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■23 村の特産品が大好評です



 私とガライが作った家は、村の《ベオウルフ》達からもかなり絶賛された。


「おいおいおい、この壁、金属でできてるのか?」

「うん」


〝金属サイディング〟で覆われた外壁を、ラムが驚いたように触っている。


「すげぇな、城じゃねぇか」

「いや、城だって外壁は石材だ。それ以上の防御力じゃないのか? こりゃ」

「いやいや、そこまで分厚い金属じゃないから」


 ラムとバゴズをはじめ、集まった《ベオウルフ》達がワイワイと、私達の家を見て話し合っている。

 そう言えば、今の自分の発言で思ったのだけど、現在のこの国の時期って季節で言えばいつ頃なんだろ?

 気温とかから察するに、なんとなく春と夏の間くらいだとは思うけど。


「もうなんだか、最近はマコがやる事が規格外すぎて……むしろ何をやっても驚かなくなってきたぜ」

「な、一日でこんなすげぇ家建てちまうなんて、本当ならやべー事なんだけどな」

「ううん、私だけの力じゃないよ。材料の作成から組み立てまで、ガライがいたからできたんだ。あと、マウルとメアラやオルキデアさんにも手伝ってもらったしね」


 苦笑する《ベオウルフ》達に、私は言う。

 彼等は遠く、今回の建設で出た端材の木を切って薪を作っているガライを見る。


「マコもそうだが、オルキデアやフレッサ……この村に最近、《ベオウルフ》以外の種族が増えてきたな」

「ああ、だが、悪い奴等じゃないし、俺は歓迎だぜ?」

「俺も俺も」


 うんうんと頷く《ベオウルフ》達。

 そこで、一人の《ベオウルフ》が、思い出したように声を上げた。


「そうだ、マコ! 畑の様子見てくれよ! 一昨日植えた野菜、もうかなり成長してるんだぜ!?」


 皆が我先にと、自分の作った畑に私を招こうと引っ張る。


「こっちこっち! もっと成長させるために、何が必要か見てくれよ!」

「これから俺達で、どんどん野菜を作ってくぜ!」

「おう、頑張ろうぜ!」

「うん、いいねいいね、頑張ろう」


 ……ただね、みんなごめん。

 私も何気に、二晩徹夜してるんだよね。

 今日はもう、新築で休んでもいいかな?




※ ※ ※ ※ ※




 それから数日――この村で作られた野菜達は、ウィーブルー家当主を通じて、ガンガン市場都市に出荷されていった。

 当主もノリノリだ。

 彼のハイテンションなキャラは、どこかこの村の《ベオウルフ》達と波長が合うらしく、些細なイザコザさえ起こらない。

 獣人と人間が、決して安くない金の絡む取引を、現状問題なく進めているって、何気に凄い事なんじゃないだろうか?


「マコ殿、何なら野菜以外でも、この村で特産品のようなものがあれば、我々が市場に運び販売いたしますぞ?」

「え? そんな事もしてもらえるんですか?」


 ある日、当主にそう提案された。

 今まで、週に一度、市場都市に物品を運んで売っていた作業を、彼が仲介してくれるということだ。

 ……とは言え、何が良いだろう?

