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【書籍化】元ホームセンター店員の異世界生活 ~称号《DIYマスター》《グリーンマスター》《ペットマスター》を駆使して異世界を気儘に生きます~  作者: KK
第1章

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■11 騎士団長をぶっ飛ばします



「あいつらマコのために、ちょっと高級で美味しそうな果物を買うって、二人で選ぼうってよ」

「……俺達は俺達で、市場の方に行っちまってたから」

「すまねぇ、マコ。俺達が付いていてやるべきだった」


 ラム、バゴズ、ウーガの三人が、悔しそうに拳を握り締める。

 私は黙って、盗賊達に占拠されたという高級青果店の方を見詰めていた。


『姉御、我慢できん、行かせてくれ』


 エンティアがムクリと起き上がった。


『我が突っ込んで、今度こそ盗人共を蹴散らし、マウルとメアラを助ける』

「お、おいエンティア! また突っ込む気か!?」

「やめろ! 無暗に飛び込んで抵抗しようもんなら、奴等人質を傷付けるつもりだぞ!」

「お前、さっき助けようとして、結局手出しできなくて盗賊に切り付けられたの忘れたのか!」


 ラムとバゴズ、ウーガが、眼光を鋭く尖らせ、今にも駆け出しそうなエンティアを慌てて抑える。

 三人はエンティアの言葉を理解できないが、何をしようとしているかは大体わかる。


『ええい! 離せ! 我は神狼の末裔だぞ!』

「駄目、エンティア。まずは冷静に、だよ」


 そこで私は、興奮するエンティアの鼻先をキュッと摘まむ。


『むみゅ……』

「熱くなっちゃダメ」


 私に諭され、項垂れるエンティア。

 一方私は、盗賊団が占拠しているという高級青果店の前――そこに陣取り、様子を窺う騎士の一団の方を見る。

 先程、研究院の中で聞いた通り、彼等がこの都市を守る騎士団。

 言わば、警察みたいなものと思われる。

 イクサと話し込んでいるところから察するに、きっと何か、対策を考えてくれているはず。


「ラム、バゴズ、ウーガ、ごめん、私ちょっとあの人達のところに行ってくるね」


 三人は、こくりと頷く。


「エンティア、くれぐれも暴れないようにね」

『……わかっている』

「そうだぞ、エンティア、大人しくしてろよぉ」

「ほれ、腹わしゃわしゃしてやるぞ、わしゃわしゃ」

『ええい、やめろ! お前等にはわしゃわしゃされたくない! 我をわしゃわしゃしていいのは姉御だけだ!』


 三人の《ベオウルフ》に撫でくり回され、別の意味で立腹しているエンティアを一瞥し、私はイクサと騎士団の元へと向かう事にした。


 今後の動きと、詳しい情報を教えてもらいたい。




※ ※ ※ ※ ※




「ちょっと待ってくれ! 今、何て言ったんだ!?」

「ん?」


 盗賊団に占拠されたという店から少し離れた地点、そこに、騎士団の騎士達が密集し待機している。

 数名の騎士達が並んで、まるで警備員のように、人波を店舗の方に近付かせないための防波堤となっている。

 その真ん前まで辿り着いたところで、イクサの緊迫した声が聞こえた。


「………」


 甲冑を着た騎士達が、まるで壁のように集まっているので、その中心の様子が見えないが……何か、嫌な予感がした。

 急いでイクサのところに行かないと、いけない気が。

 私は黙って、騎士達の間を潜り抜けようとする。


「ん? おい、お前!」


 当然、一瞬で見付かった。


「何をしようとしている。ここから先は――」

「すいません! 私、イクサ王子の知り合いなんです!」


 私は躊躇無く、そう叫んだ。


「そうなのか?」


 と、その騎士は、すぐ横の別の騎士に聞く。

 あ! この騎士、さっき研究院にイクサを呼びに来た騎士だ。

 しめた!


