とある魔族少女の話
「ふい〜…」
「……ふいー」
結局昨日は食べ歩きまくってそれだけでも腹一杯だったと言うのに2人とも普通に夜ご飯まで食べてて驚いた。
いや、そもそも成長期なのだろう。いっぱい食べないといけないよな…
そして酒。昨日はほろ酔い気分でアルマを抱きしめて寝た。
相変わらず朝になったら自己嫌悪に陥った。
で、今は朝食を終え仙湯にいる。相変わらず他に人は見当たらず、昨日と違ってラケルもいない為、本当に貸し切り状態のようになってる。
「…あの、アルマさん?」
「……なに?」
「狭くない?」
「……落ち着く」
やっぱり距離感がイマイチ掴めない子なのか、これだけ広いのに膝の上にちょこんと座り込み仙湯に浸かっている。
「……心配だったから」
「うん?」
「……今からアルマが話すこと…」
「…話したくないことなら話さなくたっていいよ」
「……アルマだって…アクトだって…いつ死ぬかわからない…」
上目遣いで見上げられたせいもあるし、何より元から近かったのだ。息の届くくらいの距離である。
駄目だ駄目だ駄目だ。相棒だ、相棒なんだ。気にするな、やめろ、馬鹿やろう。落ち着け。可愛い。髪をお団子に纏めてる可愛い。落ち着け、馬鹿やろう。
「……はぁ…アクトの甲斐性なし」
「うっ…自覚はしてるけどなぜ今言う」
「……ばーか」
機嫌悪いのか?いや、今日は朝からニッコニコしてたし、エルヴァを見送った時も元気そうだったし…
「……アルマの角を折ったの…お父さんの部下…魔王騎士団の団長…その人がウルド…」
「てことは…騎士様がお前の角を?」
「……違う。
騎士様は騎士様…違く伝わってる…ウルドと騎士様は別…それと、お爺ちゃん…」
「…実のか?」
「……血は繋がってない。けど、昔から…魔法とか色々教えて…もらった」
…信じてた者からの裏切りか。
アイツらにけじめをつけるつもりはない。アイツらはアイツらで好き勝手生きてるのだ。それでももし…関わってくるのなら、アルマに危害を加えようものなら…
それにもう一つやることが出来た。アルマの角を折ったウルドと言うのとジジイ魔族。どれだけ苦しめて殺してやろうか。
「……アクト、悪い癖」
「ん?」
「……嫌なこと考えてるとき…シワがよる」
「そうなのか?」
「……ん」
優しく額を撫でてくれる。それ自体はいいのだが近いって…
「……父様は殺された」
「え?」
「……アルマが5歳の頃…毒を盛られて、弱った所を勇者がって…」
「そっか…」
「……2年間は普通だった…アルマも父様の代わりに…頑張ろって…でも…」
その小さな手はぎゅっと指を掴んでくる。
いつものような馬鹿力ではない、弱々しい少女のものだった。
「……アルマも魔族の間では…暗殺されたことになってる。
…それで、ウルドとお爺ちゃんに毎日殴られたり…熱い鉄を押しつけられたり…」
「無理するなって、思い出したくないことや話したくない事は話さなくていい」
「……アクト、優しいね」
その後、奴隷として売りだされたのはは2ヶ月前だそうだ…本当に最近まで色々と酷いことをされてきたのか…
魔族という種族は人間より長生きするから精神が成熟するのには人間より遅いなんて勝手に思ってたが…そうか、逃げられなかったから自我を保つ為に少し幼児退行していたのか…だからアルマは14歳にしては少し幼気で…
「アルマ…」
「……アクトはアルマの事…ふわもこすれんだーけいさちうすびじょに…するの?」
「え?いや、あの…それは…」
「……アクトは大きいのが…好き?それとも小さいのが…好き?」
……
「ア、アルマなら、なんでも好きかなー…なんて?」
「……ん」
それっきりで前を向くと寄りかかってくる。
お気に召した答えだったのだろうかと困惑してると聞いたこともないメロディの鼻歌まで歌い始めた。
「……アクト」
「うん?」
「……好き?」
「んー…そうだな、好きだな」
「……ん」
何に対してかは知らないがまあいいや。
アルマは満足そうにまた鼻歌を歌い始める。心地よい音色は眠気を誘ってくる。
流石に寝たら駄目だな。溺れそうだ。
結局うとうとしながらも指定された時間までアルマと共に入浴していた。
今はすっかり茹で上がってしまい扇風機らしきもので涼んでいる最中である。
その後昨日行ったまんじゅう屋で温泉まんじゅうを買い、今日はどこに行こうかなんて話していた時もアルマの耳が赤かったのは、きっとのぼせてしまっからに違いない。




