一緒に泳ごう
ナミホが、砂浜にたたずんで海を見ている。
ぼくはそれを見つけると、慌ててナミホのもとに走った。
「ナミホ~」
ぼくは叫んだ。
ぼくの声は、ナミホに届いているはずだけど、ナミホは振り向きもせずに、前を向いたままだ。
「ナミホ」
息を切らしながら、ぼくはナミホの横で言った。
「ずっと毎日探していたんだよ。ずっと毎日」
ナミホに会うのは六日ぶりだ。
ナミホは黙っている。
「怒っているんだね。嵐の夜の森のこと。ぼくが寝てしまってから」
下を向いたナミホの顔を、ぼくは覗き込んだ。
口がへの字になっている。相当怒っている。
「嵐がやんだら、ちゃんと送っていくつもりだったんだ。だけど、眠りこんじゃって。謝るよ。ごめん。だから笑って・・」
ナミホは何も言わず、もちろん、笑いもせず歩き出した。
ぼくはナミホの後を、そっとついていく。
ナミホはしばらく歩いて、急に立ち止まり後ろを向いた。そして、
「あたしのいうことをきいてくれたら、許してあげる」
と言った。
「ほんと?」
ぼくはうれしくて飛び上がった。
ナミホを抱きしめて頬ずりする。
「ぼく、何でもするよ」
ナミホはやっとにっこりと笑った。
「じゃあ、あの小さな島まで、一緒に泳ごう」
「えっ!」
ナミホが指さす海の向こうに、小さな島が見える。
ぼくは驚いて、ナミホの顔と島を交互に見た。
「あの島まで?」
「そう」
ナミホはうなずいて言った。
「でも、ぼく泳いだことがないんだ。だから、きっと泳げないよ」
ぼくは言った。
「何でもするんでしょ」
ナミホが冷やかに笑って言う。
「うん・・・」
ぼくはどうして、何でもするなんて言ってしまったんだろう。ぼくは後悔した。
「見た目よりそんなに遠くないし、海もそれほど深くないのよ。それに、もし、溺れそうになったらあたしが助けてあげる」
ナミホが楽しそうに言う。
ぼくはこんなに楽しそうに話すナミホを、見たことがないと思った。
「でも」
でも、ぼくは何だかいやな予感がする。
「早く行こう」
ナミホはぼくの気落ちなどおかまいなしに、水の中に入って行った。




