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嗚呼、素晴らしき僕の友人達



 笑いが止まらなかった。

 死にかけていたのを救ってくれたことは感謝しよう。もう一度旦那様やアルマ達に会わせてくれたことも…だが自分の肉体を好き勝手弄くり回し変な魔石を埋め込まれたのは気に食わない。

 そのくせして自分の力でもない癖に調子に乗りまくって…あんな単純な魔法に気付けないとか…

 最後にいいものを見れた。お前は旦那様に悟られないようにしてるのかもしれないけど内心ビビりまくって、どうしようかと焦っている。


「その体、返してもらうぞ』


 槍の穂先に宿る魔力は未知数。あの隻眼の魔法陣は周到に隠された魔石の場所すら把握することが出来る。負け濃厚だ。敗者らしく命乞いして殺されて…ん?返してもらう?


『この、クソガキがァァッ!』


 もう無理だよ。諦めよ。君じゃあもう勝てない。どれだけ勇ましく叫ぼうが、どれだけ策を練ろうが…ああなった旦那様は僕だって勝てやしない。

 何せ僕に初めて人間らしい感情を芽生えさせた奴だぜ?年の功以外勝るものが無い君が、僕の力を自分の力と勘違いしてる君が…勝てる道理なんてどこにも無いんだよ。



ーーーーー



 右、左、右、回し蹴り、魔力弾。


 魔石の解析が完了した時点で相手の攻撃を全て見切り体が勝手に動く。本当に便利なエンチャントだ。

 余裕を持って拳を避け、或いは槍で受け流す。まだ左足のみだ。もっと早めないといけない。それにしても器用なジジイだ。翼と手を使って回し蹴りなんてしてきて。


『避けてばかりか童ッ!』

「介護してやってる身にもなれよ、ジジイ』


 槍を突き出してるのが見えているのかどうかは知らないが…

 まあ、兎も角2箇所目。右の大腿を貫き魔石に死のルーンを刻印し破壊する。

 次は頭部か?それとも両手?いや、先に中央の1番でかい奴もありだな。


 魔石を破壊された時点で制御出来ないのかだらんとした両足を引きずりながら後方へと跳躍?飛び?兎に角距離を撮られた。


『くっ…このわしが知らない魔法を使うなッ!異世界のサルめが!わしの研究を馬鹿にするか!わしの60余年の歳月をかけた技術を馬鹿にするのか!』

「はぁ?知るかよ。てめえがどれだけ偉かろうが、頭良かろうがな。喧嘩ふっかけてきたのはそっちだ。それが何だ?負けそうになったらズルすんなってか?ウケる』


 そもそもそれ、お前の体じゃ無いしお前安全な自分の国で遠隔でトビィを操ってるようなもんなんだろう?何が研究だよ、こっちが馬鹿にするなって話だ。


「もういい加減、ダラダラやってんのも疲れたんだわ』

『…ッ!貴様ァァッ!』


 ヘキサが翼を広げ飛び立つと両腕に濃密な魔力を纏い始める。

 おそらくはドラゴンブレス?とかいう奴だろう。


 あの時アルマにイージス渡して無かったらなぁ…全員蒸発してたな。


六竜魔砲(セクテッドノヴァ)ッッ!』


 ヘキサの腕から放たれた6つの超極大の魔力砲はあの時トビィの放った物と同程度かそれ以上の威力を持ってるようだ。

 まあ、だからと言って曲線を描きながら此方へ飛んでくるだけで当たらなければどうということは無い。


 パッシブスキル【戦神の波動】には身体能力強化、叡智の隻眼、戦神の外套、魔法創生と使ったことのないスキルを含めて多くのものがある。

 そしてこの叡智の隻眼。時間をかければ対象のステータスなども完全に看破し、相手の動きを予測、戦闘での自己判断を行い最適な答えを導き出せる。つまり何が言いたいかといえば…動くなと脳に訴えてきたのでその場に停止しているのだ。


『どうした、恐怖で足が竦んだかッ!?』

「いやー、これが最適解らしいから』


 そして当たる瞬間…後方から目の前の物よりもヤバいものが飛んできた。否、撃ち出された来た?


