ドラゴンと対峙しててずっと感じていたあの舐めるような視線がまだ消えない。


「….アクト、これ」

「ん?」


 アルマに呼ばれ見てみると何やら自販機ほどのサイズの宝石の様な物があった。様な物とは、まあ見た目は宝石なんだが薄くペラペラしてる。

 そして真ん中から割れて中身はないようだが…


「……大きさ的に…ドラゴンの魔石…」

「…中身は?」

「……わかんな─」


 ほんの一瞬の出来事だった。目の前からアルマが消えて、俺の左腕も肘から下が消えてなくなっていた。


「痛、熱ぃ!熱い熱い痛いッ!」


 常時発動しているベルセポネによって即座に腕は生えてくるがズキズキと痛みは残る。


 腕はいい。それよりもアルマは…?


「ニ…ンゲン、マゾ…ク?」

「…んー!んん!」

「アルマッ!」


 未知の生物がアルマの口元を押さえつけていた。

 全身鎧で顔まで隠しているのに器用に首を傾げている。そして鎧の口部分には俺の腕が加えられていた。


 鎧…と例えたのは金属質な光沢をして装飾らしきものがされていたからで実際によく見ると鱗や甲殻が集まって固まった物らしい。顔の部分も妖しく光る双眸や口らしき器官がある。

 そして極め付けは細くしなやかで鞭の様でもあるのに、先端は矢尻の様に尖っている尻尾と折り畳まれた刃の様な翼。


 腕も足もスマートになってまるで人間のみたいだ…それにアルマを押さえつける手にも爪と言うよりかは鋭く尖った鎧の様にも見えるし。


 下手にちょっかいかけたらアルマが…そう考えると動こうにも動けない。


『ニン…ゲン。マゾ…ク。エサ』


 もう1度話すとアルマを捕食しようとしてるのか口を大きく開け、ぬらぬらと涎で光る牙が見える。


「…んー!」

「ッ!」


 気づいたら体は動いていた。

 鎧の顔面に雷を纏った蹴りを食らわせる。

 いまだに晴れぬ爆煙と土煙、雨によって視界は最悪であり遠くに蹴り飛ばし視界から外すのは愚作も愚作だがアルマの命が最優先だ。


「大丈夫か!?」

「……大丈夫」

「そっか…良かった。

 で、あれ何かわかるか?」

「……わかんない…けど…」


 アルマは一度チラリと後ろを見た。

 

 ああ、そうだよな。鎧の形的にも翼も何もかもそっくりだもん。


「……ドラゴンは体内に魔石…とは別に炉心石っての…持ってる」

「炉心石?」

「……ん。

 ドラゴンの魔力の源で…意志を持って…動く魔石。そして…ドラゴンが危機に瀕した時…進化する。

 知恵を持って、まるで人間みたいに…なる」


 たしかに小さくなって進化はした気がするが知能は下がってないか?


「……父様の本で読んだこと…ある。敵と認めた生物の…真似するって。それがドラゴンが急に…消える理由」

「待て、待て待て待て…つまり、ドラゴンが人間とかに擬態するってのか?」

「……1番は人間が多い…他もいる…たまにいるとても強い人間が…ドラゴンってことも…ある」


 …マジかよ。


『ナニヲ話しテルんダ?』


 全くダメージがない様に感じる。のんびりと土煙から出てきたドラゴンは楽しそうにこちらを見ていた。


「おい、なんかちょっと流暢に話し始めたぞ!」

「……やばー」

「呑気だなぁ!」


 逃げるか?いや、電気化は俺にしか有効じゃないし、そもそも逃げ切れるのか?コイツから…


 アルマにもう一度【ワルプルギス】をかけてもらう?成功するのか?

 あれが魔力による物なのか単純な防御力なのかはわからないところを見るとリスクしかない。


「…どうする?」

「……戦う以外に選択肢…あるの?」

「対話とか?」

「……ふふっ、ないすじょーく」


 どうやら渾身のギャグとして捉えられたらしい。


 アルマはいつもの様に蛇腹剣を構える。

 勝てるのかなんて気にしたらダメだ。勝つんだ。あの時の様に。


 そう思った矢先に頭部に凄まじい衝撃と同時に顔面に入る鈍い痛み。

 何が起こったかと理解する前に意識が朦朧としてくる。脳が揺れた。立てない、立て、諦めるな、ふざけんな。何呑気に寝転がってるんだ、立ち上がれアクト!


