戦いの後で
「……あーん」
「あの、アルマさん。自分で食べられるのですが…」
「……怪我人は絶対に安静
スプーンなんて持ったら指の骨が…折れる…」
「いや、そもそも怪我してないし疲労で入院しただけなんですが」
目が覚めたら1週間ほど経過してた。
開口一番にお腹空いたと言われた時は飯食ってないのかとか思ったが…単に食べてないだけで食事はしてると言っていた。よかった。
「あ、旦那すいやせん。お邪魔でしたようで」
「気にするなもゴォッ」
「……食べる」
食べはするから自分のペースで食わせてくれ。
口開くたびに粥を突っ込まれて会話がしづらい。
「はっはっはっ、いやはや。
やはり連中に売ったより旦那に売って正解やしたね」
「そういや、あんた元ムカデなんだろ?エルヴァ大丈夫なのごっ」
「ああ、仕事手伝ってもらってやす」
「ムカデは皆殺し」
あの時ムカデの連中皆殺しにするから手伝ってくれと言ったところ快く背中に乗せて運んでくれた。
そのお陰でアルマを助けられたので感謝はしているがどうやら彼女は言葉を話せないらしい。
組織名なのか虫の方なのかは知らないが「ムカデ嫌い」だとか「ムカデ殺す」とかしか言わなく意思の疎通が中々に難儀だ。
アルマ曰く、捕まってた頃は普通に話していたのでそのうち普通に話す様になるのかもしれない。
「あっし、そもそも末端メンバーなんでね。
やってた事も仕入れだけですし」
「…どうだもぐゥ」
「ムカデは臭い」
「一応恩義は感じてやしてるみてえですぜ」
「ムカデは人でなし」
「…何に対しての恩?」
言ってることがわかるのはゼタールくらいだ。
まあ、長年奴隷商人やってるし言葉が分からなくても察して理解出来るのか?
「……アクト?」
「ん?」
「……楽しい?」
「そうだな…」
異世界に来て直ぐの頃。まだ連中と仲良かった頃…怪我して笑ってバカやってたな…
ほんの少しのいい思い出にふけているとタイミング悪くゼタールが口を開く。
「そういや、勇者パーティー帰ってきやしたぜ。
んで、明日には魔王討伐に向けて旅を開始するようで」
「…あっそむぐげ」
「あっしは思うのですよ。旦那にとっちゃいい思い出があるかもしれやせんがね…毎回やってる凱旋パレードで見かけた時に見たあの眼…ありゃ環境による心情の変化だとか、名声による自尊心の増大とかじゃありやせんね、本性でさぁ」
「どうでもいごぼ」
「……食べ終わったら?」
「…ごくん…ご馳走様でした」
「……ん」
一応は街の端っこにある小さな診療所に入院してたのだが昨日目覚め、今日の午後には退院していいと言われたので昼飯を食い終わったところだし約束を果たすとしよう。
しかし、なんと言うべきか…人を殺したことよりも何よりも散々ハズレスキルと思ってた物で戦い勝利し、剰え命を繋ぎ止めた。
これからは大切にしよう。こっちの世界に来た時点でもう身体機能の一部のような物になってるのだから否定は良くない。
「……これ」
「ん?どうかしたか?」
「……ネーミングセンスは無いけど、気に入ってる…」
「なんだと、俺の世界の超強い生物の名前だぞ」
「……ふふっ…じゃあ、いいや」
ーーーーー
「……ごっはん、ごっはん」
今日はいつもと比べて心無しか表情が明るい。
「……お腹空いたね」
「いや、ついさっきまでひたすら口に粥ねじ込まれて腹がもう…」
「……」
「わかった、わかったから!あー、お腹空いた!ちょうどハンバーグ1枚くらい食べたい気分だ!」
涙目で見ないでくれ。嘘でもこっちには効果あるから。
「……ありがと」
「え?」
「……アクト、助けに来てくれた」
「あー…」
……
「まあ、なんだ。今回の件は全部俺が悪い。
お前の気持ちを汲み取ってやれなかったし…手を上げた。最低だ」
「……アルマが弱いから捕まった…そのせいでアクトの寿命が…アルマも悪い」
「大丈夫、アルマに手を出した罰だって」
しんみりとした空気が漂いかけた時に「おーい」と遠くから自分たちに声がかけられる。
「よっす、アルマ。元気そうだな」
「……クララ」
「いやー、よかったよかった。アクトも退院か」
「デン。なんか久しぶりに会うな」
「君と最後に会ったの先週だからね」
「でも、よかったぜ。2人とも無事でよ」
デンとクララはなんだか砂埃まみれだし防具もボロボロだった。
「ん?ああ、これ。ランク1のロックエレメントとやり合ってきたんだ。強かったよ」
「まっ、アタシとデンにかかれば赤子の手をひねるより楽勝だったがな」
2人ともこの前の討滅戦と最近のクエストでランク上がったらしい。
そういえばゴブリンロードの報酬もらってないし一度冒険者組合にも行こう。
「仲直りできてよかったがよぉ?
アクトになんかやられたら、アタシらんとこ来いよな。アタシがぶっ飛ばしてやっから」
「……大丈夫。喧嘩してもアルマとアクト直ぐに仲直り…出来る。
あと、アクトはクララより…強いよ?」
「…はぁ?上等だコラ、おい面貸せアクト。白黒はっきりつけてやる」
「いや、別に俺は…」
「その前に、昼食だよクララ。アクトがランク1への昇進祝いに奢ってくれるらしいよ」
「マジか!?」
言ってないのだが?
まあ、色々とアルマが世話になったしいいか。
「……楽しいね、アクト」
「よかったな」
まだまだ実力も精神的にも未熟だ。これからも頑張ってアルマに置いて行かれないようにしないとな。




