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■エピローグ 褒賞です


――――――――――


 名前:ホンダ・マコ

 称号:《DIYマスター》《グリーンマスター》《ペットマスター》

 属性:なし

 スキル:《錬金Lv,3》《塗料》《対話》《テイム》《土壌調査》《液肥》《殺虫》

 HP:1400/1400

 MP:3800/3800


――――――――――


「うわぁ……、今、こうなってたんだ」


 随分久しぶりに、私は自分のステータスの確認をした。

 HPもMPも、かなり上昇している。

 スキルに関してはあまり変わっていないけど。


 ――王都から帰宅し、数日が経過していた。

 場所はアバトクス村。

 マウルとメアラ、ガライやエンティアと一緒に暮らしている自宅――その庭に置いてある椅子に腰かけながら、私は「うーん!」背筋を伸ばす。

 ここ最近、王都での戦いや責任者としての激務に追われていた日々が嘘のように、ゆったりとした時間を過ごせている。


『こりゃー!』

『こりゃこりゃー!』

『ふわ~あ……おい、あまりはしゃぎ過ぎると怪我するぞ~』


 近くには、芝生の上に寝転がったエンティアと、そのエンティアの巨体をアスレチック代わりにして遊んでいるウリ坊達がいる。


『こりゃー! ボスー! ボスー!』

『ボスー! あくまとの戦いのお話して、こりゃー!』

『くくくっ……いいぞ、子ども等よ。俺の活躍を聞き、心弾ませるが良い』


 別のウリ坊達は、クロちゃんに《悪魔族》進軍の際の戦いの話を聞いている。

 ……いつの間にか、ウリ坊達にもボスって呼ばれてるし。


「さて、と。そろそろお昼かな」


 私は椅子から立ち上がり、村の中の散策に向かう。

 ここ最近はこんな感じで、何気ない日常を送っている私。

 マウルやメアラと一緒に運動したり、ガライと家具を作ったり。

 デルファイと新作のガラス細工について話をしたり。

 ラムと料理を一緒に作ったり、バゴズに試食してもらったり、ウーガと新しい野菜や果物作りに挑戦したり――と、そんな感じだ。


「ごきげんよう、マコ様」

「ごきげんようです!」

「こんにちは~」


 途中で、今日も花を育てているオルキデアさんとフレッサちゃんに遭遇し、軽く挨拶を交える。


「ふっふふーん♪ ……ん?」


 そんな感じで、呑気に散歩をしている内に、アバトクス村の広場に辿り着く。

 するとそこに、数名の《ベオウルフ》達が集まっているのを発見した。


「みんな、何か会議中?」

「おう、マコ」


 私が声を掛けると、《ベオウルフ》達が振り返る。


「王都の直営店に出す、新商品についての制作会議中だ」

「ああ、新商品」

「前のポテトチップ以来、色々ごたごたが重なって新商品が出せてなかったからな」


 確かに、まともにお店を営業できる状態でもなかったからね。


「野菜チップなんかどうだ? ジャガイモ以外にも、ニンジンとか。健康にもいいぜ?」


 ウーガが提案する。

 しかし皆、腕組みをして唸っている。


「うーん……いまいちインパクトに欠けるよなぁ……」

「新商品か……」


 私も一緒にアイデアを出そうと、頭を働かせる。

 すると、そこに――。


「あら? マコ、これは何の騒ぎ?」


 やって来たのは、グロッサム家の令嬢――レイレだった。

 彼女も、私に師事した関係のため(というかも、ほとんど押し掛け同様で)、この村で暮らしているのだ。


「レイレ……あ、そうだ」


 そこで、レイレと目が合った私は、あることを思いつく。

 実は、ここ最近時間が出来たのを利用して、彼女と〝あるお菓子作り〟に一緒に挑戦していたのだ。


「あのね、レイレ、この前の……」


 ごにょごにょと耳打ちする私。


「……なるほど、あれを新商品にってことね」


 私の考えを聞き、レイレもニヤリと笑う。


「みんな! ナイスタイミング!」


 私は早速、その場に集まった皆に声を掛ける。

《ベオウルフ》達は、「なんだなんだ?」と、私とレイレの方を見る。


「実は、前にレイレと一緒に挑戦して作ったお菓子が、新商品になりそうなんだよね」

「おお、本当か!?」

「ええ。マコとあたしの合わせ技、とくとご覧なさい!」




※ ※ ※ ※ ※




「なんだ? どうかしたのか?」

「ああ、マコとレイレが新商品候補の試食会を開いてるんだとよ」


 わいわいと、噂を聞き付けた他の《ベオウルフ》達も広場に集まってくる。

