見つけた!
「あっ、いた」
ぼくは小さな声をあげた。
海から少し離れた砂浜に、ナミホはぽつんと立っていた。
この場所でナミホを見つける確率は高い。二十回に一度ぐらいの割合で。
ぼくは空から舞い降りた。
砂浜に足が着く前にぼんっ、人間の男の子の姿に変身する。
「ナミホ!」
ぼくはうれしさのあまり息をはずませて言う。
「こんにちは」
ぼくはナミホに会えたことを感謝する。ぼくたちを会わせてくれたおばさんに、きっといるだろう神様に。
ナミホの青と黒のしましまワンピース。砂浜によく目立つ、いつものいでたち。
ナミホはけだるそうにぼくをちらっと見て、
「こんにちは」
と小さな声であいさつする。
「面倒くさくてもこんにちはぐらいは言いましょう」
と言っていたおばさんの言いつけの、これだけは守られている。
「いい天気だね」
これもあいさつの一部。
でも、ナミホはこれには答えず、ぷいと前を向いた。
「さんぽしょうか」
ぼくは言った。
ナミホはうなずきぼくたちは歩き出した。
ぼくが手を出すと、ナミホは素直に自分の手を出す。
手をつないで歩く波打ち際。
「おばさんのことを思い出していたんだ」
ぼくは斜め上を見上げて、昔を懐かしむようにちょっとかっこつけて言った。
でも、ナミホは、
「ふ~ん」
といかにも興味なさそうに言った。
しかし、ぼくは続ける。
「おばさんいい人だったね。いつも優しかったね」
ぼくは言った。
確かにおばさんはいい人だった。本当にいつも優しかった。
どうしていい人で、どうしていつも優しいか何となくわかっていた。
おばさんは何でもできたから、きっと心に余裕があったんだ。
ぼくができないことも、おばさんはちょいと手を振ればできたし、僕が何か失敗―例えばおばさんの鍋をこがしてしまったり―したとしても、すぐに元通りにすることができたから。
それでも、おばさんはぼくにいろいろ仕事をさせて学ばした。
学んだことがぼくのためになろうが、なるまいがかまわないというように。