 暴風と超高圧の海水、そこに見覚えのある魔力。


「うおっ、マジかよ…』


 そのヤバイ水鉄砲はアルマの方から俺のいるところまで来た挙句にヘキサ渾身の一撃すら掻き消した。


『…なっ』

「まあ、そういう訳だから…うん』


 何が起きたかと理解しようとして判断が遅れたな。

 跳躍し両肩を刺し貫く。勿論、魔石にはしっかりと死のルーンを刻印して。

 

『や、やめろ…これはわしのものだ!このドラゴンはわしの─』

「ああ、言い忘れてたが。ドラゴンってのはてめえみてえにお上品じゃ無くて本能の赴くままにって感じで戦ってくるんだ』


 胸の部分の1番大きな魔石を刺し貫くと遂に飛ぶこともできなくなったのか頭から真っ逆さまに落ち始める。


「だからなお前、トビィより弱かったぞ。まあ当たり前の話なんだけどな』


 最後に思い切り魔力を込めて喉元の魔石に槍を突き立てる。

 なんだか酷く、長い戦いだった。



ーーーーー



「魔眼!何やってるんだ!」

『ギギッ…』


 あからさまな挑発に乗せられて、あとは私の思い通りにことが進む。


 全身に海水を変化させた槍を何本も突き刺され魔眼と呼ばれる巨人は膝を着く。所々から流れ出る赤い液体はその重厚な鎧の下に肉体のある証であり、攻撃が通用している証拠だ。


 だけどまだ…押し切れない…


 確かにこのまま行けば巨人は倒せるだろう。だが、ペイルに行き着く前に流石の自分でも魔力切れを起こしそうだ。

 しかし幸運にもペイルの使っているあの大砲モドキはペイルの魔力か或いはそういう代物なのかは不明だが大きいのを1発、もしくは中くらいのを2発。小さいのは知らないが魔弾を撃つと暫くは撃てないようだ。


「……まだまだ」


 一点集中。ペイルを狙えば勝手に巨人が防御して当たる。

 まだ慣れないがやはりペイルを狙って…


「くく、はは、ふははは!僕をここまで追い詰めるとは思わなかったよ」

「……急になに?気でも狂った?」

「狂ぅ?それはお前らの方だよ。僕やお爺さまに手を出した時点で帝国は君らを明確な敵としてる。ああ、勿論君は助かるよ。僕の性欲処理の奴隷として、ね?」


 相変わらず何を言ってるのかわからないが気持ち悪いということだけはわかる。

 まあ、そんなことはお構いなしにペイルはベラベラと話を続けるが。


「そう、つまりね。僕はこの場所の王として君臨するんだよ。わかる?何度でも言うよ?僕は王様になる人間だ。それがどうした?あの使えない無能ゲーテルや利用価値のない異世界サルの子供。まあ、ルルは別だけど」

「……要点はなに?」

「ん?ああ、つまり時間稼ぎ。魔眼開けるようになった」


 しまった!


「やっぱり魔族っておつむが悪いよねぇ。僕の○○○の□□□でも飲ませてあげようか?多少知識上がるかもよ?あははは!」

「……知能が低いのはどう見て…もお前だろ」


 あの時エルヴァに上空に連れられてる時に見てた。

 あの魔眼は特性なのか開きっぱなしなのかは知らないが、頭部の鎧に開閉装置のようなものが付いていた。だったら、そこだけ狙えばいいだけの話だ。

 最も海水の槍が刺さる原理が分かった時点で最初に貫いといたけど。


「……観察能力もなし、戦闘経験も浅い、口先だけの駄目人間…貴方っていいところがどこ…も無いね?」


 案の定、キレ散らかして魔眼を発動させようとしたが…開かずに困惑している。


「何してる…何してるんだよ!ふざけてんのか!誰が拾ってやったと思ってんだ!誰がおまえみたいな薄汚い魔族を兵器にしてやったと思ってんだ!さっさとしろ魔眼!」

『…ギィッ……』

「……可哀想に。考える力…も奪われちゃったんだね」


 魔銅合金は使う金属によって魔法を弾く。鍛冶屋のおじさんが言っていた言葉だ。それはワルプルギスも例外では無い。だが、魔銅合金と言うのもそこまで完璧では無い。魔法に強くすれば物理に弱くなる。それは逆もまた然り。そして何よりも…魔力を常に発してる金属を使うと人体に悪影響も出る。

 それこそ脳や喉、内臓など柔らかな部分に…


 でも…もしかしたら命令を無理矢理されているのかもしれない…それでもエルヴァを助ける為に、生き残る為に…例え同族だろうが…倒すよ!


