告白、帰り道、そしてまた明日。
放課後、俺は部室で作業していた。
文科系の1クラブで、部員も少ない零細部活。
その日参加していたのは、俺と先輩だけだった。
彼女の方はとっくに作業が終わったようで、制服の紐タイを解き、俺のカバンに括り付けて遊んでいる。
「出来た。かわいいでしょ?」
彼女の声とともに、俺は振り向く。
俺のカバンは、リボン結びのかわいいデコレーションが為されていた。彼女は満足げだ。
俺と彼女との距離は相当近い。けれどまだ付き合ってはいない。だが、そろそろいいだろう。
「中々良いですね。でもどうせ結ぶんだったら、こうしたほうが良いのでは?」
俺はカバンに結び付けられたリボンを一旦解く。そして俺のカバンと彼女のカバンを机の上に並べ、その両方に紐を通し、中央で結びつける。その際、紐でハートを形作るのも忘れない。我ながら器用なものだ。
お互いに沈黙する。正直、告白と言うには遠回し過ぎたかもしれないと不安になったが、彼女は普通にOKしてくれた。
その日は結局、お互いのカバンに紐を括り付けたまま下校した。
さすがに別れ際には解いたが、彼女はその紐を再び俺のカバンに結び付け、デコレーションする。
紐タイがなくなると困るんじゃないか、と問う俺だったが、明日の朝、返してくれればいいと言われた。その際、俺に紐タイを結んでほしいとも言われた。
なんとも遠回しな登校のお誘いだ。
よし、上手に結べるよう、帰ってからいっぱい練習しよう。
俺たちは明日の朝を楽しみにしながら、それぞれ帰途につくのであった。