「そうですよね!? さっき、院から一緒に来たんですもんね!?」

「あ、いや、まぁ……」


 その騎士自身、「あれ? そういえばこいつ、なんであの場所にいたんだ? というか、なんで一緒に付いてきたんだっけ?」という認識だろう。

 しかし、悩んでいるその隙を利用し、私はすぐさま騎士達の中へと突っ込んだ。


「あ、おい!」


 後ろから声が飛んでくるが、密集した騎士達の中を掻き分けて来るのには時間がかかるだろう。

 その間に、私は体勢を低くして、騎士達の足元をすり抜けていく。

 やがて辿り着いた先、イクサの姿があった。

 後ろにスアロさんが控えている。


「結論をお話ししたまでです」


 そのイクサの前に、一人の男性が立っていた。

 他の騎士に比べて少しデザインの違う、なんだか威厳のありそうな雰囲気の、やたら偉そうな男性だ。

 兜の下、露になっている顔からは、ふてぶてしさが感じられる。


「……ならばもう一度言って欲しい、騎士団長。僕の聞き間違いだと願いたいからね」

「このまま商店に突入します」


 騎士団長――と呼ばれたその男性が、感情の無い声で言った。

 イクサが眉間に皺を寄せる。


「既にウィーブルー家には通達しました。店に生じた損害は国側で補填すると」

「そういう話じゃない! つまり、最悪の場合人質が危険に晒される……いや、人質を見捨てるって事じゃないか!」

「ご安心を、王子。調べはついております」


 声を荒げるイクサに対し、騎士団長は嫌なほど冷静だ。


「現在、あの店の中にいる人質は、下働きの店員が数名。そして客は運良く(・・・)、獣人の子供二名だけとのことです」

「……王族も貴族もいない……だから、平気だっていうのか」

「王子、我々はこの国に忠誠を誓う騎士です」


 騎士団長は慇懃な態度で言う。


「我等が騎士に命ぜられた最大にして最優先の任は只一つ――王族のために尽くせ。我等が主はグロウガ国王。そして国王曰く、〝王族の所有物は何人にも奪われてはならない〟。魔道具は、太古の昔より魔力を携えし王の血族が生み出した、王の所有物なのです」

「………」

「相手は盗賊団。ならず者の最底辺の者達。そのような連中に、我々が舐められるわけにはいきません」

「……その過程で人質が死んでも――」

「仕方のない犠牲です」


 ………何と言うか。

 騎士団と言えば、正義を重んずる敬虔なる戦士。

 国を守る衛士という認識ゆえに、きっと警察のように市民の安全を守るために尽力してくれるはず。

 つまり、マウルとメアラを救う事も考えてくれているはずだと――そう、私は勝手に考えていた。

 いや、違う、それが常識だと思っていた。

 素人が横から口や手を出しちゃいけない。

 やるべき役職の方々に、任せるべきだ、と。


(……でも、これは違うよね……ショウタロウ……)