「……リヴァイアサン!」

「魔眼!魔眼魔眼魔眼魔眼ッッ!何やってんだ早くしろ!もういい、殺せ!!」

『………』


 静かに膝を着く、一思いに殺ってくれと言うことなのだろう…


「……ばいばい」

「やだ…やめろ!こんな事して許されると思ってるのか!帝国を敵に回すつもりか!?」


 思い描くは巨大な海蛇。暴風と海を操る原初の智。

 アクトの夢幻とアルマの想像だけど…行ける気がする。


 伸びた蛇腹剣は頭上で辺り一面と私から魔力を吸い上げ球体となる。内包した魔力の光は角の機能を切らないと脳が破裂しそうだ。

 やがて球体が開き光線の如く超高圧の海水と暴風。そして私の魔力【ワルプルギス】さえも取り込み、撃ち出される。


「…深淵の大轟砲(デプスカノン)ッ!」

「やっ──」


 巨人とペイルがその暴威に包み込まれ…否、それどころで無く辺り一面を破壊しながら進み続ける。


「……あっ、あっちアクトのいる方だ」


 急いで魔力探知を付けると自分の放ったものとは別にとてつも無い魔力があり立ちくらみしてしまう。


「……うぅ、アクト…大丈夫かな」


 身が持たないと角の機能を切る。

 直撃した巨人は…まだ形が残っていた。いや、それでも死にかけか。放っておいても良さそうだ。

 一応は警戒しつつもエルヴァに残りのハイポーションをかける。


 血は…止まったけど、左腕の傷が塞がらない、両足の腐食が止まらない…あの兵器のせい?どうすれば…いい?ワルプルギスで?それも何か別に方法が?


