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感謝を込めて

ムカデのはらわた引きずりだす」

「…なんて?」

「……ただいまって」


 どんな挨拶だよ。

 と言うか本当にその訳で大丈夫なんだろうか?実はめちゃくちゃ俺に悪口とか言ってるのではないのだろうか?


 アルマと街を歩いていると気付いたら後ろにエルヴァがいた。

 急にムカデなんて言われるから変な声が出たよ。


「ムカデを燃やす」

「……エルヴァもセルンで…戦わないかって」

「ん?そうなのか?」

「ムカデの服は汚い」

「……いい値段で雇うらしいけど…他にやることあるからって…断ったみたい」


 そもそも俺も言語として伝わらないのにあの人達に伝わったのだろうか?

 あ、魔法でどうにでもなるとか?


「ムカデはすり潰す」

「……アクトともまた話したいって」

「そっか、面倒くさいけど今行ってくるかな」

「……違う」


 違う?何が?


「ムカデの唐竹割り」

「……やっぱいいやって」

「え?あ、もしかしてエルヴァが話したかったのか?悪い悪い、いいよ。普通に話してくれよ」

「ムカデは切り刻む」

「……もう遅いって…アクト鈍感」


 やっしまったようだ。

 そりゃ話の流れ的にラケルさんだと思うじゃん。エルヴァの事かよ。


「ムカデを引き千切る」

「……美味しいご飯を所望する」

「…わかったよ、奢るから見つけたお店に連れてってくれ」

「……わーい」


 宿代は先にゲルダが払っておいてくれたようでお金は全て飯代と土産代くらいにしか使わない。


 それでもなんだかんだで姉妹みたいで微笑ましい2人の為についつい甘やかして、お金使ってしまうしな。



ーーーーー



 昼食後、どうするかと街をふらふら歩いていると土産物屋があった。

 まだまだ帰るのは先になるが普段世話になってる人に買うものを選んでおくのもいいかなと入ると結構色々と置いてあった。暇しなさそうだ。


「あら?いらっしゃいませ〜」

「……おおー」

「ん?どうした?」

「……色々ある」


 しかし随分と若い姉ちゃんだな。

 言っちゃ悪いが土産屋の見た目は随分と古いのに。言い方は変になるが2代目か3代目とかなのだろうか?


「あ、もしかして蓮華の所に泊まってるアクトさん達?」

「…蓮華?いや、まあ名前はそう…ですけど…」

「やっぱりー!エリンさんから聞いてた通りだ!」

「エリンさん?」


 誰だ?聞いたことのない名前だ。


「……アルマ達の泊まってる…宿の名前、蓮華」

「そうなのか?」

「……ん」

「ムカデを吊るし斬り」

「……それくらい知っとけ…って」


 と言う事はあのお婆ちゃんの名前がエリン?


「凄いわね〜何年前から予約取ってたの?」

「え、いや、掛かりつけの医者の知り合いってんで…」

「え!?本当?」


 え、何?そんなにいい所なのあそこ。


「蓮華の仙湯には特に魔力が沢山溶け込んでたり仙湯自体の濃度も高いからなのか無くなった腕とかも生えてくるのよ〜」

「あ、はい。聞きましたよ。仙湯凄いっすよね」

「…もしかして、聞いてない?」

「え、いや聞きましたって」


 あれ?ひょっとして話通じない系の方だったか?


「蓮華の仙湯はここら一帯でも特にいい湯なのですよ。それこそ他と比べ物にならないくらいに。普通は腕なんて生えてきませよ~」

「えっ」

「しかも、エリンさん1人で切り盛りしてるでしょ?だから、月に1団体くらいしか無理なのよ。かなり先まで予約で埋まってるのよ?」

「へ、へえー…」

「あ、お値段聞いとく?」

「い、いえ…」


 あの婆さんが?いやいや、何かの間違いだろ。


「そう言えばこの間ね、街にエリンさんが来ててね。

 どうしたんだろって話しかけたら古い友人の知り合いが来るからうんと美味しい料理を作らなきゃって…あら?どうしたの?」

「い、いえ…罪悪感からちょっと…」


 ……


「……アクト」

「…なに?」

「……ゲルダは口は悪い…だけど、アクトと一緒…優しいよ?」

「…そうだな」

「ムカデ」

「……エルヴァも精神安定剤…貰ってるって」

「ああ、そう…」


 精神安定剤を渡してるならついでにこのムカデ語をどうにかしてほしい。


「ここからは暫くは土産物のお店が並んでるから是非買っていってね。

 日頃の感謝はお土産に濁らせて」

「あ、はい」


 いけ好かねえババアとか思っててすみませんでした。素晴らしい人なんですね。


 心の中で念仏でも唱えるかのように何度も感謝の言葉を復唱した。

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