竜を運ぶ
少し遅れました。
すみません。
とりあえず火が付いた。
俺は竜の死体を焚火の近くまで持ってくることにした。
「竜って腐敗しないのかな?」
竜を倒してからもう数日が経っている。それも、冷蔵庫とかに入れて保存しているわけではなく、炎天下というわけではないがそこそこの気温の中普通に野に放ち放置していた。それなのに腐敗することなく初めのままの状態を維持したままなのだ。
焚火の場所から竜の死体の方へ移動する。
「”神化”」
竜の死体を焚火の方に持っていくため、恩恵を発動させる。体の中から力が溢れてくる。
「今日結構恩恵使ったから明日はまた、あの痛いのが来るのかな?」
自分の恩恵について、特に使い終わってからの代償についてよく知ることができていると思う。
明日は体中に激痛が走り、一日動けなくなるだろう。
恩恵になっている時間が多かったからな今日は……。
火が付かなかったんだよ。
次からはすぐに火が付くようになる。たぶん。
「さて、運ぶか……」
竜の尻尾を持つ。
「うっわ! スベスベ、ツルツルなんだけど!」
思わず竜の尻尾から手を離してしまった。
ドン!っと大きな音がたつ。
俺は意外と大きな音で驚き、周りを確認する。
この音で魔物がこちらに、俺の場所が気づいて押し掛けてくるのではと思った。
だが、そんなことは起こらなかった。
数分間、周りを見渡し続けたのだが、一向に魔物がこちらに来る気配がなかったのだ。
「ふぅ。……てか、なんでこいつスベスベ、ツルツルなんだよ!」
最初、倒してここまで持ってきたときはゴツゴツというかザラザラというかそんな感じだったんだけどな。
ローションを触ってる感じっていえばいいのかな?
触りたくないいんだよな。
「触りたくない。でも、肉食べたい。……むむむ。どうしよう」
腕を組んで本気で考える。
本当に嫌なんだよな。
「これって食べられるのか? もしかしたらこれがこいつの腐っているていうことを表しているのかもしれない」
少し考えていたらふと思い浮かんだ。
炒飯だって、数日そのまま置いておくとご飯から粘粘と糸引くようになるんだよ。知ってたか? 地球生活最後の日にそれを知ったんだけどな。
これ俺のとっておきなんだよ。
「でも、食べたいよな」
正直、竜の肉を食べてみたい。どんな肉なのか知りたい。
「……食べよう」
迷った末、俺は食べることにした。
というか、食べた意欲が最終的に勝った。
俺はスベスベ、ツルツルの竜を頑張って、我慢して焚火の近くまで引きずった。
「ふくものが欲しい。水を使いたくないな~。まぁ使うんだけどね」
水を使うのは後でだけどな。
「まずは竜の牙を抜くか」
竜の牙は切れ味が鋭い。戦闘でその切れ味というか怖さを体感した。
俺はこの竜の牙を武器として使えるのではと考えた。
使えるよな?
「昔の人なんて木の棒に恐竜の牙を取り付けて武器にしてたんだし」
これは、歴史の教科書の中にある画像から。
まさか、ここで歴史の教科書が使えるとは。
今まで歴史の教科書というか、学校の授業が将来使えるとは思っていなかったから驚きだ。というか、義務教育に感謝。
死んでから使えるものがあるんだな。
「……生きてるときに使えなきゃ意味なくね?」
出来れば生きてるときに役に立ててほしかったな。
「まぁ、いっか。もう死んでるし。そんなことより、牙を抜こう」
竜の牙を抜くため、竜の頭の方にまわった。
「絶対重いよな」
竜を見て呟く。
頭大きいんだよな。
「生身で持ち上げられるか?」
そろそろ恩恵は使いたくない。代償で次の日の痛みがあるのは嫌だ。
「とりあえず一回やってみるか」
俺はしゃがみこんで口に手をやる。
上顎に右手を左手を下顎に。
「うん。重いな」
少し右手で持ち上げてみるが、重い。
車のタイヤ二つを持ち上げているみたいだ。
長時間持つのは無理だ。
「これは使うしかないよな。う~ん」
少し躊躇いを覚えてしまう。
使いたくない。痛いのは嫌だ。
いや待て。
もうこの際、明日のことなんて考えなくてもいいんじゃないかな。
「明日のことは明日の俺に任せよう」
今(現在)の俺がよければそれでいいや。
俺は考えることを放棄した。
「”神化”」
本日何回目かわからない恩恵を発動させた。
次の更新は土日です。




