表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/130

ベルサー防衛線


 

「避難はどうなってる?」

「へい、既に住民ほぼ全員が完了してます」

「そうか、武器は?」

「…正直、あれに有効なものなんてこの世にありませんよ」

「はぁ…だな」


 セルバー冒険組合長カシは部下からの報告に溜息をついた。

 

 魔王以上に厄介で実害のある災害。ドラゴンの出現は瞬く間に世界中に広がり侵攻上にある全ての国や街は対策を余儀なくさせられる。


「…そのくせして暗黙の了解のように逃げることは許されない。なるべくドラゴンの腹満たして死ねってんだからタチが悪い…」

「ボ、ボス!大変だ!」


 愚痴をこぼしていると部下の1人がまた部屋に入ってくる。今度はなんだ?


「桃源郷から人間が物流転送魔法陣で転移してきやがった!」

「なんだと!?」


 国内の街間でも品物や武器など以外の生物による転移を禁じられている。

 簡単な事だ。負荷が酷いし戦争の火種になる可能性もある。

 一定数の物なら簡単に転移できるので兵隊もワンサカ送れるが、武器ですりゃたまにぐちゃぐちゃになって送られてくる程度の性能だ。そうそう転移で飛んでくる国もいない。余程凄惨な目に遭うか、自分がどうなってもいいと宣うバカか。どちらにせよまともじゃない。


「逃げられたのか?」

「いえ、大人しくしてます」

「…けっ、まさか何処ぞの馬鹿勇者でも送られてきたんじゃねえだろうな?」

「そのまさかだ」


 対応に困ると俺を頼られても時間の無駄だと言うのに連れてこられると大人しく座っていたのは東洋人らしき人間…いや、東洋人よりも髪の色が黒い。


「カールマイドにはまだ捨てられた勇者がいたのか」

「僕はカールマイドではなくセルンで召喚された勇者だ」

「セルン?セルンってあの魔王領に1番近い小国か?

 バカも休み休み言え。あんな小国の何処に勇者を召喚するような魔導師がいる?」

「そんなもの、僕が知るか」

「そもそもだ。そんな話、国から一度も聞いた事がない。

 おいさっさと牢屋にでも入れとけ、それとも貴様はこの間来た糞魔族に肩入れするカスの仲間か?」


 異世界人はどいつもこいつも頭がおかしいのは知ってる。

 だが、こいつはどんな連中よりも頭がおかしいようだ。


「僕はこの街を救いに来た!」

「…はぁ?」

「ドラゴンが来てるんだろ?だったら僕も戦う。魔王なんて後でいい、今は救える命を救うんだ」


 ほらな。やっぱり馬鹿だ。


「はっははは!そうかよ、死人が1人増えるな。で?てめえ名前は?」

「ユウキ アタギだ」

「そうか、俺はカシってんだ。

 この戦いが終わったらうちで働けよ。能無しと魔族贔屓(ひいき)以外なら大歓迎だ」

「えーと…終わってから話し合いってことでも大丈夫か?」

「構わねえよ。

 おい、オクタヴィア。さっさとユウシャサマを前線に出せ。突っ立てるだけなら邪魔なだけだ」

「感謝する。共にこの街を守ろうな」

「馬鹿かお前は?全員ここで死ぬんだよ」



ーーーーー



 西の空が黒く染まっていた。

 双眼鏡を除けばそれが空の色では無く生き物の群れだという事がわかる。


 確かにこの世界には月が2つあったり、太陽がたまに南から登ったりとおかしな事は起こるが流石のユウキもこれには一瞬言葉を失うほどだった。


 落としそうになった双眼鏡を受け止めて隣の冒険者らしき人が話し出す。


「ワイバーンの群れだ。しかもとんでもない数のな」

「…強いのか?」

「ワイバーン自体はランク1の連中でも狩れる位には弱えよ。まあ、それは単体での話だがな。あんだけ数がいりゃ100匹も殺す頃には何人死んでるやら」

「範囲魔法での攻撃は?」

「…異世界のユウシャサマからすりゃ範囲魔法なんてのは当たり前に使えるのかもしれないがな…こっちの世界では使える奴が少ない。

 何よりも、魔力の消費が激しいんでな。こういう対群戦闘の時には下手に使えない」

「ふむ…」


 ならばどうすればいい。考えろ。ドラゴンを殺せば奴らは散るのか?いや、そもそも倒せるかもわからない…


「…なあ、あんた」

「ん?」

「何の使命感なのかは知らないがさっさと逃げた方がいいぜ。

 ボスはああ言ってが無駄に死ぬ必要なんて何処にもない…それにあんたが死んで悲しむ奴も…」

「そんなのはもういない。僕は…僕のやりたい事のためにこの命を使う」

「……」

「そうでもしないと僕を庇って死んだ2人に顔向けなんて出来ないからな」

「あっ、おい!」


 街に近づけさせては駄目だ。

 

 スキルで弓を召喚すると夜の(とばり)の様にこちらへと伸びてくる空へ向かって走る。


 無駄死になんてするつもりはない。

 勝って、生きて帰って…


「うぉぉぉぉぉっっ!!【レインアロー】!」


 単体に矢を集中して降らせる【サウザンドアロー】と違い、広範囲に大量の矢を降らせるスキルは消費も激しいがそれだけ範囲も攻撃力もある。

 それにポーション類は大量に持ってきた。回復しながら撃ち続けよう。


 仲間が次々と串刺しになって怒ってるのか?

 ああ、そうだ。俺がやった。こっちに来い!


「ギャォォォッッ!!」

「もう誰も傷付けさせない!」


 あの日守れなかったものをあの街に重ね合わせるかの様に…僕は弓の弦を引き絞った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