異国の勇者
「……アクト」
「はい…」
「……アルマは大丈夫…慣れてる」
「はい…」
「……剣もエルヴァが…落としてくれた」
「はい…」
「……悪い事したら?」
「すみませんしたッ!」
結局気絶してしまうほど放電していた。
と言うか久しぶりに向けられたあの眼が気に食わなかったんだろうな。
他人を見下したようなあの眼。勇者と同時に母も思い出す。最悪だ。
結局血は争えないのだ。自分が気に食わなきゃ暴力で解決。本当に最低の人間だよ。
「…ふん!ユウキ様を傷付けて絶対に許さないんだから!」
取り巻きの女性たちが各々頷く。何人いんだよ。しかも戻ってきた勇者も勇者でまた新しいの連れてきてたらしいし。
咫木 勇気と言うらしい。いいじゃないか名前に勇って入ってるし勇者にぴったりだ。
「いいさ、女の尻に敷かれてるような奴は放っておこう。
それよりも大変なんだ!この子の旅館が…」
何やらごちゃごちゃ始まったのでお茶を啜っていたラケルさんにも一応謝っておく。
「あはは…まあ、見ての通りなんですよ」
「はぁ…」
「とにかく弱い。こちらに来て1年半、カールマイドは既に魔王討伐の旅へ出ましたよね?」
「あー…たしかそうですね」
「言っては悪いのですがこの通り、Levelは低く強さも中途半端で」
「そっすね…」
「おい、お前。その言い方はないんじゃないか?さっきの不意打ちは勝負ではない。
正々堂々と戦えば僕が勝つ」
また取り巻きの女どもが頷いたり同意の声をあげている。
「じゃあ、戦ってもらいなさい」
「えっ!?」
「君が強いと言うならアクト君と戦って私にそれを見せてくれ」
「い、いや…それは構わないけど相手は不意打ちでしか勝てない奴なんですよ?」
「ふむ…アクト君はどうですか?」
「え、普通に嫌ですけど。なんで湯治に来たのに疲れなきゃいけないんですか?」
面倒事はこれ以上やめてもらいたい。
「ははっ、逃げるのかい?」
「あー…うわー、助けてー怖いよー」
「……アルマ泣いちゃうー」
「zzz」
「…上等だ!いいだろう、戦おうじゃないか!」
「だから嫌だって」
もうどっちが強いとか決めたいならお前が強いでいいからさっさと戻らせてくれないかな?
お腹空いたしアルマも飽きてるしエルヴァに至っては寝てるし。
「アクト君、そんなにダメですか?」
「面倒くさくて」
「お前より僕の方が強いぞ!」
「あーはいはい、強い強い」
「ふむ…では、持ってきておいた異界文書は国に持ち帰りますかな」
異界文書?元いた世界の本か何かか?
「陛下、言っておきますがそれは僕のもといた世界の神話が記されているものであり、はっきり言ってこの世界では珍しいと言うこと以外価値ががないですよ?」
「あの…それってどこの神話ので…?」
「……アクト?」
「たしか…ケルトでしたかな?」
ケルト神話…そうだ、読もうと思ってたけど結局母に捨てられてしまった本の中にあったぞ。
「異世界の方であるならもしや読まれるかと思ったのですが…」
「やりましょう」
「え?」
「勇者だろうがなんだろうが戦ってやりますよ。その代わりに…」
「よろしいのですか?」
アルマが信じられない者を見てくる目をしてる。
だって読みたいし、気になるし。
「…考えてもみろアルマ。あれを読んだらまた新しいエンチャントが思いつくかもしれないんだぞ?」
「…!やろう、アクト」
「な、なんだよ…たかがそんな本のためにやるって言うのか?」
「ではでは、とりあえず街の外でやりますか」
思わぬところで思わぬ収穫になりそうだ。




