初めての戦闘
とりあえず、俺は走って逃げた。
攻撃を喰らえば死ぬ。そんな気がする。いや、絶対死ぬ。
竜の爪、鋭すぎ。切り裂かれたら一発でやられる。
だが、竜もバカではなかった。
見逃すはずもなかった。なんせ折れは弱そうな獲物なんだから。
俺に突進していた竜は飛んで、俺の逃げる方向に下りて通せんぼする。
「……やっぱり、逃がしてくれませんよね?」
「ギャオォォ!」
俺の言葉を理解しているのか、頭を縦に動かす。
「人間の言葉を理解してる!」
おいおい、この世界発達しすぎじゃね?
なら、交渉が可能なのでは?
「あのー、見逃してくれません? 」
さぁ! どう出て来る。
俺は少し期待をしていた。
俺の言葉を理解して汲み取ってくれるのではないだろうか。
最悪、土下座でもしよう。というか、もうするべきか?
「ギャオォォ!」
竜は吠える。そして、俺に向かって突進してくる。
「ですよねぇ」
俺の勘違いだったらしい。
本当にどうしよう。
俺の知ってる小説とかだとここで誰かが助けてくれる。
あ、それは女性限定のイベントか。くそぉ。俺が女だったら!
また、ある小説だと、ここで何かに目覚めるんだよ。
そう秘密の力とかに。
ん? 秘密の力? あれ? 俺秘密の力持ってないっけ?
「ああぁ! 俺神様から恩恵もらったんだ!」
すっかり忘れてた!
「でも、どうやって恩恵を使うんだ? って考えてる暇がねぇ!」
竜が近くまで迫ってきていた。
どうにかして避けないと。
そうだ、ゲームを思い出せ。
魔物を狩るゲームを思い出すんだ。
緊急回避!
「ほッ!?」
ナイス回避!
うまくできた。
竜が俺の横すれすれを通っていく。
怖かった。死んだと思った。
寿命が縮まったわ。
あのゲームのハンターたちってこういう思いをして魔物と戦っているのだろうか?
少し可哀そうだ。
「って、そんな現実逃避はどうでもいい! マジでどうやって能力を使うんだ?」
小説の主人公はピンチの時に勝手にそういう能力が目覚めるんだけどな。
流石神様。そんなことができないようになってるのか。抜かりない。
では、ここで一つ。心の叫びをお聞きください。
――ふざけんじゃねぇぇ! 本気と書いてマジと読む。いや、割とマジで神様使えないわ。能力の説明だけして、使い方を教えないとか。
俺が一人で悶々としていると、竜は方向を変えて俺にまた、突撃してきた。
「また来たか。俺のゲームで培った力の前では無力だ!」
もう一度緊急回避でどうにかして見せる!
俺は竜のスピードを見極めて、避けるタイミングを見計らう。
どんどんと近づいて来る竜。
今だ!
緊急回避。
だが、先ほどのように華麗に回避することはできなかった。華麗に回避することはできたのだ。だが、俺一人だけが行動を起こしていた。
竜が立ち止まったのだ。
急に足に力を入れて、勢いを殺し立ち止まる。
俺はそれを、前転しながら見たいた。
やばい! 本当に積んだ。
竜が前足を振り上げる。狙いを定めて俺目掛けて振り下ろす。
ああ、俺死ぬのか。
俺の周りがスローモーションで動く。
そういえば、俺の恩恵ってなんだっけ?
たしか、
「”神化”だったよな」
この言葉の直後、突然だ。本当に突然。躰の底から力が湧いてきた。
そうか。簡単だったんだ。恩恵の発動条件はキーワードの発言なんだな。
俺は空中で無理やり体を捻って地面に体をつけ、そこから思いっきり走った。
俺は一歩。ただ、一歩踏ん張っただけだ。それなのに、数メートル先まで進んだ。
そして、竜の攻撃を避けた。
竜は俺を殺した感触がなかったらしく、ゆっくりと前足を上げ俺の存在を確認する。
だが、残念だったな。俺はもうそこにはいない。
竜は首を上げ、周りを確認する。
俺と目が合う。竜の目が点になる。この状況を理解できないらしい。
俺だってもしこんなことが起きたら理解できないから、竜の気持ちわからなくもない。
だが一言言わせてほしい。
俺は大きく息を吸って叫んだ。
「命乞いしても絶対に見逃してやんないからな!」
絶対にぶっ飛ばしてやる!
第二ラウンドと行こうじゃないか!
シリアスな世界なはずなのに主人公の頭は少しおかしい。
ゲーム脳なんだよね。
ご都合主義的な展開に少しなってしまいましたが、これはただ主人公が馬鹿なだけです。恩恵を口にしないというか忘れているという時点でもう御察し……
なるべくご都合主義にならないように頑張りたいと思います(たぶん無理)




