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いざ、桃源郷へ

 ベルサーの街を出て数時間。無駄な時間を浪費したがその分エルヴァが頑張ってくれている。


「……すぅ…はっ!ね、寝てない」

「いいよ、寝てろって。エルヴァは大丈夫か?」

『ム、ムカデノザンサツ…』


 …ダメそうだな。そりゃあ2人背中に乗せて走ってるんだ。体力も限界だ。


「休もう」

「……ん、おやすみぃ…」


 決めた途端にアルマは寝てしまった。疲れていたのだろう。

 魔法の道具で火を起こし一応魔物除けの謎の薬も辺りに撒いておく。


「ほら、エルヴァこっち来い。俺が見張りしとくから寝とけ」


 少し離れた場所で1人丸まっている。人間になっても動物っぽいが…まあいいか。


「それとも1人の方がいいのか?」


 そんな事言ってやると無言で近づいて来て横で丸くなる。

 別に寒くはないが近くにいた方が安心はするだろう。


「今日はありがとな。明日もまた頼む」

「貴方に借りた恩はしっかりと返すつもりですよ」

「そうかよ…ん?」


 え、誰の声?いや、普段から聞いてる気がするが…


「いやはや、貴方には感謝してもしきれませんよ。

 あの時、私が殺したかったムカデの人間は全員貴方に殺され、代わりに私は構成員だけを殺し…そのせいで中途半端な復讐になってしまいました」

「……あり?」

「ですが、そのお陰で私はまだ逃げた貴族共を皆殺しにできる。そんな目的ができました。

 あの時復讐が叶っていればそれも考え付かず生きる屍になってやもしれません」

「ねえ、ちょっと」

「最近はこの牙で噛み砕き肉片になるまで、この爪で引き裂き贓物をばら撒くことが…ふふ、何よりも快感なんですよ」


 丸まってたエルヴァが突然顔を上げると饒舌に話し始めた。

 なんか分からないが言い知れぬ恐怖を感じる。


「あ、あとですね。今度から周りに魔物の忌避剤撒くのやめてもらえますか?私にも効くから」

「は、はぁ…」

「大体、貴方知ってるでしょ?

 たしかに人間を餌程度に思ってる魔物もいるけど敵対したくないとかできるだけ近づきたくないって思ってる魔物もいる。それなのに土足で自分の住処に入ってこられて急に攻撃を仕掛けてくる。人間って本当に身勝手ですよね。死ねばいいのに」

「あの…エルヴァさん?」

「なんです?」

「話せたの?」


 いやだって、普段からムカデ云々しか言わなかったのペラペラと話し出したらそりゃ困惑するよ。

 当の本人はなに言ってるのこいつみたいな顔してるけど。


「普段から私結構話してるますよ?」

「ムカデ云々って?」

「は?頭大丈夫?しっかりしてよね、アルマの旦那様。そんなんじゃそのうち見捨てられるわよ」

「あ、いや、あの…」


 それだけ言い残すと再び丸まって寝てしまう。

 

 言いたいことだけ言って寝たよこいつ…


 まあ、気にしても無駄なので見張りをしている…その数分後には俺も疲れていたのか寝てしまっていた。


 それから暫くして目を覚ますと朝日が登っていた。それにいつもと比べ少しごわごわな抱き心地がした…いや、抱き心地感じちゃダメだろ!


 バッと目を開け手を見ると…エルヴァだった。


「……アクト…?」

「はっ⁉いや、あのこれはですね、違くて」

「……おはよぉ」

「…おはようございます」


 寝ぼけてて助かった…


 それから全員の目が覚めると持ってきていた食事を取り、いよいよ桃源郷へ出発だ。

 この速さなら多分昼前には目的地に着くだろう。


「……うっう…」

「アルマー!頑張れ!頑張るんだー!」


 そういえば起きた後にエルヴァに話しかけると相変わらずムカデ云々としか話さなかった。昨日のあれはなんだったのだろうか?夢?

 本人に聞いても相変わらず開ききった瞳孔でどこ見てんのかも分からなかったので諦めたが。


 やがてどこからか硫黄の匂いがしてくると前方に大きな街が見えてくる。間違いない、あれだ。


「……着い…た…?」

「あと本当に少しだから…大丈夫そうか?」

「……ん…もう…だめ…」

「アルマー!?」

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