サボり続ける彼のこれまでとこれから
今日はどこへ行こうか...いや、辞めておこうか...。
そんなことを考えながら毎日が過ごせるだけで私は贅沢者だという自覚はある。普通二十歳にもなれば大学生活にも慣れ、どこに就職しようかと考えるものであろう.........たぶん。
...たぶんとしか表せないのである。就活なんてしようと思ったこともないしそれどころか考えたこともない。
考えたこともないというのは少し言い過ぎた。私だって高校在学中は大学への展望を人並み以下に考え、その後の展望を小学生並みに考えたことだってある。...だがそんな甘々の展望に致命的な不具合が生じた。20で暇をしていると分かれば大体お気づきではあろうがそう、大学に落っこちたのである。それも全部。第1志望から滑り止めまで諸々。見事な滑落であった。さながらスキージャンパーの如き滑走でありそのまま滑空できればよいものの直滑降。そのショックたるや2年目の受験にまで響きズルズルと高卒の無職X爆誕である。
それからどうしたかというと比較的裕福であった私の家庭で生き抜くという点だけに特化すれば、存在感を薄めに薄め罪悪感をバイトで紛らわせればそう難しいことではなかった。そしてそこに現れたのが救世主たる我が自慢の兄貴である。(私の場合、救世主と書いて金づるとも読む)
当然兄である以上現れたと表現するのはおかしいとしか言いようがない、『現れた』ではなく『成った』と表現するのが適当であろう。...というのも彼は私のこのザマを最も近くで見て育ったので、勉学に関してはそこそこ優秀な成績を修め、一般的に良いとされる大学へ進学した。私は彼の人生の反面教師として、常に寄り添ってあげていたのだ。
そのお兄様の何が彼を救世主たらしめているのかというと、私がアテにするのはもちろん!経済力!彼は大学での勉学を差し引いてなお余った時間をバイトに当て、そこで集めた資金を糧にして株を買い、見事ものの数年で成金の仲間入りである。
資金が安定し始めた彼が家を出て行くらしいので私は彼の家に住み着いた。彼の家は立派な二階建てであり、上の階を丸々貸し出してくれた。後々考えてみると彼にだって人付き合いもあるだろう。二十歳の野郎が住み着いてる部屋に呼ぶわけにもいかないのだと分かった。もし逆の立場であれば私は真っ先に実家まで追い返したであろう、なんだかんだ面倒見のいいヤツである。
前置きが大変長くなったが、これで無職大帝国の完成である。申し訳程度にバイトをしつつ趣味にそのほとんどをつぎ込めるようになったわけである。