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温泉での出来事



「……機嫌直して」

「いや、別に、悪くはなっていけど…」

「ムカデ」

「……エルヴァ、めっ。アクトだって男の子なんだから」


 もう本当にアホ。ちゃんと読んでおけばこんな事にはならなかったのに…


 なんだか服を着たまま入浴すると言う行為も変な感じがするがしょうがない。水着着て入る風呂もあるのだし。

 あと濡れて透けない素材のお陰で透けてはいない…いないのだが、体の線には沿って張り付く姿は目を逸らしてしまうが見えないのがよかったと思うと同時に心の中でどこか残念に感じる自分がいた。


 渡された行衣に着替えた後合流して現在に至る。それにしても本当に不思議な場所だ。キラキラと輝く湯に遠くに山のようなものが見える景色。最高だ。

 そりゃあ出来るならこう言うところで人生を終わらせたいものだ。


 そしてまた、エルヴァに何か言われてるが気にしない事にした。


「……?」

「…いや、着ているけどさ…目のやり場に困ると言うか…」

「……えっち」

「ごめんなさい…」

「………アクトもおっきい方が好き?」

「いや、あの…」

「……好き?」


 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

 だからそんなに強く腕を握らないで、そんなに近づかないで。待って、本当に待って、いい匂い、違う。胸元に隙間が、見ちゃダメ。近い近い近い。


「ムカデ」

「……え?本当?」

「ムカデ」

「……ん」


 ナイスエルヴァ。またアルマが顔を真っ赤にはしてるけど助かった。

 やっと離れてくれたアルマがジト目で見てくるのは気になるが気にしない事にしておくよ。


 しかし日本人だからと言うわけではないが気持ちがいい。

 

 あー、眠い…寝そう…


「……膝枕する?」

「はは、溺れるよ」

「……半身浴…みたいに?」

「大丈夫、大丈夫」

「……ん」


 あぁ、極楽だ。最高の気分だ。


「おや、随分とお若い方達で」


 ボーッと遠くの景色を見ていたら物腰優しい初老の男性が話しかけてきた。


 どっかの金持ちさんだろうか?


「どこか怪我を?」

「はぁ…いや、ちょっと寿命が残り17日ほどになってしまいまして」

「17日!?いやに具体的ですがそれは大変だ、出来るだけ長く浸かって景色を眺めたり、娘さん達と残りの余生を静かに過ごすのがオススメですよ?」

「いや、死ぬ気ないんで。寿命延ばすためにここ来たわけですし」


 そんなこと言うとその男性はくすくすと笑い始めた。


「いや、失礼。たしかにこの光景や温泉の気持ち良さに寿命が延びるなんて言われてますが実際には延びませんよ?」

「ああ、俺異世界の人間なんでこう…ふわふわした感じの命で一応決められた寿命までは延ばせるらしいんですよ」

「異世界人…?ふむ…貴方が、ですよね?そちらの魔族の方はどう見てもこちら側ですし」

「はい」


 …?なんだろうか。


「あ、もしかしてカールマイドの元勇者さんですか?」

「えっ、ご存知なんですか?」

「勿論ですよ。私のところでも噂は重ね重ね」


 へえ、どんな噂なのやら…


「謙虚で人の為に命をかけることにも辞さない素晴らしい人格の持ち主だと」

「……」

「いやはや、こんな所で会えるなど光栄ですよ」

「あの、大分美化されて伝わってますね、それ」

「えぇ、そうなんですか?ふくよかな商人さんから聞いた話なのですが…」

「ああ、その人の話は十中八九嘘なんで気にしないでください。それに、本人見た感じどうですよ?」


 じろじろと見てくる。いや、まあ言ったのは俺だけど。


「まあたしかに、一撃で人の頭を飛ばすなんて事は出来なさそうですね」

「あ、それは事実です」

「おぉ」

「あの謙虚とか素晴らしい人格の辺りですね。全くそんな人間じゃないので」

「ははは、ご謙遜を」


 話を聞けジジイ。


「……アクト」

「ん?どうした?」

「……熱い…って」

「出ればいいじゃん」

「……でも…」

「ああ、いいよ別に。最低でも俺は3時間入れって言われてるし。

 それにお金はあるだろ?買い食いは楽しいらしいぞ?それにあとで街のどこに美味しそうで食べたい物あったのか教えてくれよ」

「……ん。行こエルヴァ」

「ぷひー」


 まあ、俺も3時間も入ってりゃ茹で蛸になる自信はあるけどエルヴァは入浴30分でもう既に真っ赤だった。


 風呂とか入らなかったのか?それとも川で体を洗うだけとか?

 

 エルヴァに肩を貸し更衣室へと消えていった。

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