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エピローグ

「……もふもふ…でしょ?」

「あの、抱き枕にしてたの悪かったので、とりあえず降りてもらえますか?」

「……ん」


 結局昨日は昼食を取った後、日が暮れる間際まで模擬戦をさせられていた。

 食べた直後なので脇腹痛くなるわ、病み上がりだし1週間も寝てたせいで身体中が痛いわで最悪のコンディションでしかもまた【ゼウス】を使った。

 自分の今あるMP内であれば寿命も削られないのでなんとか動けはしたが久しぶりにマナポーションで胃がたぽんたぽんになった。


「…怒ってます?」

「……酒臭かった」

「本当にすみませんでした」


 頭を地面に擦り付けるほど土下座をする。


 しかも模擬戦の後に更に飲みにまでいった。

 アルマは飲めないので頬を膨らませていたが未知の味ツマミ達を食べれたのでなんだかんだ機嫌は良かった。


 で、その後2人と別れるとアルマに半ば引きずられる様に宿へと戻り、アルマを抱き枕と勘違いしてそのまま寝てしまった。


 嫁入り前の娘としかも同じベッドで、なんて事してるんだ。馬鹿なのか?


 そして現在に至る。

 迫りくる良心の呵責と罪悪感で死にたい。


 だが、言い訳させてほしい。もふもふなのだアルマの髪は。最高に抱き心地がいい。羊みたいに。酔っ払いからすれば最高の就寝具だ。

 何なら普段から抱きついてもふりたい。


「……アクト」

「はい…」

「……顔上げて」

「…はい」


 顔を上げる。そこに待ってたの般若の形相でも、正当化された暴力でもない。朝日が後光の様に輝き普段見せないような優しい笑みを浮かべた少女の姿だった。


「……起きたら、最初はおはよう…だよ?」

「…オハヨウゴザイマス」

「……ん。おはよアクト。今日からまた…よろしくね」


 どうやらウチの相棒は寛大な心で許してくれた様だった。



ーーーーー



「おう、アクト!今日から復帰か!」

「え、あ、はい。そうっす」


 朝ごはんを食べに冒険者組合に来ると知らない冒険者から急にそんなこと言われた。


 もしかしてまた昨日の夜絡んだのか?…いや、記憶はあるぞ。絡んでない。


「お、今日は早いね」

「おはよー、アルマちゃん。アクト起きてよかったね」

「……ん」


 それとアルマと仲良くなってる奴が多い。別に悪感情持ってる奴しかいなかったと言うわけではないが。

 というか話しかけてくる人も殆ど知らない人だし。


「よお、アクト。あんたも幸せモンだよな。アルマちゃん毎朝クエスト受けて昼前には終わらせてからは心配だからって診療所でずっとお前さんに昼間起きた事話しかけてんだよ?」

「ヒュー、いいよな。俺の嫁さんにも爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだぜ…」

「……言わないで…」


 今日は何だか珍しい表情が見れるな。 顔どころか耳まで真っ赤に染めて目を逸らしている。

 まあ、まともに顔見てるのたった2日しかないので普段からこんなに感情豊かなのかもしれないけど。


「お2人ともおはようございます」

「あ、どうも」

「……おはよーベル」


 受付のお姉さんがまた前の席に座ってきた。と言うか名前ベルって言うのか知らなかった。


「聞きましたよ、ゴブリンロード討伐の件。あの個体結構昔からいて被害も大きかったんですよ。

 それを聞いたのか凄いですよ、各街の冒険者組合長からの推薦」

「え?」

「あれ?聞いてないんですか?ランク0からランク5まで一気に上げろって…」


 初耳だし嫌なのだが…


「あの…」

「おう、俺も推薦しといたぜ」

「…ガルドさん」


 奥からガルドもやってきた。面倒くさいことになってる。


「………おめでと」


 うん、喜んでないね。凄く寂しそうだし。


「したがってよ、上から指定されたメンバーとパーティー組んでくれって来るからよ…」

「断る事って出来ますか?」

「はぁ!?…いや、待て。言わなくてもわかるぞ。もう色んな人間から変に期待されたくないんだな…それにアルマを置いてくってのもな、気持ちはわかるが…」

「建前としてはそんな感じですね。大勢の人に期待されたって俺はそんな期待答えられる気がしませんし…」

「ゴブリンロードを倒してもか?」

「ありゃ倒したんじゃなくてたまたま介錯しただけですし…」

「…じゃあ、本音は?」


 アルマが不安そうに見てくる。大丈夫だって。心配することは何もない。


「アルマと…相棒と自分たちのペースで足踏み揃えたいんです。身勝手なのはわかってますが、それでも…」

「…うし、んじゃ白紙に戻しとくわ」

「え?」

「嫌なもん無理やりやらせるなんて連中と一緒だろ?」

「そりゃあ…」

「この間も何しに来たのか知らねえが馬鹿にするだけ馬鹿にして帰ってったよ。救い用のねえ馬鹿だな、ありゃ。耄碌してもああはなりたくねえな」


 …何だかなぁ。


「えー、折角申請通したのにー…」

「俺たちや他の街の組合長が認定するのも大事だが少なくとも俺の決めたルールでは本人の意思が1番大事なんだよ」


 …ん?というか何故ガルドさんが仕切ってるんだ?


「……アクト、ガルドは組合ちょー」

「…くみあい、ちょー?」

「……ん」


 ここの組合で1番偉いってこと?普通ふんぞり返って椅子に座って命令してるんじゃないの?フィールドワークしてない?

 というかこれも初耳だよ。知らない聞いてない。


「ああ、そういやお前に話したのはちょうど酔っぱらってた時だったな」

「あ、じゃあ聞いてないのと同義ですね、すみません」

「…まあ、いい。他は知らんがこの街にいる間はお前は俺の部下なんだ。俺のルールに従ってもらうからな」


 解散だ。さっさと仕事をしろ。それだけ言ってガルドさんは行ってしまった。

 …無理やりにでもやらせられるかと思ったよ。


「……リハビリにはこれ」

「んー?増えすぎたスライムの駆除?」

「……よく燃える」


 燃やせってことね。


 クエスト受注カウンターで依頼を受けると早速依頼の場所へと向かう。


 優しい人ばかりだ。

 前世もこっちでも人運は逆カンストしてたが…3度目の正直。今度こそは…

 淡い期待を胸に今日からまた頑張って生きていこう。

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