 流石に、今までみたいに、山で採れたよくわからない山菜やキノコや木の実や、よくわからない獣のよくわからない干し肉や毛皮を売るわけには……。


「お花などどうでしょう?」


 そこで、オルキデアさんが、その手に花束を抱え持ってきた。


「綺麗なお花を見れば、都会の人間の方々も癒されるのではないでしょうか?」

「お花ですか、うーむ、確かに美しい」

「そうだね、オルキデアさんとフレッサちゃんが育てたお花なら……」


 そこで、私の頭の中に一つ、名案が浮かんだ。


「そうだ! オルキデアさん、フラワーアレンジメント作ろう!」

「ふらわーあれんじめんと?」




※ ※ ※ ※ ※




 フラワーアレンジメントとは、簡単に言えば複数の花や草木を組み合わせて作る生け花のようなもの。

 鉢や籠を使って、何種類かの花を寄せ植えする……芸術品だ。

 無論、そのまま水や肥料を与えて育成もできる。


「これでいいか? マコ」

「うん、ありがとうガライ」


 私は、ガライが木の皮を編んで作ってくれた籠――バスケットを受け取る。

 事前に私が一個作り、それを真似て幾つか作ってもらった。

 流石ガライ、全く精巧な出来だ。


「で、どうするの?」

「花を植えて、鉢植えを作るんだよね」

「この籠の中に入れるのです?」

「楽しそうですね~」


 今回は、メアラ、マウル、フレッサちゃん、それにオルキデアさんと一緒に作ることにした。

 私が講師役である。

 んー、懐かしいな、ホームセンター時代にも夏休みとか、親子参加の寄せ植え教室をよく開催したりした。


「うん、このバスケットの中に土を入れて……」


 土は、私の作った《液肥》によって栄養たっぷりになった、この村の畑の土を使う。

 そこに、オルキデアさん達の育てた花や草を、バランス良い配色で植えていく。


「マコ、こんな感じ?」

「そうそう、メアラ上手いね。配色にセンスがあるよ」

「……別に、そこまでじゃないよ」


 頬を染めてそっぽを向く、メアラ。

 照れかわいい!


「見て見て、マコ! この青い花と赤い花が僕とメアラで、この一番きれいな白い花がマコなんだよ!」


 マウルは、私達をイメージした感じで花を並べている。

 この子は、本当に素直すぎてキュンキュン来るね。


「マコ様! ごめんなさい、うまくできないのです!」

「いいのいいの、フレッサちゃん。十分うまいよ。ここに黄色い花を入れると、バランスがよくなるかな?」

「わかりました!」


 フレッサちゃんは一生懸命だ。


「マコ様、如何でしょう。わたくしの力を分け与えて、力強さをイメージしてみましたの」

「す、凄いですね……」


 オルキデアさんのは……なんだろう、最早、華道の展覧会とかにある凄く馬鹿でかい生け花の作品みたいになっている。

 ある意味、芸術点は一番高い。


「うん、みんな良い感じでできたね」

「……マコ、こんなものを作ってみたんだが」


 そこで、ガライが持ってきたのは、彼が木を削って作った小動物の人形だった。

 おお! こういうのがあると凄くいいんだよね!


「ありがとう、ガライ! 流石、できる男は違うね!」

「………」


 ガライは相変わらずの癖で、髪を掻く。

 彼が木で作ったウサギや猫等の人形を寄せ植えに置くと、また一段とかわいさが増した。


「かわいいのです!」

「凄い凄い! これ、市場で売れるかな!?」

「売れるといいねぇ」


 私達が作ったフラワーアレンジメントを見て、当主も絶賛していた。


「素晴らしい! 数多の絵画や宝石、至宝と呼ばれる芸術作品を見てきましたが、それらに勝るとも劣らぬ美しさを感じますぞ! 手の平に収まる籠の中で一つの庭が表現されたこの作品からは、草花が本来持つ儚さと尊さが存分に伝わり、人間社会で汚れた我々の心を癒すような健気な力が――」

「ごめんね、当主。ちょっと感想が長過ぎるかな」


 当主は、収穫した野菜をはじめ、私達の作った寄せ植えを持って街へと帰っていった。

 うちの子達が作った、立派なフラワーアレンジメントだ。

 町の人達にも気に入ってもらえるといいんだけど……。




※ ※ ※ ※ ※




「大大大大大反響ですぞ、マコどのぉぉぉぉぉぉぉ!」

「うわ、びっくりした!」


 翌日、当主は村に現れるや否や、そう叫んで駆け寄ってきた。

 もうこの人、村の外で馬車から降りて走って来たらしい。

 そんなにいち早く伝えたかったのか……。


「素晴らしいですぞ、皆さん! 野菜は相変わらずの大好評! 飛ぶように売れております! 何より、今回のお花の寄せ植えや、ガライ殿の作る木彫りの人形も大人気! 街の子供や女性からの問い合わせが殺到しております!」


 うわー、凄い事になっちゃった。

《ベオウルフ》のみんなやマウル、メアラ、それにオルキデアさんとフレッサちゃんも、それを聞いて大喜びだ。

 無論、私だって嬉しい。


「ところで、ガライ殿……」


 そこで、当主がこっそり、ガライの方へと近付いていく。


「実は、ガライ殿の腕を見込んで、依頼が来ているのですが……今度は、今街で人気の踊り子を象った木の像を作ってくれないかというもので、金ならいくらでも払うと言う者達がいましてな」

「………」


 ガライ、なんだかフィギュア師みたいな依頼を受けてる……。



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