水を探しにいく
俺は山を登っていた。木々も木に石で印をつけながら。水を探すために。
なぜ、山を登るのか。俺は一旦山を下りている。その時、湧き水が出てるところはなかった。もしかしたら、反対の方にはあるのかもしれないが。ただ、そこまで遠出することはできない。上下の移動ならまだしも。
そして、印をつけるのには理由がある。
水を見つけたのにも関わらず、帰れなくなったとか笑い話にならない。笑い話をする前に死ぬ。
俺はここが山で心底安心していた。
前述のとおり、俺は水を探している。そして大抵の山には湧水がでて、川の水よりもいいらしい。このらしいというのは、ただサークルの本で読んだだけで、実際に体験したわけではないためだ。他にも色々、サバイバルについて学んでいるが、それはまた今度。
「クソ疲れるな」
どんどん険しくなる山道に言葉を零してしまう。
とにかく、雑草が生い茂ていて邪魔。俺の身長が175くらいなんだが、その半分いやもう少し上くらいまで雑草が生えていて、かきわけていかないと顔に雑草が当たってかゆくなる。
「結構登っているはずなのに、全然頂上が見えないんだけど」
拠点を出発してから結構な時間歩いている。同じような道をただひたすら木に印をつけて登り続けるだけ。足にくるものがある。それでも歩き続けるのは訳があるから。
「……水がほしい!!」
この世界に来てから一口も飲んでいないため、喉が渇いてしかたがない。それに暑い。喉がカラカラになるのも仕方がない。
それから、ただひたすら山を登った。
すると、前方が明るく光っていく。草木の隙間から太陽かもしれない、この世界の全体を照らす光が差し込む。
「お! そろそろ頂上か!」
俺は急いで駆け上った。木々に印をつけることも忘れずに。
「ついた! ってマジか……。おお! マジか!」
やっとの思いで草木から出た俺の前では、半分の絶望と半分の喜びが入り混じったよくわからない感情になった。
前者の絶望とは、この世界は甘くなかったということだ。太陽の光だと思っていたものが実際は違かったということが分かったということと、頂上はまだ先だということが分かったという絶望だ。
頂上に行くためには、銀色に輝く岩を登らなければならない。ロッククライムしなければならないらしい。
ただ、幸い地面と垂直になっているわけではなく、斜めっているため、本格的なロッククライムしなくていいかもしれない。斜めに歩いていけばいずれ頂上に着くのではないだろうか。まぁ、怖いけど。
太陽に光ではない理由は銀色の岩が、太陽の光を反射していたというだけだった。
ややこしいことするなよ!
頂上だと思っただろうが!
絶望した理由はこれくらい。
「水がある!」
喜びはこのことだ。水たまりがあったのだ。それも結構大きく、湖といっても過言ではない。頂上に行くための岩を囲むようにして水が湧いていた。それはまるで、城を囲む堀のような感じだった。まぁ、戦国時代とか行ったことないんだけどね。
頂上に行くためにはこの水を渡らなければならない。
俺は近づき、水をすくう。水はとても澄んでいて美味しそうだ。これならろ過しなくてもそのまま飲んでもいい気がする。
「飲んでみるか」
俺はすくった水を飲んでみた。
「ん! めっちゃ美味しい!」
喉がとても渇いていたということもあるのだろう。水のありがたみを知った。
欲を言えばもう少し、冷たくしてほしいところかな。まぁ、無理だろうけど。
俺はたくさん飲んだ。
俺は気付くのが遅かった。
こんなところを動物、魔物たちが知らないはずがない。というか、来るに決まっている。
俺は水の畔で座って一息ついていた。
水が飲めたという幸福感に浸っていると、空から音が聞こえていた。
バサッ、バサッ。
「この音って!」
この音をこの世界に来てから俺は聞いたことがあった。
俺は慌てて、空を見上げた。
空にいる魔物を俺は知っていた。
「竜!」
俺が山を下りた時に見かけた竜だった。
急下降して、俺の方に飛んでくる。
食事が終わり、喉が渇いてこの場所に来たのだろう。そして、俺という次の獲物を見つけたのだろう。
俺は慌てて立ち上がり、元居た場所、拠点のある方へと走り出した。
空を見ながら走るが、竜の方が速かった。下りる場所を変え、俺の目の前に下りてきた。
俺は竜が下りた時に生じた風圧にやられ、腰を屈め腕で目を隠す。風が痛い。
風が止み、俺は目を守っていた腕をどかすと、竜が目の前で俺を睨んでいた。目が合うと、咆哮した。
耳が痛くなるくらい大きな咆哮だった。
「うるさい!」
俺は耳をふさぐ。
鳴き終わった竜は俺目掛けて突進してきた。
「戦闘になるのはわかるけどさ、俺まだ恩恵なんて使えないんだけど!」
退路を断たれた俺は竜と対峙することになった。
自分の力も知らず強敵と戦うことになった。
そして、俺は思う。
もしかして、俺このまま死ぬんじゃないか?
生き返ってよくわからない世界に飛ばされたと思ったら、一日も生き残れず死ぬのか。
「そんなのやだよ! 何とかして生き残ってやる!」
やっとファンタジーらしくなってきたのではないでしょうか。
まさか、竜が最初の敵とは主人公もついてない。
敵は選手だけではないんです。
ほんと辛い世界ですね。