「…アクト!」

『シカ、仕返し』


 何度も何度も頭を踏みつけてくる。揺れる脳が耳から溢れそうだ、うっかり目を開いたら後ろからの衝撃で眼球が外れてしまいそうだ。


「…っ!」


 アルマは蛇腹剣を伸ばしドラゴンの両腕を縛り上げると鞭の様にしならせ地面に叩きつけようとする。

 しかし、いくら姿が小さくなろうともドラゴン。空中に投げ出された瞬間に翼を広げ飛び始めた。


『ワたしに対して…ああ、ソうだ。爆破してきタな』

 

 体が動かない…

 アルマは俺を守るかの様に前に出て蛇腹剣を構える。

 何やってんだ、動け、アルマを…守れ。


 そんなことお構いなしに無慈悲にもドラゴンは手を向けると魔力を集め始める。アレは…


『ふむ…なるほど。ニンゲンと似た形になるのは(いささ)か気分は悪かったが…魔法伝達の効率が良くなっている』

「やめ…ろ」

『安心しろ。まだ食わん。先に煙の外のヴァリアントだ。逃げられぬ様にちょちょいとな?

 しかし先竜達の知恵がこの様に役に立つとは思わなかったぞ』


 ボンッと音がした。飛ばされた魔力の塊はアルマに直撃せず少し下に…足に向けて。


 目の前で少女の体が投げ出される。体を支える二本の足が…目の前で破裂した。


「…うっ、ぐ…ああぁぁぁっ!」

『そんなに騒ぐな、逃げられない様に足を無くしただけだ。死なない様に傷口も焼けてるしな』


 足を抑え丸まり痛みにアルマが悶える。


 何で目の前で大切な物が壊されてるのに体は動かないんだ?視界は定まらないんだ?


 どうする?考えろ、【クラウノス】で?いや、無理だ。避けられるし、そもそも効くかどうかもわからない。どうする。どうする…


『…悔しい?悲しい?ははっ、良いねえ。感情は魔力を美味しくする。特にその負の感情。憎悪、後悔。最高のスパイスだよ』


 目の前ドラゴンが降り立つと楽しげに嗤う。


『君はこの子、この子は君を。お互いがお互いを高め合う最高のスパイスだね。

 ああ、食べるのがもったいない!』


 演劇でもしてる様にわざとらしく指でジェスチャーをしていたドラゴンはピタリと止まると再びギラつく牙を剥き出しに、口を開く。


『あっ、そうだ。君らって性行為を行って子供を作るんだよね?決ーめた。

 君も魔族も私の巣に持って帰ろう。そして、毎日生行為をしてくれよ。生まれたての新鮮な赤子は私が美味しくいただくから』

「…ざけてんじゃねえ…ぞ」

『はぁ?あはははッ!睨むねえ!いいよ、もっと私を恨んで!もっと私を憎んで!殺したくて殺したくて堪らないくらいに!その呪いが、憤怒が!私の最高のゴチソウだ!』


 足から止まる事のない痛みのせいかアルマの声が聞こえなくなってきた。

 するとドラゴンはアルマの腹を蹴り飛ばす。苦しそうに咳込むのを確認すると『まだ生きてるね』なんてほざく。


 殺してやる。


 黒い感情が心を濁し、もうどうにでも慣れと1つだけ絶対にアルマにもやるなと言われていた事を実行する。


 クラウノスは上空から天雷を落とすスキルだ。勿論それは莫大な電気エネルギーであり俺自身に落とせば自分で魔力を補給できる無限機関にも成り得る。

 しかしアルマには止められていた。それをやる事によって体にはゼウスをエンチャントした状態の何十倍もの負荷がかかり、寿命も魔力も何もかも使い切るまで止まらなくなる。もはや、俺の意思では操れない…それでもいい。目の前のコイツを殺せるなら。アルマを助けるためなら。

 例え…アルマとの約束を違えようとも。


「【クラウノス】」


 スキルを発動すると目の前が真っ白に染まる。

 いかに自分のスキルと言えど勿論ダメージはある。痛みも伴うが不思議と体が消えていく感覚は心地良い。

 そして全てのエネルギーを魔力に…心臓が破裂しそうだ。いや、何度も破裂音がする。実際に破裂して再生しての繰り返しなのだろう。


『…何してる?』

「テメェを…ぶっ殺す準備』


 ふらふらと立ち上がることは出来た。ほんの少し動かすたびに激痛が全身を撫でた。

 あの日初めてゼウスエンチャントをした時の比ではない。今にも全身がバラバラになってしまいそうだ。


 実際に脆かった部分…治りかけだった両腕と眼球は即座に蒸発した。前が見えない。

 ベルセポネによって常時発動の超再生を持っても体の再生は間に合わなく蝋燭の様にじわりじわりと全身が溶かされていく。

 血液が沸騰し身体中が悲鳴を上げている。


『お前ふざけてるのか?そんなもん魔力を無駄に消費するだけだ。さっさと止めろ』

「馬鹿言うんじゃねえよ、クソ蜥蜴。

 この魔力は俺の大切な物を守る為に使うんだ。テメエみてえな猿真似野郎にやる魔力なんざ1ミリだってねえよ』


 魔力も命も同時に燃やしながら全身を駆け巡る赫い雷は、このまま行けば2度と戻れないぞと警告しているようである。

 そんなのお構いなしだと敵を見据えようとすると雷は両腕と両目に変化し、有り余る力は全身から迸り地面を抉る。

 


「第二ラウンドと行こうか』

『…上等だよ人間風情が』

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