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【書籍化】元ホームセンター店員の異世界生活 ~称号《DIYマスター》《グリーンマスター》《ペットマスター》を駆使して異世界を気儘に生きます~  作者: KK
第3章

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■3 ガライと夜の海です


 無事到着はしたものの、グロッキーなメンバーも多いため、初日はゆったりお屋敷の中で過ごすことにした。


「おお~!」

「しばらく使ってなかったからね。五日前に急遽依頼して、中を掃除してもらっておいたんだ」


 イクサの別荘だというお屋敷の内装は、かなり豪華なものだった。

 ただ、絢爛豪華かと言われると、そこまでではなく……王族の別荘というには、少し物足りないかもしれない。

 それでも、私にとっては十分なほどの広さを感じられた。


「人数的にも、一人一部屋は提供できる。どこの部屋を使ってくれてもいいから、各々荷物を運び入れておいてくれ」

「ほらほら、みんなイクサにお礼言わないと」

「「「「「ありがとうございま~す……」」」」」


 車酔いでグロッキーになっている、マウル、メアラ、レイレ、ウーガ、デルファイがお辞儀する。


「少し休んだらもう夕方だし、市街には明日行こう。海で遊ぶための用品の確保も必要だしね」

「じゃ、明日の朝まで自由時間ということで」


 荷車から降ろした各人の荷物を振り分け、今日は各々体力を回復させることとなった。

 私は、自分の着替えが詰まったカバンを荷車から下ろす。

 すると。


『こりゃ!』


 ポンッ、と、カバンの口から一匹のウリ坊が顔を出した。


「わ! チビちゃん!?」

『こりゃこりゃ!』


 アバトクス村付近に生息しているウリ坊達の中でも、一番年下のチビちゃんだ。

 荷物の中に紛れ込んでいたのだろうか?

 前の王都の時もそうだけど、またついて来てしまったようだ。


「い、いつの間に……」

『こりゃ~』


 チビちゃんは力無く鳴き声を上げた。

 ふにゃっと、前足も後ろ脚も投げ出して地面におなかを落とす。

 やっぱり、この子も揺れで弱ってしまっているのだろう。


「仕方がないな……私の部屋で一緒に休もう」

『こりゃりゃりゃ……』


 横たわったチビちゃんを持ち上げ、私は自分に振り分けられた部屋へと向かった。




※ ※ ※ ※ ※




 部屋のベッドの上でしばらく休ませたため、チビちゃんも大分体調が治ってきたようだ。


『こりゃ~!』


 段々、ふかふかのベッドの上を元気にコロコロと転がるようになり。


『こりゃぐー、こりゃぐー、zzz……』


 その内、静かに寝息を立て始めた。

 気付くと夕日は水平線の向こうに沈み、時間は夜。


「夕飯は……まぁ、体調はみんなそれぞれだから、一緒っていうわけにはいかないか」


 私は、熟睡しているチビちゃんを起こさないように部屋を出る。

 廊下を進み、屋敷の入口へ向かい、外へ。

 イクサの別荘は崖の上に建っているので、眼下に砂浜を望む事ができる。

 私は崖から砂浜に下りていくための道を見付け、そこを下る。

 夜の海は暗く、波の音だけがただ大きく響き渡っていた。

 空に浮かんだ月と星が、ちらちらと海面を照らしている。


「んん~! ……」


 私は背伸びをする。

 アバトクス村や王都とは、また違った匂いを胸に吸い込みながら、ただ無為に砂浜を散策する。


「ん?」


 すると、しばらく歩いたところで、砂浜に流れ着いた流木に腰掛け、海の方を見ている人影を見付けた。

 かなりの上背の人物だ。

 となれば、心当たりは一人しかいない。


「ガライ」

「……マコか」


 近付き、私が声をかけると、ガライはこちらへと顔を上げた。


「散歩?」

「まぁ、そんなところだ」


 私は、ガライの横に腰を下ろす。

 この前から、妙に気温が高くなり始めている。

 季節は本格的に夏なのかもしれない。

 だけど、吹き抜ける風は涼しい。


「なんだか、ここ最近ずっと忙しかったのもあるけど、いきなり別の世界に来たみたい」


 現世から、この異世界にやって来た私が言うのもおかしいけど、本当にそう思い、口にした。


「……ああ、ゆっくり時間が流れているような感覚だ」


 ガライも口元に微笑を浮かべながら、そう返す。


「今までの自分なら、味わうなんて夢にも思っていなかった時間だ」

「うん、私も同じ」


 それは正直な感想だ。

 海へ旅行なんて、多分小学校以来かもしれない。

 特に社会人になった後なんて……ええ、そりゃもう。


「……メイプルとの件は、すまなかったな」


 そこで、ガライが不意に、そう言った。


「え?」

「俺が勝手にやって、そして一人で勝手に抱え込んでいた事だった。あんた達のおかげで、救われた」

「なんだ、その事か」


 かつて、奴隷として売られた少女を助けたガライ。

 その少女の身の安全のため、彼は具体的な事情を口にせず、ただ一人で全ての責任を負う道を選んだ。


「イクサが尽力して、モグロさんが《鑑定》の力を使ってくれて……本当に、色んな人に助けられたよね。でも、それもガライの人徳だよ、人徳。巡り巡って、積み上げてきたものに救われたんじゃないかな」

