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「坂東の風」雑感  作者: 青木 航
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下野国府跡

 最初に行って見たのは「下野国府跡」でした。台風の余波でぐずつき気味の天気。東武日光線・栃木駅で降り観光案内所で聞いてみるが分からない。重要な観光資源と思えるのだが、市や観光協会の考えが分かりませんでした。

 秀郷が築いたと言う唐沢山の城跡は看板に大きく表示されていましたが、秀郷の時代に山城など造る訳も無く、唐沢山の城跡は戦国時代に作られた物と分かっていたので、そちらに行ってみようとは思いませんでした。

 携帯で検索してみると、一番近いのは「野州大塚」と言う小さな駅。行ってみるが、バスも走っていません。駅員に聞いてみても分からない。

 天気は悪く、雨が降ったり止んだりと言う状況でした。駅近くで聞いてみても分かりませんでした。ところが、駅に戻ってふと気が付くと、三角柱の看板の上の方にちゃんと書いてある。

 町名も「国府町」、「こうまち」と読むらしい。この無関心さは何なのだと思いました。分かったものの、かなり距離が有り、バスも無い。タクシーを使うような優雅な観光では無いので歩く覚悟を決めました。

 腹が減っていたので、駅近くの小さな大衆食堂を見つけて食事を取ることにしました。

 食事をしながら店主に目的を話すと、意外や結構詳しい方で、観光地図を出して来て順路を教えてくれました。そればかりでなく、かなり距離があるからと言って、送ってくれると言うのです。

 助かりました。ご好意に甘えて軽自動車で送って頂きました。


 県道で降りて農道のような道を入って行くと、神社の先に「国府跡」はありました。

 天気が悪いせいで、敷地はぬかるんだグラウンド状態。スニーカーも靴下も気持ち悪く濡れ放題。水も侵入して来ます。余り手入れされていないような水浸しの芝生が広がり、両側には藤棚のような細長いものが続いています。建物の柱の跡に簡単な屋根のような工作物が建っていました。

 正面に再現された国衙の朱塗りの門が有り、そこを抜けると資料館が有りました。但し、私以外人影は全く無い。雨が降って来たので資料館に入るが、中もひっそりとしている。何度か大きな声を掛け、やっと職員らしき方が出て来ました。

 PRビデオが有るとの記載が目に付いたので、視聴出来るか聞いてみると可能との事で、セットして頂きました。セットが終わると職員の方は引っ込んでしまい、ロビーの椅子で私一人となって、のんびりと見ました。

 ビデオの内容は、発掘と門再建の経緯を追ったものでした。

 興味を惹いたのが、礎石の上に柱を立てる作業でした。扁平な丸い石の上に柱を立てるのだが、石を削るのは平安時代には大変な作業であり、柱の底辺が安定するほど平に削ることは不可能だったようです。

 そこで、石より遥かに柔らかい木の方を加工する訳ですが、自然石の表面の凹凸に合わせて柱の底を削るやり方が、とても興味深いものでした。

 三叉に組んだ木材から柱を吊るし、石に石灰を撒く。吊り縄を緩めて石に載せ、また引き上げる。石の出っ張った部分の石灰のみが柱の底に着いている。その部分だけを削って、また同じことを繰り返す。それを何度も何度も繰り返し、柱の底が礎石にぴったりと納まるようにするのです。実に手間の掛かる、気の長い作業と言わねばなりません。

 これを小説の中で使おうと思いましたが、結果として使いませんでした。理由は、秀郷の時代に国衙が焼失していたと言う記録が有り、その後、再建された気配が無いことが分かったからです。

 では、その機能を何処へ持って行ったのか。秀郷の舘か。その辺りがさっぱり分からなかったので使うことが出来ませんでした。


 帰りがけに門を詳しく見てみると、朱塗りは剥げ、門柱には幾つも亀裂が入っていました。木材の乾燥が充分でなかったのでしょうか? 再建後いくらも経っていないのにもったいないことと思いました。

 管理も良いとは言えなかったのでしょう。それなりの予算を組み、観光の目玉にしようと意気込んで再建したのでしょうが、思うように人が集まらなかったのでしょうか? お役所仕事と言う印象が残りました。仕事だからやる人ばかりでなく、熱い想いを持った人が居なければ、こういうプロジェクトは、大抵、箱物行政と化してしまうのでしょうね。

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