 そんな彼等を前に、私達は準備を進めていく。


「マコ、こんな感じでいい?」

「うん、大丈夫大丈夫」


 マウルとメアラにもお手伝いしてもらい、必要な食材の下拵えも終わった。


「よし……必要なものも揃ったし……じゃあ、行くよ、レイレ」

「ええ、いつでもいいわ、マコ」


 私はスキル《錬金》を発動。

 生み出したのは、大きな〝鉄板〟。

 屋台で焼きそばやお好み焼きなんかを作る時に使うくらいの、巨大なものだ。

 それを、アウトドアでバーベキューをする時みたいに、石を積んで作った足場の上に乗せる。

 そして――。


「ふぅ……せーのっ!」


 その〝鉄板〟に手を翳し、レイレが魔力を発露。

 彼女の周囲に魔力の光子が舞い、発生したのは冷気。

 その冷気が、私の生み出した〝鉄板〟を冷却していく。


「そりゃ!」


 そして、キンキンに冷え切った〝鉄板〟の上に、私はまず用意しておいたアイスの原液を流して広げる。

 以前、王都でアイスを作った時と同じものだ。

 更に、その上に事前にレイレが凍らせておいた果物も乗せて――。


「いくよー!」


 スキル《錬金》で錬成した〝ヘラ〟を使い、凍った果物を刻む。

 更に、冷えて固まりかけのアイスと混ぜ合わせ、平べったく伸ばしたら、最後に端から〝ヘラ〟で巻き上げるように削り出していく。

 小さなそれを、幾つか作って、デルファイの作ったガラスの容器に盛り付ければ――。


「おお! なんだ、こりゃ!?」

「完成、ロールアイスだよ!」


 そう、ロールアイス。

 平たく伸ばしたアイスをロール状に巻いて作る、花束のようなアイスだ。


「ほら、食べてみて食べてみて」


 私は早速、出来た先からロールアイスを皆に配っていく。

 スキル《錬金》を使い、特殊な金属で作られている〝アイス用アルミスプーン〟も錬成して、一緒に添えながら。


「美味い!」

「凍った果物の触感も良いな!」

「見た目も綺麗だし、女子供に人気が出そうだぜ!」


 みんな、驚きながらも舌鼓を打ってくれている様子だ。


「色んな果物を組み合わせれば、もっと種類を増やせるな」

「チョコを乗せたりしてもいいかもな」

「これは絶対にヒットするぞ」


 どうやら、早々にみんな気に入ってくれたようだ。

 私はレイレと目線を合わせ、笑い合う。


「マコ、早速俺にも作り方を教えてくれよ」


 ラムに言われ、私は「いいよ」と快諾する。


「でも、作り方とかはマコに教わるとして、レイレみたいに凍らせる魔法を使える魔法使いを雇わないとだよな」

「第二アバトクス村の奴等みたいに、冒険者ギルドに相談してみるか?」


 そんな感じで、新商品出品に関して、あれやこれやと話が進み始めた。

 その時だった。


「ん? なんだ、ありゃあ」


《ベオウルフ》の一人が気付く。

 村の入り口の方から、数人の人間が、こちらへとやって来ている。

 遠目に見た限りだが、全員、国章の入ったマントを着ているようだ。


「なんだなんだ?」

「ありゃあ、ただ事じゃなさそうだぞ……」


 物々しい雰囲気に、固唾を飲む《ベオウルフ》達。

 やがて、彼等は広場の中央――私達の元までやって来た。


「マコ様、ですね」


 先頭に立つ、まだ若い風貌の男性が、私に声を掛けてきた。


「あ、はい」

「我々は王城より参りました、使いの者です。グロウガ王より、お言葉をお伝えに上がりました」


 グロウガ王から?

 使者の男性は咳払いを一つ挟み、述べる。


「『ホンダ・マコ。王都を邪竜の魔の手から守り、観光都市バイゼルに潜む悪魔の陰謀を打破し、《悪魔族》の侵攻を退けた……更に、王都の復興支援。度重なる貴殿の働きを評価し、グロウガ王の名の元、来たる日、貴殿に爵位と領地の授与を決定する』」

「へ?」


 それを聞いた瞬間、周りのみんなが声を上げて驚きを露わにする。


「爵位と、領地って……」

「すごいぞ、マコ!」

「え、なに、どういうこと?」

「国から、領地と階級をもらうんだ!」


 横にいたメアラが、興奮気味に私に説明する。


「マコ、貴族になるってことだよ!」



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― 新着の感想 ―
[一言] なんて事ダァー! 貴族になったら、囲われる…! いや、貴族になった方が良いのか? そうなると、ガライさんとの関係は⁉︎ 今後も楽しみです!
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