魔族少女の秘密
アルマは不安そうに俺を見てくる。
そりゃそうだ。俺以上に若いのに死ぬなんて言われたら…
「……アクト、大丈夫?」
「俺はな…だけどアルマはどうしたんだ?寿命削るようなことしたのか」
「……言えない」
「な、なんだよ!そんなにやばいことなのか!?」
「……言えない!」
どうしよう、まさか俺の知らないところで何かに巻き込まれたのか?
それとも、重大な病気が…?となると本当に俺は大馬鹿だ…苦しんでる相棒のことを知らなかったなんて…
アルマの髪を優しく撫でてやると気持ち良さそうに目を閉じて甘えてくる。金が必要ならいくらでも払おう。エリクサーとか入手難易度の高いものが必要なら取りに行こう。絶対にアルマを死なせたりはしない。
「待たせたねバカップルども。話がついたよ」
「あ、すみません。俺らそういうのではないので茶化すのやめてもらっていいですか」
「……アルマとアクトは相棒…それ以上でも、それ以下でも…ない」
「その妙に冷めてる感じが嫌だねぇ…若いんだからちっとは青春を味わいな。
ともかくだ。金はたんまりあるんだろ?んじゃここに行ってきな」
そう言って渡されたのは何処かのパンフレット…うん?温泉旅館?死ぬ前に旅行に行って思い出作りでもしてこいと?
いや、俺はともかくマジでアルマは助けないといけないのになんでこんな時に…
「その温泉は私の知り合いの経営してる旅館でね。ああ、街自体が温泉街みたいな場所なんだよ。
で、普通は貴族や王族だとかボンボンしか入れないんだけどねぇ…昔のよしみでって事で予約取ったよ。ついでに負けてももらったしな」
「はぁ」
「場所は桃源郷つって…まっ、言っちまえばあの世とこの世の境にあるんだ…いや、どっちかってっとあの世寄りだな」
「あの…それが?」
「そこのお湯は仏湯って言ってね。それに入るとゆっくりだが傷が治るんだよ。私も昔腕を落とされちまったがほれ、見ろ。生えてきたんだよ」
そうやって左の袖を腕まくりしてみせるとたしかに線が入っており肘から先のほうが少し若い気もする。
「ええと、治すのはわかったんですが…それで俺の寿命とどう関わりが?」
「いいかい、異世界人のあんたはこの世界の人間と違って後から体内に魔力を生成するもんをぶち込まれたんだ」
「は、はぁ」
「で、命を魔力に還元して使ったろ?そしたらお前さんの命と魔力がなんかこう…ふわふわしたもんになったんだよ」
「えらく適当ですね」
「私だって初めての事例だし、よくわかんないんだよ。
ともかく、ふわふわした魔力は一定数以上になると今度はあんたの寿命に還元されるんだ。あ、不死ってわけじゃねえからな?決まった寿命までしか還元されない」
「なるほど」
「で、だ。今はとりあえず体の傷を治して、完治したならエンチャントを解除して…もうそこからは寿命は削られない。あとは湯治してたっぷり体に魔力が入れば無くなった寿命も戻ってくるって寸法さ…多分」
取り敢えず俺はなんかよくわからない生物になりかけていて、そのせいで寿命もヤバイってことか。
ん?じゃあアルマは?不治の病とか?
「アルマはついでだよ。ゆっくりと2人で癒されてきな」
「え、アルマの寿命の件は?」
「そっちは常に使ってるから寿命というか脳がヤバいんだよ。魔族の角の機能は聞いてるかい?」
「はい。えーと…魔力感受器官なんでしたっけ?」
「正解。で、脳と繋がってるからもし片方の角が折れてれば残った角の方の脳に負荷がかかり過ぎて…」
「死ぬと?」
「まあ、正確に言えば脳が壊れて廃人になる。飯も食わなくなりゃ普通に餓死して死ぬ。
お前さんと違ってアルマの場合は角を使い続ければ寿命残り一年って事だ」
「アルマー!?おま、お前何をしてんだ!止めなさい、今すぐに!」
「……や」
そう言ってそっぽ向く。
今までの話も大人しく聞いてくれていたんだ。頼むから話を聞いてくれ。止めてくれ。
「なんで?アルマこのままじゃ死ぬんだぞ?騎士様に会えないんだぞ?」
「……それでもいい」
「アルマ、なあ話し合おうか。
取り敢えず角の機能止めてな?な?切った?切ったよね?」
「……わかった…切った」
「切ってないよ、私の目を誤魔化そうなんざ100年早いね」
「アルマさーん!?切って、ねえお願いだから切って!」
「…やー!」
どうすればいいんだ…と言うかなんでこんなに頑なに嫌がるんだ。そんなに大切な魔力を受信してるのか?
「はぁ…アルマ、あと3秒内に角の機能切らないと、その理由アクトに教えちまうよ?」
「……卑怯者!」
「どうとでもいいな…まったく、過保護な子だよ」
理由?角を使っている?気にはなるがそこは個人的な事なのだろう。あまり踏み込まないでおこう。
「……切った」
「ああ、切ったね。ほれ、これ首からかけときな」
「……ん」
渡された首飾りらしき物をかけると少しだけ淡く光りすぐに消えてしまう。
何かしらの魔法が付与されていたのか?
「……ゲルダッ!」
「そうだよ、どうせ直ぐにまた使い始めるんだからもういっそ外からの魔力遮断したよ」
「???」
実はというか、俺は魔力とかそういうのはまったくわからない。そもそも見えてないもの信じろという方がおかしいがそういうのがあるからしょうがない。
あと先生の名前。ゲルダって名前だったのか。
「……ハズレない…なにこれ」
「当たり前だよ、取れない様にしてんだからな。別に角を使うなって言うんじゃねえんだよ。ただ、見えるとこにいる時は切っときなって話さ」
「……こんなもの…」
「アクト、アルマはねぇ…」
「……ゲルダ嫌い!」
…まあ、取り敢えずこの1ヶ月間中々にハードだったしいいか。
休暇に行こう。




