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ルリハとナミホ 1  作者: カワラヒワ
9/15

森へ行こう

 ある日のこと、

「森へ行こうよ」

 とぼくは言った。


 海辺に立つぼくとナミホに強い風が吹き付けている。

 海からは、遠くで鳴る雷のような低い音が響いて、白い波は高くうねり、荒々しく砂浜に打ち付けている。

 もうすぐ嵐がくるようだった。


「風が冷たいよ。森に入れば寒くないよ。だから、森へいこう」

「でも」

 ナミホは口ごもり、

「あたし、森へは行ったことがないから」

 と暗い空を見ながら言う。

 空には重そうな黒い雲が立ち込め、太陽を隠してしまっている。


「だったら余計に行ってみようよ」

 ぼくは張り切って言った。ナミホと森に行ってみたいとずっと思っていたから。


「ぼくの大好きな場所を見せたいんだ。きっとナミホも気に入るよ」

 ぼくはナミホとつないでいた手に力を入れた。

 ナミホはちょっと困ったような顔をして、ぼくを見つめる。


 けれど、ぼくは悪びれず歩き出した。

 ナミホは何も言わなかった。仕方がないなというように、小さなため息をついて、ぼくに連れられるまま歩いた。


 森へと続く歩道橋を渡って、森の入り口まで来る。


「怖い」

 ナミホが急に立ち止まって言う。

「怖い?」

 ぼくはきいた。


「だって、木がザアーって、それに奥は真っ暗だわ」

「大丈夫だよ」

 ぼくは笑って言った。

「何も怖いことなんてないよ」

 ぼくはちょっとうれしくなった。ぼくは木が風で鳴る音や、暗い森なんてちっとも怖くはないし平気だったから。ナミホに男らしくかっこいい所を見せられるかもしれない。


「でも・・・」

 ナミホは不安そうに言う。

「平気、平気。風が強くても、森が暗くても、ぼくが守ってあげるよ」

 得意になってぼくは言った。 


 ぼくはナミホの手が離れないように、しっかりとつないで森に入って行った。

 森の中はさっきと変わらず静かだった。時々、風で木の葉が擦れ合う音がするくらいだった。

 でも、普段でも暗い森の中は、今日は木洩れ日もないせいで一段と暗くなっていた。


挿絵(By みてみん)


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