「……ゲルダのポーション。アルマ用の…がまだ一本残ってたはず」


 アクトはきっと大丈夫だ。だから…今はエルヴァの応急処置に集中しないと…



ーーーーー



「よー…気分はどうだ?」

「死にかけてるのにさ、すっごく…いい気分さ」

「そうか」


 ジジイの呪縛?いや、魔石の浸食?ともかくトビィは無事に取り戻し、少女の姿で地面に横たわっている。

 体に空いた穴も即座に再生していたが…それよりも肉体の方は既に崩壊が始まっているためあんまり意味も無さそうではあるが。

 それにしてもなんだか酷く疲れが来て、トビィの座り込んでしまった。


「僕のために命をかけてくれるなんてさ…嬉しいよ。正直、僕は邪魔者だし何よりも新参者だからね」

「まあな」

「最後にキスしていいかい?いやはや、君に会う前に立ち寄った本屋で人型種族は濃厚なのをすると見かけたからね」

「地面とでもしててくれ」

「ははっ、連れないなぁ…僕もう死ぬんだぜ?」


 ……正直な話。此奴を生き永らえさせていいのかと疑問には思う。

 未遂とは言えど街を襲おうとして、何人も犠牲者を出しているのだし。

 だが同時にこれは自然の摂理であり、この世界の絶対的ルールである弱肉強食に当て嵌まる。そこには感情論も何も無く純然たる強者と弱者、食う食われるの関係しかないのだ…


「なあ…」

「旦那様、どうか最後に僕に名字をおくれよ」

「自分で考えろ」

「ふふっ」

「はぁ…アルマがな、お前は一人ぼっちだとよ」


 そう言うと驚いたような顔をしだした。そりゃあそうだ。


「えーと…ね?元から僕らは孤独な種族と言うかなんと言うか…自分と同程度か自分より強い相手が見つからなければ生涯孤独なんだけど?」

「まあ、聞け。アルマには同年代くらいの友達が居ねえんだわ。エルヴァやクララとも仲良いが歳上だしな」

「…え?」

「まあ、なんだ…その…アルマと仲良く出来そうか?」

「…君の判断基準はアルマなのかい?」

「そうだが?」


 するとトビィはゲラゲラと笑い始めた。

 ドラゴンでも、生きる災害でも、兵器でも無く、ただの少女の様に。


「はははっ…面白いよ。本当に君たちは!どうだい僕の尻は?きっといい揉み心地だと思うよ?」

「どうだか」


 袋から仕込み籠手…バハムートを取り出すと彼女の右腕に嵌める。

 どうなるのかと思った瞬間には光が目の前で起こり…気付けばトビィの嵌めたはずの籠手が消えていた。


「…ん?お、おおお!?魔力が制御されてる!僕の肉体の崩壊が止まった!ヒャッホーイ!」

「んー…成功…だよな?」


 それから暫くして確認してみるとどうやら籠手は彼女の一部として取り込まれたらしい。まあ、元々体の一部で作ったもんだし…


「旦那様、見ておくれよ!体が崩れない!君と共に生きれるよ!」

「とりあえず俺以外の強い奴見つけろよ」

「断らせてもらうよ」

「ああ…そう」


 こんな簡単でいいのかとか疑問には思うが、まあ本人が平気らしいし別に…


「クソトカゲ」

「トビィと呼んでおくれよ」


 部分的に鎧化しトビィは不意打ちじみた攻撃を難なく受け止める。

 まあこっちもエンチャントは解除してないんで少し前から隙を伺っていたのは知っていたが。


「チッ…」

「トビィこいつも帝国の人間か?」

「あんな屑どもと同類扱いするな!」

「あじゃあ、この国のゴミ供の同類か」


 まあ確かに城の中でよく見かけた防具を着ている。それにしてもボロボロだな。なんか左腕無いし、全身血だらけだし。


「お前が無能勇者だな?」

「いい加減、勇者って呼ぶのやめてくんない?違うから」


 しかしまあ…誰だこいつ。さっきの尻尾巻いて逃げてった王国軍精鋭様の生き残りか?


 疑問には思うが別にどうでもいいのでアルマたちの様子でも…


「あっ…」

「ん?どうしたんだい?」

「お前飛べる?俺の肉体強度無視して最高速度で」

「構わないがどうしたんだい?」

「エルヴァがやばい」

「…?」


 再生のルーンでどうにかなるものなのか?いや、それよりも先にダウンエリクサーで…


「逃げるのか?無様だな」

「どっかのジジイじゃねえけど…お前程度の三下相手に構ってやる程暇じゃ無いから」

「あ?」


 まあ、案の定斬りかかってきたので適当に1発顔面殴ったらそのまんま伸びてしまった。何がしたかったんだこいつ。


「頼む」

「任せてくれたまえよ」


 元から出来たのか、エンチャント武器と融合した成果は知らないが、背中から翼をはやし俺を抱き上げると飛び立つ。

 どうでもいいけどお姫様抱っこやめてくれない?



ーーーーー



「……」

「痛…い…」


 呑気に戦闘なんかしてたからだ…全部私が悪い…


 ハイポーションでもゲルダのポーションでも…エルヴァの傷は良くなりそうに無い。腐食も既に大腿にまで広がり左腕の傷も塞がらない…顔も治りはしたが右目が潰れてしまったのかポッカリと穴が空いている。


「……ごめんね、ごめんね…私が、アルマが…」

「……オ…ウの…子よ…」

「…ッ!?」


 目の前が真っ暗になりかけてた時、物理的に暗くなった。

 顔を上げるとそこには先程の巨人が佇んでいた。


「…ッ!?」


 鎧は既に砕け散り全身に無数の裂傷が出来ている。顔も見えてはいるが識別出来ないほどだ。それでも兵器として運用されていたんだ。もしかしたら自爆なんて事も考えられる。


 エルヴァと自分を包み込む様にリヴァイアサンを伸ばそうとすると、巨人は自身の胸に手を突っ込み臓器を…否、奇妙な装置を取り出して差し出してくる。


「……」

「…?」


 使えと言う事なのだろうか?