「……だとすれば、一番はあんたのおかげだな」


 ガライは言う。


「私だってガライに助けられた事は何回もあるんだから、お互い様だよ」

「……自分がどこで生まれたのか、親の顔さえも知らなかった俺は、闇ギルドに拾われ、〝暗部〟の工作員として育成され……ただ、汚れ仕事を処理するだけの存在だった」


 ガライは、自身の過去を語る。


「そんな人間が、何を血迷ってすべてを捨ててまで……罪滅ぼしか? 体の良い破滅願望か何かか? 自分の起こした行動の意味が、自分自身でもわからなかった」

「それは単純な話だよ。ガライはそれを、正しい事だと思ったからやったんでしょ?」

「………」

「やっぱり、ガライは正義のヒーローだったんだよ。メイプルちゃんにとっては」


 私はうんうんと頷きながら言う。

 以前、王都でガライと交わした会話を思い出しながら。


「俺は……」

「ガライはその時も、『自分はそんな大層なものじゃない』って言ったよね。どうして?」

「……闇の世界で生きてきた人間が、ただ一時の感情で動いただけだ」


 ガライは、自分の生き方に疑問を持っていたのかもしれない。

 真面目そうな性格だからね。


「その選択は間違ってないよ。だって、その時のガライの決断があったから、メイプルちゃんは救われた。私達と出会えた。巡り巡って、色んなしがらみを壊す事ができた」


『今の自分が許せないなら、違う自分に変わればいい』

 仮●ライダー鎧武、カズラバ・コウタも言っていた。

 ライダーの『変身』は決して虚飾なんかじゃない、成長なのだ。


「ガライは間違ってないよ」

「……そうか」


 私だって、ガライにいっぱい助けられた。

 家や店舗、工芸品の作成は勿論、戦いの時は決まってガライが大きな戦力になってくれていた。

 世の中、何事も支え合いだ。

 特に王都では、それを実感できた。

 こうして、ガライが隠していた事や思っている事を素直に話してくれるようになったのも、大きな進展かもしれない。


「メイプルちゃんにも、お土産買っていかなきゃね」

「ああ」




※ ※ ※ ※ ※




 そして、翌日。


「みんな、体調は万全?」

「うん、大丈夫だよ!」

「一晩寝たら、すっかり良くなった」

『うぐぐ……すまぬ、すまぬ……』


 すっかり元気になったマウルとメアラが起きて来た。

 隣には、昨日はしゃぎ過ぎて失態を犯したエンティアが、まだ落ち込んだ様子でいる。


「エンティアが、気分が良くなるまでずっとベッドになってくれてたおかげかもね」

「ありがとう、エンティア」

「ありがとう」


 私が言うと、マウルとメアラがエンティアにギュッとしがみ付く。

 エンティアも満更ではない様子で『うひひ』と嬉しそうに笑っている。


「さて、朝食は街で済ませるというのはどうかな?」

「いいね、そのまま色々と資材調達に回ることもできるし」


 イクサの提案に、私は賛成する。

 といっても、まだ今日何をするかは決まっていないのだけど。


「ふふん! なら当然、まず真っ先に用意しなくちゃいけないのは水着でしょ!」


 そこで、すっかり復活した様子のレイレが、仁王立ちしてそう叫んだ。


「水着?」

「せっかく海に来たんだから、海水浴をしなくちゃ何の意味もないわ!」

「海水浴かぁ……確かにね」

「何せ観光地だから、水着や海水浴に必要なグッズは専門店もあるよ」


 イクサが言うと、レイレは私の方を見る。


「是非行きましょう、マコ! あたしがあなたにお似合いの水着を選んであげるわ! スアロ、あなたのもね!」

「どうして私まで……」

「まぁまぁ、スアロさんもせっかくですし」


 若干、困惑気味のスアロさんも仲間に引き入れる。


「夜は海の幸でバーベキューなんてどうだい?」

「なら、釣り竿や網なんかも必要だな」


 イクサとガライは夕飯の事を話し合っている。

 私達の今日の目的が決まった。

 泳いで遊んで食べまくって、海辺で遊び尽くす!


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