寄り道
「……気持ち悪い…」
「もうちょっと、もうちょっとでベルサーに着くから。な?だから耐えろ?」
「……うぶぶぶぶ」
森を出て数時間経った頃思った以上にエルヴァが早かったせいか明日には着くほどに。しかしあと少しでベルサーに着くというのに魔物の群れと鉢合わせた。
しかも乗り物酔い…乗り物?まあ、ともかくアルマが揺れで酔ってしまって止まりたいのに止まれもしない。
「…戦うしかないか、アルマ…は無理だよな。エルヴァは戦える?」
『ムカデハコロス』
肯定と受け取っていたのだろうか?いや、ここで逃げ出したら後でどうにかすればいいだけだしいいか。
敵はフェンサーウルフと言う尻尾がレイピアの様に鋭く尖っている狼型の魔物だ。
基本的に6匹で一つの群れのはずなのだが…
「明らかに数が多いんだよな…20匹近くいるよな」
「……多分、繁殖期だから…うっ」
「アルマ!?アルマー!もういい、エルヴァ止まれ、撃ち漏らしは頼んだぞ」
『ムカデハキライ』
エルヴァの背中から飛び降りると剣を抜き刀身に炎を纏わせる。一ヶ月経っても基本はこれだ。ゼウスなんて余程の事が無けりゃ使いたくない。ましてや、余命宣告貰ってるわけだし。
「行くぞ!」
数の利はそっちにあるがこっちの方が火力はあるんだよ。目に物見せてやる。
半ばヤケクソになりながらも群れの中心へ剣を突き立てる。
炎が10数匹を取り込み燃やし尽くす。杞憂してた割には案外大した事ない様で次に次にと斬っていくうちに気付けば最後の1匹となっていた。
「ラストそっち行ったぞ!」
『ムカデハミナゴロシ』
グチャリと音がしてフェンサーウルフの最後の一匹がエルヴァの前足によって潰される。
アルマもエルヴァも無事だ。ふう、なんとか今回も乗り切って…
「あ?呼ばれてきてみたら…なんでこんなところに魔族なんているんだ」
聞き覚えのない声ではあった。でも、その声に含まれてるのは悪意。ヤバイと思った時には既に体は動いていた。
「まあ、いい…さっさと処ぶべらっ」
ゼウスエンチャントからの渾身のドロップキック。
後で知った事だがどうやらベルサーの冒険者だった様だ。
ーーーーー
「なあ、兄ちゃんよ…気持ちはわかんぜ戦ってる時に急に話しかけりゃ思わず武器は振っちまう」
「…そっすね」
「それに、こっちのもんもたしかに聞きもせずに兄ちゃんの仲間を傷つけようとした…」
「…そっすね」
「だがよぉ…これはちと、やりすぎじゃねえか?なあ?」
「…ホントすみませんした」
「すみませんで済んだら衛兵いらねえだろうがァ!」
ベルサーの街には着いた…着いたのだが…グラサンかけた、いかにもな方に現在進行形で説教くらってる。
「ユースはたしかに口は悪いわ、素行は悪いわで手を付けられねえ馬鹿野郎だ」
「……」
「なあ、だがな…俺の仲間なんだよ…どう落とし前付けてくれんの?」
先程ドロップキックかました冒険者…ユースと言う男は彼の仲間やギルド職員からひたすら回復魔法をかけられている。
いや、だって…まさか討滅作戦中だなんて思いもしなかったよ。たしかに1匹、妙に強いし尻尾の針飛ばしてくる奴いたけどさぁ…
アルマもも睨まれてから縮こまってる。
エルヴァ…うん、コイツは大丈夫だ。人の悪意しか知らねえからそしらぬ顔してる。
「あの…報酬とか全部…あげるんで、その…」
「いや、そりゃあ当たり前だろ。とりあえず冒険者カード見せろ」
「…うっす」
渋々懐からカードを取り出すと引ったくられる。
お願いだからそれ担保にとかはやめてほしい。
「コダマ アクト…あっ、てめぇもしかしてボスの言ってたランク5昇進蹴ったやつか」
「あ、いえ、蹴ったというかなんというか…」
「へえ…まあいい。とりあえずボスのとこ来い。
まさかと思うがただで済むとは思ってないよな?」
「…」
「……アクト、アルマも一緒に謝る」
「ありがとう…」
こうして連れてこられたのは街の中の一画、見た目はうちの組合とあまり大差はないが内装は此方の方が少し古い。いや、そういう風に見えるようコーディネートでもされているのか。
あとは…うん、敵意が凄い。多分なんだかんだで慕われてる奴だったんだろうな。後で絶対何か言われる。
アルマも握ってた手を強く握り返してくる。
あの街ではともかくこっちでは魔族は敵認識らしい。わざと聞こえるような声で悪態ついてきてたし。
エルヴァは…大丈夫だって親指立ててる。何が大丈夫なのか聞きたい。




