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その男危険につき、感電注意

アルマは怒っていた。何にと言われれば多分寿命をMPに変換して使い続けてる事だろう。


「……なんで?どうしてアクトは…アルマ何かのために命を削るの…?

 アルマはアクトに殴られる為に買われた奴隷…なのに?」

「名前呼んでくれたからな」

「……え?」

「初めてだよ。家族以外に名前呼ばれたの。

 みんなコダマ君とかコダマとか名字でしか呼んでくれない。でも、アルマはアクトって俺の事を呼んでくれたから」

「……そんな事で」

「それに、無抵抗の女の子殴ろうとしたからな。その罰だ」


 謝りはしたが未だに心の中でじくじくと思い出す。

 最低最悪の人間だ。


「……アクト」

「ん?」

「……アクトが勇者じゃなくて、アルマが奴隷じゃなくて、私達が冒険者になった記念だから」

「そうだな…手短に済ませてくるから街で待っててくれ。

 何でもいいぞ、お祝いは豪華にするものなんだろ?好きなものでいい」

「……ん。ハンバーグ食べたい」

「いいぞ」

「……2枚重ね」

「チーズも挟んでもらうといい」

「……付け合わせはポテトがいい」

「そんなに食べ切れるのか?」

「……お腹ペコペコ」


 ふわふわの髪の毛を乱雑に撫でると心地良さそうにしているが、地下からの階段から声も聞こえて来たのでそろそろ本当に行ってもらいたい。


「頼んだ」

「任せてくだせえ」

「……指切りゲンマン」

「こっちじゃどうなんだ?え?ドラゴンの(とげ)?普通に即死しないそれ?」


 指切りまでしてきた。

 名残惜しそうに手を伸ばしてくるがその手は掴めない。

 2度と触れる事も無いだろう。だってこいつら皆殺しにしたら逃げた連中も殺しに行くし。


「……また、後でね」

「ああ」


 守れもしない約束して、嘘ついて…やっぱり俺は最低の屑だな。



ーーーーー



 とりあえず全員が出てくるまで待っていた。

 そしたらまあ、出てくるわ出てくるわ。アリの巣に水を流し込んだみたいだ。


 数は…50人ちょっとかな?

 で、ゲルとアスが前に出てきた。


 なにか当たり前のように腰の左右にアルマの蛇腹剣と俺の剣を装備してるのが腹立つ。


「ちょっと強くなったからってまあ、随分と調子乗ってんな」

「ちょっとじゃない。

 あの子が望むなら今だけは最強にでも最弱にでもなる。

 で?そっちのアスだっけ?そいつのスキルで身を隠して奇襲させる準備は出来た?」

「何の事だ…?」


 知らばっくれるならいいか。


 ゼウスをエンチャントすると何だかすごく電気に敏感になった。

 流石に脳内シナプス云々の電気信号は無理だが静電気程度なら探知できる。


「ドカーンってね」


 特殊スキルを発動すると雲ひとつない星空で綺麗な満月が二つも浮かんでいる空から巨大な落雷が降り注ぐ。


 落下地点はクレーターになっており塵一つ残ってない。


「で?俺がやった行為で果たして人は死んだのか?それとも単に俺の恥ずかしい憶測だけで終わったのか」

「…やれぇッ!」


 眉間に青筋を作りながらゲルが指示を出す。

 

 何をそんなに怒っているのやら。だって、何もいなかったんだろ?


 遮二無二に敵が来る。

 全員の顔にはすでに恐怖が宿りそれでも、人質か恩のためかは知らないが武器を、魔法を俺を殺そうとしてくる。


 上等だ。全員首から上蹴り上げて地面に花咲かせてやる。


 身体中に今一度痛覚が生まれ電流が走る。いや、体自体を電気にすると言ったほうが正解か。


「行くぞォッ!?」


 地面が割れ蛇腹剣が…リヴァイアサンが出てきた。

 そのせいで反応が遅れ俺の周りをどんどん囲んでいく。


「馬鹿が。部下に無闇矢鱈に突っ込ませるわけねえだろ。

 勝算がなけりゃ命を無駄になんかさせない」

「はっ、この程度俺の事止められるとでも思ってんのかよ」

「ああ、止まるんだよ。電気野郎」


 群青色の魔力は一層輝き次の瞬間には体が宙に浮きバランスが取れなくなる。


「ガボボボ…」


 海水だった。身体中から電気が漏れ出していく。

 しかも前の倍以上の大きさの球体だし魔法で出来た水のせいか泳いでも泳いでも先に進めない。

 取り敢えずこれ以上魔力を無駄にしたらまずいと一度エンチャントを解除すると蛇腹剣がどき視界が晴れる。舐めた真似しやがってと思ったが…しかしそこにはゲル以外誰1人としていなかった。


 なんだこれ…?


