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憤怒に燃ゆる

 外に出るとエルヴァが全身が痣と血だらけで立っていた。


「…誰にやられた?」

「ムカデ」

「……なんでもないって」


 まあ、聞かなくてもわかる。周りの連中がニヤニヤとこっちを見てるからな。だが、事を大きくしたくないのだろうエルヴァは黙ってる。

 周りの連中なんかよりよっぽどお前の方がよっぽど大人だよ。


 エルヴァにハイポーションを渡す。さっさとこの街を出ような。


「アルマの事、また頼んだぞ」

「ムカデは皆殺し」


 なんとなくだがやり返してくれ的な事を言ってる気がする。


「……ごめんなさい」

「ん?」

「……アルマが魔族だから」

「気にするなって、俺の世界にだって頭から角や猫耳生やしたり1日で髪の色が変わるような奴いたし」


 不安そうなので頭を撫でてやる。前と比べて毛並みも良くなったしふわふわに磨きがかかっている。


「…ルールは簡単だ。参ったっていうか気絶した方が負け。シンプルでクソ種族と人間の区別が付かない元勇者様にも分かりやすいだろ?」

「…ええ、そうですね」

「あと、お前が元とは言えど異世界の勇者なのでユースにフィジカル・エンチャント、武器と防具にも多重エンチャントをかけて戦わせる」

「は?」

「当たり前だろ、異世界の勇者様はとてもとても強いからな。それくらいやったって足りないくらいだ」

「おい、待てふざけ──」

「ヒュー!いいぞ!!」

「やっちまえユース!」

「ソイツは殺さないでも早く魔族は殺せ!」


 講義の声も見計ったかのような野次の声でかき消される。

 どうやら組合一同でグルだったようだ。


「ユース、準備は?」

「出来てる。なあ、ボス…殺しゃしないけど痛め付けんのはいいんだよな?」

「構わん」

「へへっ、了解」


 アルマも不安そうに見てくる。

 そうだ、しっかりしないと。


「時間は無制限だ。始めろ」


 合図と共に急に全身が淡く光る。なるほど、魔法による束縛…いや、マジで卑怯すぎない?


「ははっ、どうした?怖くて動けないのか?」

「…」

「動かないならこっちから行かせてもらッ」


 普通に腹を蹴った。足の曲げ伸ばしの反動に体重を乗せただけの俗に言うケンカキックというやつである。


 そもそも散々馬鹿にしてきた挙句に勝ったら見逃すとか訳のわからない事ほざいてた時点で卑怯な手を使ってくるのは明確だったのであらかじめゼウスのエンチャントはかけっぱなしである。


 文字通りの人ゴミを蹴散らしながらユースは後方に回転しながら飛んでいく。

 全員何が起こったか分からないと言った顔をしている。


「行ってもいい?」

「待ちやがれッゴホッ…ぐっ…」


 どうやらエンチャント類のおかげと駆け寄った仲間たちからの回復魔法でまだまだやる気らしい。

 腹の部分が凹んだ鉄製プレートアーマーを脱ぎ捨てまだまだやる気だと挑発してくる。


 くっだらねえ。さっさと終わらせるか。


 魔力はもったいないがしょうがない。瞬間移動して殴る事にしよう…


「おい、コダマ!」

「……アクト…」

「ムカデは皆殺しィ!」

「…そこまでやるか普通?」


 勝てないとでも思ったのだろうか、周りの冒険者たちがアルマに向けて武器や杖を構えている。ましてやエルヴァに至っては四肢にロープが繋がれ動けないように抑えつけられている。


「お前これ以上動けばわかってんだろうな?」

「それって勝負って言わなくない?」

「へっ、よそ見してんじゃねえよ!」


 ユースは剣を使っていたのだがわざわざ柄頭の部分で鼻を殴ってきた。舐められたものだ。


 まあ、痛みなんて全くないに等しいが。


「いつまで痩せ我慢してられるかな?それとも…おい」

「おう、任しとけ」


 何か合図を送るとアルマに剣を向けていた者の1人がアルマに近づきアルマを…殴った。


「お前とあのゴミ…どっちが先にやられるか我慢比べ──」

「【クラウノス】」


 別に殺そうなんて思ってない。ちょっと表面を焼く程度だ。


 目の前で天雷が起きユースが光に飲み込まれる。

 無論それはユースだけでなくアルマに剣を向けた者、エルヴァを抑え付けていた者に等しく降り注いだ。

 アルマを殴った奴だけは結構本気の奴なので多分、塵も残らないだろう。証拠隠滅にもなる。


 とにかくほんの数秒で殆どの奴が倒れ意識を失った。


「てっめえ…ッ!」

「組合長さん。まだやるってならいいよ。いくらでも相手してやる。

 ただしやるなら全員でかかってこい。どんな卑怯な手を使っても構わない。俺はその上からねじ伏せてやる」

「…ッ」

「アルマ、大丈夫か?」

「……ん。へなちょこぱんち」

「そっか…」

「ムカデぇ…」

「ああ、ごめん。お前もだったな」


 はあ…こんなアホな事に付き合わなければよかった。

 また、俺のせいでアルマが傷付いた。最悪だよ。本当に学習しない。


 ほら、見ろ。不安そうにずっと俺の腕を握ってる。少しは先のことを考えて行動しろ、アクト。


「待て!待ちやがれ!」

「…今度は何?」

「こんな事してただで済むと思ってんのか!お前もあの馬鹿ガルドも全員──」


 そこらへんに落ちてた石をベルサーの組合長に向かって蹴る。

 まあ当てる気はないけど紙一重で後方へと飛んでいきアルマを暗殺でもする気だったのか今しがたスキルか魔法かで姿を消した奴にぶち当たり吹き飛ばす。


「2度とこの街へは入らないと約束するよ。でも、今後一切ガルドさんに迷惑な手紙も送んなよな。あ、あと俺たちにも近付くな。

 お前の行動でこの街を地図から消したくないだろ?」

「どうしてだ…」

「ん?」

「んで、そんだけ強い力を持ってんのに人の為じゃねえ、そんなクソゴミの魔族なんかのために使うんだよ!てめえは人の味方じゃないのかよ!?」


 ……


「阿呆らしい、そんな事も分かんないなら辞めちまえよ組合長」

「……アクト、大丈夫?」

「問題ない。悪いなエルヴァ行けそうか?」

「ムカデの皮膚を食い破る」

「…なんて?」

「……ちょうげんき」


 折角忘れられてたのになんだかアイツらの事を思い出して無性に腹が立ってきたよ。


「どけ、邪魔だ」


 それでも、本当に神様がいるとするなら感謝したい。あの街が1番近い場所に最初に転生してくれた事に。


 巨大化したエルヴァに跨ると今度は大丈夫とアルマがしがみ付いてくる。

 

 日は傾き始め既に夜の帳は降り始めている。それでもこんな街にいるくらいなら危険な夜を動いた方がマシだ

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