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ルリハとナミホ 1  作者: カワラヒワ
10/15

小鳥たち

 森の奥に入ると、きれいな声で鳴いていた鳥たちは、一斉に鳴くのをやめた。


「ルリハだ」

 一羽の鳥が言うと、

「ルリハだ」

「ルリハだ」

 と、何羽の鳥たちが同じように繰り返した。


「人間に化けたルリハだ」

「変なのを連れてきたぞ」

「海へびが化けた人間だ」

「あいつだよ、ルリハを惑わしているのは」

「なんて恐ろしい」

「そんなやつを連れて来るなんて」

「いつか、ひどい目に遭うぞ」

 鳥たちは口々に言い合った。


 その鳥たちの中にコトネの姿もあった。

「ルリハ」

 コトネが心配そうにつぶやく。

 涙が出そうなくらいに悲しい気持ちで。

「コトネ、もう、あんなやつと付き合うのはやめろ」

 隣りにいたコトネの兄さん鳥が言った。


「兄さん、ルリハは悪い人じゃないわ」

 コトネが小さな声で言う。

 コトネは、人間の姿のルリハに助けられたことがある。野良猫にもう少しで仕留められそうになったのを、ルリハが助けてくれたのだ。


 簡単に猫を追い払える人間の強さ。恐怖で動けなかったコトネを、手のひらで包んでくれた手の温もり。優しい笑顔。コトネはその時、人間の姿のルリハにも恋をした。


「人?」

 兄さん鳥は大きな声で言う。

「それが問題なんだ」

「あっ・・」

 コトネは言葉につまった。


「人、人間! あんなやつらろくなもんじゃない。人間なんて自分勝手な生き物なんだ。そんなものに化けて、海へび人間なんかと仲良くして喜ぶ、鳥の気が知れん!」

 兄さん鳥は吐き捨てるように言った。


「わかってる、わかってるけど」 

涙ぐんでコトネが言った。


「もう金輪際、ルリハと話すのを禁じる。お前のためだ。仲間のためでもあるんだぞ」

 兄さん鳥はきつく言って、人間の姿など見たくないというふうに、翼をばたつかせ飛んで行った。


「ルリハ」

 また、コトネがつぶやく。

 しかし、二人は鳥たちが木の上で騒いでいたのも気づかず、コトネが悲しんでいるのも気づかず、森の奥へと進んで行った。


挿絵(By みてみん)

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