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ルリハとナミホ 1  作者: カワラヒワ
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ねぐら

 ほとんど日が落ちて暗くなった時刻。ぼくはねぐらに帰ってきた。

 枝にとまっていた仲間たちは、いつものピーチクおしゃべりもやめ、今は羽毛をふくらませ静かに目を閉じている。


 ぼくのとまるお気に入りの場所は空いていた。

 足に馴染む丁度いい太さの枝、優しく体を隠してくれる常緑の葉。隣りにはいつもコトネがいる。ぼくの特等席。


「ルリハ?」

 背中の羽毛に頭をうずめていたコトネが前に向き直って言った。

「あっ、ごめん、おこしちゃった」

「ううん、いいの」


 眠そうな目をしばたかせ、コトネが言う。

 せっかくのまどろみを邪魔されても、怒りもせずに許してくれる。

 そういう時ぼくはコトネを愛おしく思う。


「ごめんね」

 ぼくはもう一度言った。

 ふんわりと膨らんだ温かそうなコトネの羽毛。ぼくを見つめるつぶらな瞳。

 ぼくは自分の体をコトネの体にくっつけた。

 温かい。


「ルリハ」

 ちょっとかすれた甘え声。

「ん? 何?」

 ぼくはありったけの笑顔で答える。

「どこへ行っていたの?」

 ドキッ!

 コトネは時々この質問をするけれど、そのたびぼくはドキッとする。


 コトネは真っ直ぐ前を向いていた。ぼくにきいたのではなく、暗がりの中にいる誰かに内緒で話しかけるようにすごく小さな声。


「コトネ」

 ぼくも小さな声でいう。

「ごめんね」

「謝ってばっかり」


 ぼくは悲しくなって、何か言わなければと思った。でも、何を言っていいのかわからなくて黙っていた。

 コトネは小さなため息をつくと、また背中の羽毛に頭をうずめた。


「おやすみ」

 ぼくは言って、ぼくもコトネと同じように羽に頭を突っ込んだ。

 コトネは好きだ。でも、ナミホのことも。

 つむった目の奥に風に吹かれて海を見つめる、ナミホの横顔が浮かんだ。 


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