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競売会の開始


 競売会は盛り上がる。

 商品が出るたびに歓声が響き渡り、金額を書いた値札の波が揺れ動く。


『さあ、110番のご婦人の最高額、白金貨50枚から動きがありません!

 他に値を上げる方はいませんか!?』


 札は動かない。決定だ。


『決まりました!

 絶滅人種 ヴァリアント族のメス、エルヴァ=ウルファーは110番のご婦人が落札ッ!おめでとうございます!』


 再び歓声で会場が包まれる。

 ボスに命令されるがままに始めたこの役職だが案外、板についてきたなと司会をしていたムカデのメンバーの1人クレイは思う。


「やりましたね」


「ああ、デモンストレーションが効いたな」


 それはほんの数分前のこと。

 商品として運ばれてきた少女にひっそりと耳打ちしておいた。


『今から魔物奴隷のオーガと戦ってもらうよ』


 勿論、嫌だと首を縦に振らなかったので彼女の父が付けていたネックレスを取り出して彼女に渡す。


『これを頑張ったらお父さん合わせてあげる』


 ああ、所詮は半端野郎。知能は人間様より低く魔物よりだ。笑いを堪えるのに必死だった。

 その言葉に目の色変えて飛びつきオーガとの一方的な戦いをしてくれた。

 

 肉体を作り替え、巨大な銀狼となった少女は雄々しく咆哮しオーガと戦う。


 走り抜けるたびにオーガから部位が落ち、血飛沫が舞い上がり観客が喜ぶ。

 正にエンターテインメント。デモンストレーションと呼ぶよりはショーと呼ぶにふさわしい。


 そしてオーガがピクリとも動かなくなり人間に戻った少女に無理やりに猿轡(さるぐつわ)を噛ませると再び少女の耳元で囁くのだ。


『ありがとう、じゃあ後で檻の中に死体入れとくから』


 あの時の絶望に落ちた表情がたまらない。下半身に最高に来る。だから、楽しいんだよ、司会。


『さあ、皆様!会場の興奮冷めやまぬ中、名残惜しいですが最後の商品です!しかしながら皆様が今宵集まられた中で大多数の方々求めたでしょうッ!

 最強の反魔法ワルプルギスを所持し、何よりもこの可愛らしい容姿!そして前魔王の忘れ形見!

 皆様大変お待たせしました!アルマ=マギウムです!!』


 耳が壊れるほどに拍手が歓声が会場を包み込む。

 これが大好きなのだ。最高にレアな商品を見た瞬間に人々は我を忘れる。

 落札できるか分からないこそ、記憶に焼き付ける為に視線の全てを集める。


『目玉商品ですので最低額は白金貨が20枚からスタートさせていただきます!』


 無論これは破格の値段だ。最初からこれなど普通ならボッタクリだとクレームの嵐だ。

 だが…


「25枚!」

「40!」

「私は52出すわ!」


 悪口どころかどんどん値段が上がっていく。

 

 たまんね〜。ガキ1人にどんだけ金出すんだよ。


 そしてだんだんと脱落者も増える中、どこまで行けるかとワクワクしてると声が上がる。


「200」


 途端に会場中がざわめく。


 普段からポーカーフェイスなゲルさんも流石に驚いた表情している。


『200!大きい!大き過ぎます!どうですか!?200より上を出せる方は!?』


 居るわけねえだろと心の中で思いながらも一応はルールなので会場に問いかける。

 

 その値札を出した人以外に会場に値札は上がらない。決定だ。


『200!白金貨200枚です!この競売会始まって以来の最高額です!

 34番の男性がアルマ=マギウムを落札ですッッッ!!!』


 会場からの拍手喝采は勿論だがそれ以上に売れた値段がやばい。一生遊んで暮らせるくらいだ。


「ありゃ、辺境の島のペタゴラ島のノブレタ坊ちゃんだな。

 俺たちと同じくらいやばい仕事を何個も裏でやってるって聞いていたが…ここまで稼いでるとはな」


「ヤバイっすよね。

 俺たち今後一生遊んで暮らせますし」

「ああ、そうだな

 おい、ガキ。お前も喜べ。噂だが相当の魔族好きの変態だとよ。良かったな。生まれてくるガキは不細工だろうが何人も無駄に産ませてくれるぜ?」

「……アクト?」

「あ…?」



ーーーーー



「ふひ、ふひひ。やった、やった!遂に買えたぞ!お、おでのおでだけの魔族!」


 万雷の喝采の中、アルマを落札した男…ノブレタはその身をくねらせて喜んでいた。

 ゼタールが横に並べば彼がちょっと太ってるくらいかな程度に見えるくらいに肥満体をくねらせるというよりかは肉が震わせながら喜んでいた。


 それは長年仕えている執事も脳に栄養が行く前に全部腹に溜まってると常日頃に思える程に。


「じ、爺や!おでのあれ、おでの!」

「心得ております。

 坊ちゃんの念願の夢が叶いましたね。魔王の娘を嫁にする。式は既に準備してあります」


 それでも尚、主人の念願の夢が叶った瞬間に居合わせられたのは幸せだと執事は思っていた。

 しかしそれも直ぐに壊される。


「お前がアルマを買ったのか?」


 ふと、後ろからそんな声がした。


 失礼だな君、と言う前に主人が唾を吐き散らしながらその男に掴みかかった。


「おま、おまえ!あれはおでのアルマだど!おれが買ったおれだけの!」

「…あっ、もしかして豚の獣人?

