混沌の目覚め
薄暗く湿った土の中で、大きな魔石はいずれ来るであろう目覚めを待っていた。
幾千、幾万経とうとも不滅であるこの身は決して朽ちる事はなく、順番が来るのを待ちわび、目覚めたのなら己が満足するその時まで生き長らえる。
そしてようやくその時が来たのだろう。胎動が段々と大きくなるにつれて変化が起きた。
硬く巨大なだけだった石に亀裂が入るとその石をどんどん違った形へと変えていく。
巨大な腕や脚、翼、尻尾、頭部。やがてそれが石よりも硬い鱗や甲殻になり、二本の曲がった巨大な角となると鈍く光る瞳を開ける。
目覚めの時だ。
ゆっくりと自分の体を感じ取り、立ち上がると同時に産声にも似た叫声を上げる。
暗く湿った土から出ると、全てを包み込む程の光に照らされ目が覚める。
『グルルル…キュゴォォォォァァッッッ!!!』
大地を揺るがす程の声をもう一度上げる。
山という巨大な揺り籠から目覚め、見上げる程に巨大なドラゴン。その羽ばたき一つで森を薙ぎ払い、一歩踏み出せば池でもできる程に巨大な窪みをいくつも作る、災厄の化身。
目指す場所など無い。ただ、頭の中に思い浮かぶのは空腹の2文字のみ。
魔力のみ感じ取り進む。向かうべき場所は餌である人間が多く生息する場所。
彼女は知らないが、その街の名はベルサーと呼ばれる場所だった。
ーーーーー
「どうしたアルマ?ボーッとして」
「……なんか変な感じした」
「ふうん…そうか」
結局エルヴァに起こされ、昼食を取るとどうせ外に出たのだからと街を歩く。終ぞ行くことはなかったが前の世界でも一度でいいからこんな街を歩いてみたかった。
「……温泉まんじゅう?」
「湯気で蒸したまんじゅうだったり、単に温泉のある観光地で売られてるまんじゅうだな」
「……まんじゅうって何?」
「ムカデの蒲焼き?」
「…アルマ、翻訳してくれ」
「……美味しくなさそうだね…って」
ほう、餡子の素晴らしさを知らないのか。
温泉まんじゅうを買い、2人に渡す。
初めて見るものなのか大分食べるのに抵抗があるようだ。
それでも匂いに我慢できなくてか2人同時にかぶりつく。
「……はむ…ん!」
「ムカデは真っ二つ!」
アルマはわかるがエルヴァに関してはマジで喜んでんのか違うのかわからないな。
「……甘くて、ふわふわ」
「美味しいかい?ウチは生地も餡子も拘ってるからねえ。ここでしか食べられない美味しさだよ」
「……すみません、あと十個…」
「1日一つにしとけよ。太るぞぶっ」
「…ムカデはバラバラ」
「……デリカシーの無い男は嫌われるぞ…って」
「げほっ、ごふっ…」
大分強めな水平チョップを喉に頂いた。
「まあ、たしかに旦那さんの言う通りだよ。
飽きるまでずっと食べるよりかは長く食べてくれた方が体にもウチの店にも良いからね」
「……ん。我慢する」
「ひっひっ、あー喉痛…」
「……病院行く?」
「ムカデ?」
「アルマ心配してくれてありがとう。
あと、キョトンとしてるけどお前がやったんだからな、エルヴァ」
まあ、いいや…なんだかんだで楽しいし。
「それで?次は何が気になったんだ」
「……温泉卵…温泉の卵なの?それとも温泉にいる…魔物の卵?」
「あー…まあ、何の卵までは知らないけど食べてみればわかるよ」
「ムカデの殺戮ショー」
「エルヴァも楽しみかー。普段からそんなにわかりやすく話してくれよなー」
狂喜的な表情してたけど多分、楽しみなんだろう…と信じたい




