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ルリハとナミホ 1  作者: カワラヒワ
11/15

深い森

 森は深かった。

 苔の生えた大木や、何かが飛び出てきそうな茂み。毒虫が這い出てくる草むら。行く手を阻むとげのあるつる草が、二人の手足を傷つける。


「どこまで行くの?」

 ナミホが眉をしかめて言う。

「足が痛い。あたし、歩くのに慣れてないもの」

 ぼくは歩みを止めた。


「もう、少しだよ」

 とは言ったものの、本当は目的地までかなりかかりそうだった。


 ぼくもナミホと同じく歩くのに慣れていない。それに、飛んで行くのと歩いて行くのとでは道のりは全然違う。


 引き返すそうか、ぼくは思った。

 けれど、せっかくナミホを森に連れてこられたのに、そんなチャンスはめったにないぞ、と思うと引き返す勇気がでない。

 ぼくは無言になってナミホの手を引き続けた。


 雷がごろごろと鳴り始め、雨もぽつぽつ降りだした。

 予定では、嵐が来る前に、あの場所まで行って帰ってくるはずだった。

 時間がかかり過ぎている。ぼくは焦った。


 雨はだんだん強くなり、木の葉に落ちた雨水は、容赦なく二人に降り注ぐ。

「くそっ」

 ぼくは小さな声で言った。


 見慣れない大木が立ちふさがる。まるで夜のようになった森はどっちに行けばいいのか、方向もわからない。

 どうやら、道に迷ったらしい。


「寒い」

 雨に濡れたナミホが言った。


「ごめんね」

 申し訳なくて、悲しくなってぼくは言った。

 こんなはずじゃなかったのに。


 ぼくたちはさまよった挙句、ほら穴を見つけた。二人で入るのに丁度いい大きさの洞穴だった。何とか雨風が防げる。

 二人はそこで嵐をやり過ごすことにした。


「本当にごめん」

 冷たい石に腰かけぼくは言った。

「ナミホに湖を見せたかったんだ。すごくきれいな湖が森の奥にあったんだ」

 ぼくの言い訳にナミホは何も言わず、うつむいたままだ。

 

挿絵(By みてみん)


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