 恐る恐る受け取ると体内に入っていたせいか生暖かい感じがして不快だ。

 そして受け取ったのを確認するや否やで巨人を倒れそれっきり動かなくなってしまう。


「……うぇぇ…なにこれ」


 箱の様に見えるが…開けてみるか?いや万が一の可能性もあるし放っておく事も…


「くひっ、ひひひひひっ。僕は運がいい。それさえあれば、お咎め無しとまでは行かなくとも…多少は逃れられる…」

「…ッ!?」

「おおっと、動くなよ。動いたら畜生もどきの頭が吹き飛ぶぜ?」


 巨人を盾にして生き残っていたのか、ペイルは変わらずに気色の悪い笑みを浮かべている。

 そしてエルヴァの頭にあの大砲を突き付けていた。


「……それ、手持ちで動かせたんだ」

「ん?ああ、手持ちにも出来る。まあ基本は僕の考え通りに動く道具だけどな」


 武器を捨てろと言われたのでしょうがなく捨てると服を脱げと言ってくる。本当に気持ち悪いな。


「東洋のドゲザって知ってるか?やり方知らないなら教えてやるけど…裸で僕にドゲザしろよ。尊厳もなんもかも捨てて、僕に服従し生涯僕の性処理道具とし─」


 武器を捨てたのは少しでもこいつの自尊心が膨れて時間稼ぎになる様にだらだらとこうやって話してもらいたかったからだ。

 もう既に魔力探知はしていたので何をすべきかなんて言葉を交わさずともわかる。


 グチュン


 私にはそれは無いけど…アクトだってやられたら痛いだろうし男なら誰だって痛い。

 ペイルが股ぐらを蹴り上げられた瞬間、目を白黒させ倒れ、ズボンの赤く染まった股間部分を抑え込む。まるで今から来る痛みの波に備えるように…否、逃れる事の絶対に出来ない死ぬ程辛い目に…


「───ッ!アッッギ、ギャァァァァァァッッッッッ!!!?」

「いてて…自分でやっといてなんだけどこっちまで痛くなってきた」

「うわぁ、潰れましたよね?」

「……潰した」

「まあ、このクソロリコン野郎は去勢しといた方がいいだろ。普通に考えて」


 今日も今日とてボロボロになって、それでもやっぱり勝ってくれた。


「……おかえり」

「ただいまー。それよか、エルヴァが先だ。再生のルーン3つ、4つかけて、急いで街に戻るぞ。

 トビィはそこの痙攣してる馬鹿を死なない程度に痛めつけとけ」

「ははっ、これ以上かい?もう2度と男としての尊厳が無くなったのに」

「お前の個人的な感情が許すってなら放っておけ」


 トビィはやれやれと肩を竦めると、泡吹いて白目剥いてるペイルに馬乗りすると顔面の殴打を始める。

 余程恨みがあったんだろうがまあ…別にいいや。


「……」

「ん?どうした?」

「……アルマのせい…今回は全部、アルマが気を抜いたから…」

「それだったら元凶はトビィを仕留められなかった俺の責任だ。あん時に殺してればこんな事にはならなかった」

「酷い!」

「……エルヴァ助かる?」

「婆さんに任せりゃ、きっと大丈夫だ」

「……」


 顔面、胴体、両足、左肩。傷の酷い部分に槍を刺し刻印付与を行う。

 これで一命を取り留めてくれればいいが…


「兎も角、王国の馬鹿どもが来る前に街に戻るぞ。もう既に顔は割れてそうだが…」

「……ん」

「僕が運ぶよ。ここからなら5分とかからずに行けるからね」


 しかし物事と言うのは急げば急ぐだけ邪魔が入る。


「それは無理なんだよなぁ…」

「…テスタロッサか」

「残念だけどヴァリアントは棄ててくれ。そして…悪いけど君らは本国へ連れてかせてもらうよん?」


 連れていた2人のガキがいないところを見ると…1人か?いや、そもそも手負いとはこの人数相手に…


「あっ…」

「…何かを今思い出したってんなら言え、すぐに言え」

「僕の魔石と肉体をベースに彼ら何か作ってたなー…って」

「……」

「…てへっ」

「……トビィ」

「なんだ…ベブラッ!?」


 すっごいいい音出してアルマのビンタがトビィに炸裂した。いやまあ喧嘩じゃなくて多分最後の「てへっ」が想像以上に苛立ったせいだとは思うが…


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