 いやー、初めて見たわ。へえー、俺のいた世界の豚って体脂肪率少ないけどこっちのは脂肪の塊なんだな」


 その日、生まれて20数年の人生で初めて生じた痛みに脳の理解が追いつかなかった。


 ノブレタが掴んだ男はノブレタの腹に腕を刺し内臓をいくつか握りしめた。


「あっ、ぎっ…」

「気色悪いな。次から他の方法にするか」

「ギャァ────」


 痛みに叫ぼうとした瞬間。全身に何かが駆け巡りノブレタの人生は幕を下ろした。


 眩い閃光で周りにいた人間たちも気づき始める。


 腹に手を突っ込まれた男が光り輝いている。

 それは時折鳴り、ふと近づいた者も何名か巻き込まれてしまうと一瞬のうちに意識が無くなり輝く。


 ほんの数秒程度だった。

 倒れ伏した者達は全身が黒ずみ、既に事切れていた。

 そこで初めて会場の人間が気付いた。人が死んだと。


「キャァァァァァっ!」


 1人が叫ぶ。広い会場で何が起きているか分からない者も多い。それでも恐怖というのは感染し広まる。


 我先にと会場から出て行く。商品の受け取りも金の支払いもまだだ。護衛の人間も誰1人とて戦おうとはせず自分の主人を守ろうと言い訳し逃げ出す始末。


「んー、脂肪が多いな。

 内臓直持ちじゃないとやっぱり通らなかったみたいだし…

 いや、でもあれだな…暫く肉は食いたくない。

 …あれ?もしかしてこの人、普通の人間?」


 遠く舞台の上で見ていたゲルは客席で突如起きた事に理解が追いつかなかった。

 折角の金が入らない。それどころか客は全員逃げ出して死人も出た。


 今日はムカデのメンバーの殆どは貴族相手に従事していた。


 裏切りか?それともどこかの使用人?


「…どうしますか、ゲルさん」

「チッ…今手元に武器がねえ。

 アスもヴァリアントを裏まで運んでる。

 狙ってたなら最高のタイミングだ」


 次は何をしてくるかと目を見張るとパチンと男が弾ける。


「消えっ!?」


 檻の上に立っていた。

 ここから客席の先ほどいた場所までかなりの距離がある。

 

 一瞬で移動した?転移系のスキル持ち…なら、魔法職…


「ゲルだったか?さっきは散々言ってくれたから俺も言わせてもらうわ」

「ッ!?なんで…なんで生きてやがる!」

「弱者は死に場所を選べない。だっけか?」


 一瞬閃光が走る。

 思わず目を瞑ってしまったが特に何も変化はない。ハッタリか…?


「あり?力込め過ぎちゃったか?」


 クレイが倒れた。

 首から先を失って。ならその首は?

 ぼとり、ぼとりと天井にぶつかり破裂したクレイの頭部がちょうど落ちてきたところだった。


「…アルマ」

「……ん。

 ちゃんと顔見せて…檻の上じゃなくて」

「…取り敢えず檻から出すよ」


 仲間の死で、また気を取られた。

 檻に斜めの閃光が走るとそれに合わせてズレる。


 重々しい音を立てて檻はその機能を失った。


「貴様…仲間を殺しておいておめおめ逃げられるとでも思っているのか!」

「逃げるに決まってんだろばーか」


 檻に入れられてたせいか立つ事もままならなかったのでアルマを抱きかかえ走る。

 

 前よりも軽くなってる…いっぱい食べさせなければ。


 あと、流石に武器も持たずに追って…来ないよな?


 ちらりと後ろを向くと部下らしき連中に何やら命令してる。急いだほうがよさそうだ。


 競売をやってた会場を抜け、避難用なのだろう開けっぱなしの階段を駆け上がる。


「……アクト」

「なに?」

「……意地張ってごめんなさい」

「…俺も叩いて悪かった。寝てたのもそうだし、酷いこと言ったし…」

「……大丈夫、痛くなかった。

 アクトの手の方が心配。魔族は皮膚が…硬いから」

「安心しろ柔らかかった。

 しかしそうだな…しいと言えば手よりも心臓が痛くなった」

「……病気?」

「かもな」

「……お医者さん行こ?」


 階段を上り切るとすっかり暗くなって星が輝く空が見えた。

 だが今はのんびり見てる暇はない。


「おーい!旦那!こっち、こっちです!」


 ゼタールの声がするとなにもない空間から馬車が出てきた。


「身隠しの布って言う魔法の道具です。効力は見ての通り。へっへ、混乱に乗じて金品とヴァリアント頂いちゃいやした」

「ちゃっかりしてんな…」


 アルマは嫌そうな顔してるがしょうがない。

「いいかアルマ、ゼタールは信用できる奴だから。一緒に行け。な?」

「……アクトは?」

「やらなきゃいけない事がある」

「……ん」


 力いっぱい抱きしめてくる。

 そりゃあそうか。4日間も捕まってたんだし不安だったよな。


 抱き返してもいいものかとしどろもどろしてるとゼタールが口を開く。


「しっかし、驚きやしたよ。

 旦那あんなに強かったんですね」

「長くはもたねえけどな」


 しかしアルマはいつになったら離れてくれるのだろうか?一向に離してくれる気配がない。

 行って欲しくないのか頭擦り付けてまで止めようとしてる。


「旦那、イチャつくのはかまいやせんが早くしてもらってもいいですか?」

「わかってる。ほらアルマ、いい加減に離れろ」

「……やだ」

「わがまま言うなって…」

「……そんな体でどうするって言うの?」


 ……


「……なんで、命を削ってるの?なんで、自分にエンチャントなんて…してるの?」

「決まってんだろ。それをやらなきゃ俺は死んでたからだ」


 だからそんなに悲しそうな顔をしないでくれ。

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