 人情深く己の信念に厚い熱血漢、仮●ライダーWのヒダリ=ショウタロウを思い出す。

 私の心の中に、熱い何かがふつふつと沸き上がって来る。


「僕は、人質を解放するためなら……これを渡してもいいと思っている」


 一方、イクサは肩から掛けているカバンを示し、そう言い放った。

 驚いた。あんなに魔道具に熱心なイクサが、そう言った事に。

 しかし、騎士団長の目は冷ややかなものだった。


「貴方の意志は関係ありません、イクサ王子。第七王子である貴方よりも、現国王の意向が優先されるのは当然です」

「……ッ!」

「……貴方をわざわざここに呼んだのは、別に交渉の相手に指名されたから……というわけでありませんよ、イクサ王子。貴方に、きちんと現実を見ていただきたいからです」


 そこでふと、騎士団長は嫌らしく笑った。


「もうこれ以上、『人も獣人も平等に生きるべきだ』などという、現国王の理念に反するくだらない理想論を語らないように」


 では――と、騎士団長はイクサに背を向ける


「待て――」


 前に出るイクサ。

 しかし、その肩を、背後からスアロさんが抑える。


「スアロ……」

「イクサ王子、ここは冷静に。よくお考え下さい……魔道具を、軽はずみに手放すわけにはいきません」

「………っ」


 悔しそうに歯噛みするイクサ。

 そんな彼の姿を見て、騎士団長は「ふんっ」と小馬鹿にするように鼻を鳴らす。


「よし、お前達――」


 と、部下達に指揮しようと振り返った。

 その騎士団長の前に、私は立った。


「ん?」


 私は腰を低く落とし、右腕を肩ごと引いて構える。


「マコ……」


 そして、イクサが私の姿に気付いた、その瞬間。




「セイッッッ!」




 裂帛の声と共に、私の放った正拳は、まっすぐ騎士団長の防具で守られていない顔面へと吸い込まれていった。

 鼻っ柱に命中。

 骨が軋む感覚が拳を伝わる――。


「ぐぶぇぇっ!」


 騎士団長は怪鳥の雄叫びみたいな声を発して、地面をゴロゴロと転がっていった。

 私は「ふんっ!」と、腰に手を当てて仁王立ちする。


「………」


 ぽかん――と、その光景を見て、騎士達も、イクサも、スアロさんも、全ての人達が停止していた。

 まぁ、いきなり現れた女が甲冑を着た男を殴り飛ばしたなら、そんな風にもなるでしょうね。信じられない光景だろう。

 私だって、まさかホームセンターに就職した結果、自分がこんな事になるとは思ってもいなかったよ……。


 ホームセンターで売っているものには、なんてったって重量物が多い。

 加工食品では、袋売りの米や段ボール売りのペットボトル飲料。

 家具は言うまでもなく、農業資材関係では業者使用の肥料、建築資材に至っては砂利、石材、鉄骨、ほとんどが重量物。

 平均重量20㎏前後の商品がゴロゴロあり、それらを毎日のように腕で持ち上げて運んでいるのだ。

 約15㎏のコンクリートブロックを100個、約25㎏のセメントを100袋、トラックに積み込むなんてザラである。

 就業時間中=筋トレ時間に近い。

 更にそんな毎日を繰り返していれば、やがて負担が掛からない動きをするにはどうすればいいか、効率的な稼働の仕方を体が覚えるようだ。

 必然、私の体は自然と鍛錬が施されていたようで、会社の定期健康診断で医者の先生に……


『……ジムとかに通ってます? もしくは格闘技とかやられたりしてますか?』

『いえ、休日は基本、家で特撮番組ばかり見てゴロゴロしてます。やっぱり運動とかした方がいいでしょうか?』

『え?』

『え?』


 ……という会話をしたほどだ。


「だ、団長!」


 話を戻します。

 ごろごろ転がって、騎士団長は部下の騎士達の足元で停止する。

 そして、鼻を押さえながら起き上がった。


「な、何をする! 誰だ、貴様!」

「イクサ王子」


 声を荒げている騎士団長は無視して、私はイクサに話しかける。


「マコ……」

「イクサ王子の意見を聞かせて下さい」


 ほんのついさっき、あの研究院で。

 イクサは言った、獣人と一緒にいる私に『本当はその方が理想的』と。

 詳しい経緯は知らない。彼の過去や事情――その人生の中で何があったのかは、私にはわからない。

 でも、彼はきっと――少なくとも、『今何をすべきか』という点に関しては、私と同じ価値観のはずだ。


「イクサ王子は、この騎士団長の考えに賛同しますか? それとも、人質を助けたいですか?」

「……助けたい、と言ったら?」

「なら、私に協力してください」


 私はハッキリと、彼の目を見てそう言った。


「私に考えが――」

「貴様! 無視するな! この私が王国直属、市場都市ロッシュウッド警護騎士団の団長と知っての――」

「すっこんでろッ!」


 飛び掛かって来た騎士団長に、もう一発、拳をお見舞いした。


「ぐぶぇぇっ!」


 騎士団長は、先程と同じ軌跡を描きながら吹っ飛んだ。

 テンドンか。


「……考えがあります。盗賊団のみを制圧し、人質を助け出せる、ある作戦が」

「それは、どんな作戦だい?」

「イクサ王子。さっきも言った通り、私は魔道具を生み出す力を持っています」


 イクサが目を見開く。

 そう、私の《錬金》により生み出される金属には、多かれ少なかれ、魔法効果が付与されている。

 その物品自体が元々持っている性能を強化するような。

 また、あの刀のように、魔力を持つ人間が力を籠めると、まるで武器のように扱えるような。

 ……ならば、一つ、アイデアがある。


「マウル、メアラ、すぐ行くから」


 私は《錬金》の力を発動する。

 全身から湧き上がる発光。

 私が魔法を使う姿に、騎士達も、そしてイクサもスアロさんも驚愕している。


「これは、魔法。やはり君は……」


 そして、私は〝ある金属〟を生み出す。

 これは、どこのホームセンターにも売っているような、ホームセンター定番の品物。

 そして、私の考え通りなら――上手くいけば、この状況をシンプルに打開できるかもしれない、最強の武器なのである。



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― 新着の感想 ―
[一言] ホムセンの店員さん+ライダーマニア最強、きっと1号のライダーパンチくらいの威力なのだ。
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