 海水の中で息も出来ずにもがいているとゲルが楽しげに笑い始める。


「ははは!てめえ如きに部下を使う必要もねえよ。既にアスは部下の幻だけ作り出したらヴァリアントとして奴らのところへと潜入してる。街に着き次第虐殺の開始だ。

 奇襲で終わるかと思ったがそっちには気付けたようだが…わかるか?お前は俺たちの手の内で踊らせれてたんだよ」


 コイツらそんなに過激組織だったのか。知らなかった。


 ゲルは蛇腹剣を納めると今度はレーヴァテインを引き抜く。

 災厄の名を冠する大火の剣は俺が使っていた時よりも洗練され、その炎の揺らめきにさえ一切の無駄が無いようだった。


 天才なのかと思ったがもしかするとバッシブスキルであらゆる武器を使いこなすのを持ってるのかもしれない。

 思い当たる節の何処ぞの勇者様と最近まで近くで過ごしていたし。


「クレイの仇だ。どうやって生き返ったの知らねえけど2度も同じ事を言わせんな。

 弱い奴は死に場所を選べねえんだよ」


 剣先を地面に向けると炎が噴出される。ゲルは一瞬で上空へと飛び上がった。

 何をする気だと思った。水の中のせいで上手く見えない。

 ただ上空で巨大な炎が一瞬で生まれると理解できた。


 もう一度あの時のように蒸気爆発を起こす気かよ!しかもご丁寧に自分は上空に避難して。


 大火の剣が振るわれる。地面を焦がし、水の中にいる俺へと。しかも先程の比じゃない。今は水の中にいるのだ。真っ二つどころか爆発で肉片も残らない。


 と、慌ててみたが実際大したことはない。魔力漏れだけは無駄にしたくないから本当の事ではあるが。


 たしかにスキルは雷を撃つだけだけど別にそれだけしか出来ないわけじゃない。なんならエンチャントの効果で並大抵の攻撃じゃ多分傷一つ付かないだろう。

 あと、正直な話上空にいるのでスキルで打ち落とす事もできるのだがそれだとつまらない。

 騙されたし、元凶だし、なによりもこの期に及んでまだアルマに危害を加えようとしてるんだ。時間はないが目の前でしっかりと殺すとしよう。


 あの時と同様に閃光と衝撃、轟音。いい、コンボだったし後でアルマと練習しようかな…いやいや、もう二度と会わないって決めてるんだ。


 土煙の中、吹き飛んだ水飛沫が雨のように降ってくる。

 ストンと音がしたのでゲルが着地したのだろう。

 で、確認の為にのこのこと俺を探しにきたので首を掴んでやると思わず剣を落としてしまったようだ。


「予想的中だな」

「ガァ…ギッ!?嘘…だろ?」

「本当だよ」


 何をそんなに驚いてるんだ?仮にも全能神の名前を冠するエンチャントだぞ?弱いわけねえだろ。あっちの神話だから知らねえだろうけど。


 体に電流を流し麻痺させる。まあ、そんな状態にしたところでどっちにしろすぐに殺すけど。

 あ、やべ剣回収しないと。


「よしよし。二本とも回収完了」

「待て…それは俺の…ものだ…返しやがれ!」

「…?いや、俺とアルマのだから。まあ、いいや。で、遺言は?」

「俺が死んだってことがわかりゃアスがブチ切れるぞ?悪いがありゃ俺以上に…」

「はい、時間切れ。(なぶ)る趣味もないからさっさと死んでくれ」


 くるくると指を回すとゲルの上空に雲が出現し帯電し始める。


「おい、これは命乞いじゃない。取引だ。俺たちと組まないか?仕事の報酬も殆どそっち持ちでいいし、あの魔族のガキにも手を出さないと約束する。だから─」

「【クラウノス】」


 この期に及んでまだ自分の立場を理解してなかったのか…


 いつの間にか雨は止み、満点の星空が見えるようになっていた。飛び散った海水だから別に雲なんて出来ていなかったなんてのは言わないお約束だ。


 スキルを発動すると何かを訴えようとゲルが口を開こうとしていたが天雷は無慈悲に全てを光に包み込む。

 時間にしてみれば一瞬だったが幻に撃った時と同じでクレーターには何も残っていなかった。そもそもとても深くて仮に生きてたとしても上がってくるの無理だろ。


 流石にここまで来て俺の足止めがこれで本体もあっちに向かってましたとか無いよな?

 

 無い事を願おう。


「さて、と…街まで結構距離あるけど、どうしようかな…

 これ以上寿命縮んだらマズイよな?瞬間移動モドキは魔力結構食うし、エンチャントしながら走っても魔力食うし…」


 そう言えばヴァリアントが偽物だと言ってたな。多分まだ中で捕まってんだろ。ソイツに手伝ってもらえれば万々歳。ダメならしょうがないから走ろう。


 ポッカリと開いた非常用の出口から入り階段を降りる。

 街に着くまでまだ時間はある。大丈夫だ、間に合う。

 

 そんなの憶測なのだが今回は何となく大丈夫。そんな気がしてた。

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