出会えてよかった
ぼくはおばさんと一年近く一緒に暮らした。
その間におばさんの好きな食べ物、おばさんの好きなテレビドラマ、おばさんの好きなかっこいい俳優たち、その他もろもろを覚え、そんなことからぼくは人間(魔女)の暮らしが大体わかった。
その内の二週間だけナミホと一緒に暮らしたわけだ。
ナミホは傷が治ってくると、お礼もさよならも言わずにぷいっと出て行ってしまった。
そんな子だったけれど、ぼくにとっては天使のような存在だった。
「出て行ったものはしょうがない」
おばさんは、優しく手当してやったことを悔やんだり、突然いなくなったことをなげいたりしないであっさりとそう言った。
「あの子はきっと、人と暮らしたりするのが好きじゃなかったんだね」
そうとも言った。
ぼくは悲しかった。ナミホともう会えないなんて。
「ルリハ?」
ナミホがちょっと首をかしげて、ぼくを見ていた。
ぼくははっと我に返った。
ナミホのきょとんとした目をかわいいと思った。
「よかったなあ、ぼくナミホと出会えて、よかったなあって考えていたんだ」
僕は微笑んで言った。本当にそう思った。
「変なの」
ナミホもふふふっと笑った。