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「……アクト」


 馬車に揺られて数十分。そろそろ街が見えてくる頃だ。


 先程アクトに抱きついた際に魔力の波長は読み取った。今度はもう間違えない。何処にいるかもわかる。


 大丈夫そうだけど…でも…どんどん命を削ってる…

 私にはどうすることも出来ない。行けと言われたのだから行くしかない。

 

 気を紛らわせるつもりなのか床に転がっている金品とエルヴァを見て。大丈夫だと何度も自分に言い聞かせる。


 と言うかエルヴァはピクリとも動かないが大丈夫なのだろうか?


「アルマ…ちいといいか?」

「……ん」

「マズいことになった」


 馬車を操っていたゼタールは急にそんな事を言ってきた。


「連中に囲まれた」

「……任せて」


 ワルプルギスを使えば彼らの装備してる魔法道具を破壊できる。そうすれば多少の足止めは出来るだろう。


「動かないでもらうと助かるなー」


 首筋に冷たいものが当てられる。

 突如として起き上がったエルヴァはナイフで脅してきたのだ。


「……冗談なら後にして」

「はぁ?何言ってるのー?僕はエルヴァじゃない」

「げっ、入り込んでやがったのか!」

「そうだ、ゼタール。この裏切り者が」


 そうだ。たしかアスとか呼ばれていた少年だ。

 

 エルヴァに化けていた?


「ゼタール。お前が何を思って行動してるのかは知らないけどさー、この子の首を切った後に君の首を切り落とすことなんて造作もないってことはわかるよねー?」

「…うっす」

「このまま街へ突っ込んで。

 僕らの組織をめちゃくちゃにしたんだ。

 国からの命令なのか、個人的な事なのかは知らないけどさー?ちょうど勇者もいないじゃーん?なんなら勢いのままに国を乗っ取っろうって算段なのさー」


 ゆっくりとナイフが皮膚に食い込むと血が滴り始める。


「どうやって生き返ったかは知らないけど…あの、出来損ない勇者なんて今頃ゲルがとっくに殺しちゃってるしー?

 僕たちは先にこの街を滅ぼして合流後に王都に攻め入るんだ」

「…いいんですかい、裏切り者にそんなベラベラと」

「いいんだよ。どうせ殺すんだし。でも、アルマは別。また高く勝ってくれる人がいるかもねー?」


 そんな事を言耳元で言われているとアクトに反応がある。


 なんだ、やっぱりアクトの方が強いんだ。


「お前何笑ってるの?あのヴァリアントみたく頭でもおかしくなったの?」

「……別に」


 良かった、このまま何処かへ行ってしまうのかと思っていた。


 外からは馬の走る音とは別に人の悲鳴が聞こえ始める。


「…なに?おい、なにやってんだよー!」

『オオォォォォォォォッッ!!』


 聞き覚えのある咆哮だ。


 アスが苛立だしげに荷台の幕を破ると後方から巨大な銀狼がちょうど仲間の最後の1人を噛み砕き、吐き捨てていたところだった。


「ッ!?ヴァリアン─」


 パチンと目の前で閃光が生まれた。


「お前がアルマを傷付けたのか?」


 ここにコイツがいるという事は既にゲルは…


「うぁ…よくも、よくもゲルをッッ!!」


 ナイフでアルマの首を掻き切る。

 お前が僕から大切な物を奪ったならお前からも大切な物を奪ってやる。

 その後、丁寧に薄皮一枚ずつ斬り落として生まれてきた事を後悔したら…

 そんな事を考えながら宙に舞っていた。いや、頭だけが空に。


 最後に見えた光景は馬車から落ちる自分の体と無事なアルマ。そしてばーかと罵倒してきたアクトの姿だった。



ーーーーー



 なんだか俺よりも強いみたいな事言ってたが実力を出す前に殺しちまえばいいだけだ。


 疲れたので馬車の荷台に寝転がると違うと首を横に振られ膝枕される。

 兄がされているのは見たことあったが自分がされるのは初めてだ。なんともまあ、心地が良い。


「……おかえり」

「ただいま」

「……戻ってくる気なかったんでしょ…?でも…戻ってきてくれたの?」

「…忘れ物取りに来ただけだ」


 やっと体にかけていたエンチャントを解除すると全身が悲鳴を上げ始める。そりゃそうだ。酷使云々の話じゃない。限界を超えて動いていたのだから。

 途端に眠くもなってくる。ああ、駄目だ。近くにいたらまた最低最悪な事をしてしまう。なのに…離れたくない。これからも楽しく過ごしたい。


「……大丈夫。アルマはアクトの奴隷で…アクトはアルマのご主人様…どんな事も受け入れる」

「嫌なら嫌って言って、楽しく…過ごし…て…変えてい…」


 駄目だ眠気が限界だ。目蓋が上がらない。


「……おやすみ。私の2人目の騎士様」


 微睡(まどろみ)の中でアルマが何か言った気がした。

 起きてからゆっくりと話ぜばいいか

 


ーーーーー



 街に着き、荷台を見ると二人揃って寝ていた。


「…はあ、何だかなぁ」


 何というべきか、小さな少女に膝枕されて寝ている奴と、そのまま満足そうに寝てる奴。

 男女間のそういう関係じゃないのは勿論知ってるが今の姿は母と子のように見えた。


「やれやれ、これじゃあ起こせやしねえや」


 人知れず街の危機を救ってくれた奴らを起こすのもそうだが、状態が状態なために起こし辛い。


「戻ったか」

「ガルド。なんでい、あっしのこと待ってたんですかい?」

「そんなのではない。街の外でな巨大生物を見たと見張りが言うのでな見回りだ。

 それと2人の宿は取っておいた。安宿だがここよりはマシだ。さっさと2人を置いてこい。春先と言えど風邪を引く」


 相変わらず真面目そうでいて、その実人の心配をしてる奴だ。


「ムカデ嫌い」

「うおっ!…あれ、ヴァリアントの嬢ちゃん?」

「ムカデはぶっ殺す」

「ん?ああ、あそこの角を曲がったところだ」


 ひょいひょいと2人を担ぎ上げるとガルドの指差す方へと歩いて行ってしまう。


 凄く物騒なこと言ってたが大丈夫だろうか?

 自分は殺されるのだろうか?


「とにかく今動ける面々で俺たちは向かう。お前もこんなところで油を売ってないで家に帰れ。妻子が待っているぞ」


 それだけ言い残すと集まってきた冒険者達と街の外へ行ってしまう。


 組織は壊滅したことだし足洗って真っ当な奴隷商人として生きていくか…


 まあ、2人は無事に戻ってきたことだ。

 商人の勘ではあるがアイツらと連んでいれば儲かりそうだなと。

 そんな事を考えながら馬車で家路へと向かった。

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