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ルリハとナミホ 1  作者: カワラヒワ
3/15

見つけた!

「あっ、いた」

 ぼくは小さな声をあげた。


 海から少し離れた砂浜に、ナミホはぽつんと立っていた。


 この場所でナミホを見つける確率は高い。二十回に一度ぐらいの割合で。

 ぼくは空から舞い降りた。

 砂浜に足が着く前にぼんっ、人間の男の子の姿に変身する。


「ナミホ!」

 ぼくはうれしさのあまり息をはずませて言う。


「こんにちは」

 ぼくはナミホに会えたことを感謝する。ぼくたちを会わせてくれたおばさんに、きっといるだろう神様に。


 ナミホの青と黒のしましまワンピース。砂浜によく目立つ、いつものいでたち。

 ナミホはけだるそうにぼくをちらっと見て、

「こんにちは」

 と小さな声であいさつする。


「面倒くさくてもこんにちはぐらいは言いましょう」

 と言っていたおばさんの言いつけの、これだけは守られている。

「いい天気だね」

 これもあいさつの一部。

 でも、ナミホはこれには答えず、ぷいと前を向いた。

「さんぽしょうか」

 ぼくは言った。

 ナミホはうなずきぼくたちは歩き出した。


 ぼくが手を出すと、ナミホは素直に自分の手を出す。

 手をつないで歩く波打ち際。


「おばさんのことを思い出していたんだ」

 ぼくは斜め上を見上げて、昔を懐かしむようにちょっとかっこつけて言った。

 でも、ナミホは、

「ふ~ん」

 といかにも興味なさそうに言った。

 しかし、ぼくは続ける。

「おばさんいい人だったね。いつも優しかったね」

 ぼくは言った。


 確かにおばさんはいい人だった。本当にいつも優しかった。

 どうしていい人で、どうしていつも優しいか何となくわかっていた。

 おばさんは何でもできたから、きっと心に余裕があったんだ。

 ぼくができないことも、おばさんはちょいと手を振ればできたし、僕が何か失敗―例えばおばさんの鍋をこがしてしまったり―したとしても、すぐに元通りにすることができたから。


 それでも、おばさんはぼくにいろいろ仕事をさせて学ばした。

 学んだことがぼくのためになろうが、なるまいがかまわないというように。



挿絵(By みてみん)


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