貴方の墓前に
ゼタールはいそいそと地図をしまうと再度口を開く。
「元々は東のシン国とかヤヨイ国にある街並みを再現したり色々とやってた街なんですがね、源泉でしかも仙湯も湧き出したんでこれはいいぞって観光地になったんやす」
「へえ」
知らない事が多いな異世界。
「まあ、とうのシン国はふざけんじゃねえってキレてましたけど。
そりゃあ、あの国は入るだけで結構金取られますしね。だったらパチモンでも近場の方がいいじゃないですかい?
そしたらボンボンどもが結構群がりましてね」
「ああ…何というかだな」
「……立つ瀬がない」
「ムカデ…」
まあ、古き良き本物より現代に合わせた偽物の方が流行るのはたまにある事だ。
何というか文化が廃れていくのはこういう事なのだろうなと思った。
「あっ、旦那。そういや、勇者パーティーが…」
「いい加減に俺のツラ見るたびにアイツらの話をするのやめろ」
流石にそろそろイラっとくる。しつこいぞ。
「へいへい、すいやせん。
おっと、あっしはこれから貴族様と納品についての話し合いがありやした。ここらで店閉めさせてもらいやすよ」
「わかった。時間とらせて悪かったな」
「いえいえ。
エルヴァも日頃の疲れも精神的な疲れも取ってきな」
「ムカデは逃がさない」
「はっはっはっ、そうかい」
取り敢えず足も手に入った事だし早速向かうことにするか。
あ、でもその前に向かう場所があるや。
ーーーーー
「……アクト、ここってゴブリンの森?」
「ん?ああ、そうだよ
「……立ち入り禁止だよね?」
「はて、何のことやら」
少し遠回りにはなってしまうがよる所と言うかお墓参りだ。
一回でも上位の魔物が出た場所は暫く立ち入り禁止となるらしい。
なんでも、死んだ上位の魔物の肉を食って他の同種類の魔物がまた上位の…ともかく誰もいないおかげで変な目で見られることもない。
ええと…場所、場所は…
何せ一ヶ月も前の話である埋葬した場所の鮮明な位置など…
「ん…?」
「……?」
「えぇ…」
うろ覚えに歩いていたら何か見覚えのない建物ができていた。
小さな神殿…だよな?え、でも確かにここにクォルタを…
近づいて見ると何やらクォルタを模した象や彫刻があり、階段を登った先には石で出来た棺桶があり、その周りに大量の花が供えられていた。
「……誰のお墓?」
「ゴブリンロードのクォルタって人…の筈」
「…えっ!」
「アルマを助けに行くときに背中押してくれた人だよ」
と言うか何かアイツら魔物程度とか思ってたけど違くね、普通に高度な文明築いてない?
…まあ、いいか。御供物どこだっけかな。
袋の中を漁ると先日買った少し高めのワインを取り出す。ゴブリンが酒を飲むのかはわからないが飲んだ事ないのなら是非あの世で飲んでもらいたい。
「遅れてしまい申し訳ありません、無事にアルマを助け出すことができました」
「……」
「また、俺がぐだぐだと迷ってるようだったら化けて出てください」
「……」
「…よし、行くか」
そもそもこっちの世界に来て墓参りもしたことないので何とも言えないが合掌して一礼すると神殿を後にする。
「……ずっと、ゴブリンに見られてる」
「え?どこ?」
「……わかんない」
「あっ、そうだった。
おーい!この間は助けてくれてありがとうな!」
「…アクト声おっきい!」
アルマに怒られてしまったがしょうがない。流石に感謝の言葉を言えないほど捻くれた性格でもないし。
相変わらず森は静寂に包まれている。どこかにあるのかもしれないゴブリン達の住処が今後見つからないことを祈りながらエルヴァの待つ森の入り口まで戻った。




