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Flavors ~ボクの担当は…………です~  作者: 建山 大丸
3話 その者、ハーレムチートご希望につき
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3-1 変化する環境

 僕は雁井 愁。フレーバーズ、コードネーム"カリィ"として、活動を始めたカレーを愛する高校生だ。

 僕が、フレーバーズになってから少し経ったけれど、僕の日常は変わった。

 それを紹介したいと思うんだ。

 僕がフレーバーズになって2ヶ月。


 僕を取り巻く環境はいろいろと変化している。


 「兄ちゃん、ただいま!」


 「おかえり」


“進行性感覚喪失症候群“にかかり、入院していた瑠羽が退院して家に戻ってきた。


 あのあとの検査で、足の感覚も低下していたのが発覚した瑠羽は、程度感覚が戻って来るまで病院でリハビリと“カリィラッソォ“の摂取をして治療を行っていたのだ。


 ただ、退院したとはいえまだ完治しているというわけではないので、定期的に“カリィライッソォ“を摂取しつつ、ヒーロー省が運営している病院に通院することになっている。


 これも、僕がフレーバーズになったから得られたものだ。


 そして、フレーバーズとして“仕事“をするようになったのであるイベントが月末に発生するようになった。


 「おぉ、今月も多いなぁ……」


 僕は、今月振り込まれている給料の額を見てそう呟く。


 初めての給料日の時は通帳に刻まれた数字の大きさに通帳を持つ手が震えるほどだった。


 命を懸けているから、その分の対価といえば確かにその通りなんだけど、それでもこの額は高校生に払うには高額過ぎない?


 そう思い、シュガーに尋ねたことがあった。


 「そうね、破格よ。そこまでして引き留めたいということだと思って欲しいわ。後、二人の時は名前で……こら!ちょっと待ちなさい愁君!」

 

 このまま話に付き合うと、シュガーが満足するまで名前で呼ばなきゃいけなくなるから、僕は聞きたいことを聞いたらさっさとその場から退散するのだった。


 シュガーと言い、ソルトやペッパーと言い、なんでコードネームじゃなくて名前で呼びたがるんだろうか。


 親交を深めた仲間ならまだしも、僕は1番の新人だし戦力でもない。


 ビネガーみたいに、距離をものすごく取られてるのも嫌だけど、近すぎるのも困る。


 そういう点では、カフェインの距離感がちょうど良いんだけどなぁ。彼は彼で問題があるからなぁ。



■■■■■■



 「夕飯できたよ!」


 瑠羽の元気な声が聞こえてくる。


 瑠羽が料理をするようになってから、家の料理担当はずっと瑠羽だ。


 父さんが家にいるときも、面倒くさがって瑠羽に料理を任せるくらいに、瑠羽の料理はおいしい。


 僕は料理が全くできないので、掃除や洗濯をしている。


 だから、瑠羽が入院してからは冷凍庫にある瑠羽が作っていたカレーストックか、レトルト食品か外食だった。


 今は、いつでも“カリィライッソォ“を食べれるから食料事情は大分改善されたけど、やっぱり瑠羽の料理が一番良い。


 「今日はなに?」


 「今日はカレーうどんだよ」


 「瑠羽のカレーは絶品だからな。楽しみだ」


 「……ちょっと待って。なんで君達、普通に混ざってるの?」


 僕がご飯を食べにリビングに行くと、そこにはソルトとカフェインがいた。


 ここ最近毎日夕飯と、時々朝食まで食べにきてるんだけど、それってどうなの?


 ねぇ、ソルト。なんで僕の家の冷蔵庫を勝手に開けて、瑠羽特製のラッシーを入れてるの?


 ちょっとカフェイン、いつの間に家の食器入れに自分の食器を入れてるの!おかしいって!!


 瑠羽も怒るどころか、最近はすでに四人分作ってるって馴染み過ぎじゃないの!?


 「愁、早く座れ。お前が来ないと飯が食えん」


 「いやいや、なんで君が仕切ってんのさ」


 とりあえず座るけれど、何か釈然としないなぁ。


 「瑠羽が、全員揃ってからじゃないと食べちゃいけないって言うからだ」


 僕が座ったのを見て、瑠羽のいただきますの一言で食事が始まる。


 相当お腹がすいていたのか、カフェインは無言でカレーうどんを一気に食べていく。


 それを見て、瑠羽はすでにお代わりの準備をしている。用意良すぎない?


 「質問に答えてないよね?」


 「そんなのどうだって良いじゃなの。で、あんたもラッシー?」


 「あ、うん。ありがと……じゃなくてソルト!」


 「は? もう一回言ってみ?」


 眼光鋭く僕を睨みつけるソルト。対応を失敗したら恐ろしいことになりそうな気がする。


 「……塩見さん、うちの冷蔵庫を勝手に開けないでよ」


 「良いじゃないの。誰が開けたって賞味期限は変わらないわよ」


 良かった。対応は間違っていなかったようだ。


 しかし、ソルトは僕をじっと見ている。まだなにかあるの?


 「な、なに?塩見さん」


 「それ」


 「え?」


 「珠美は名前呼びなのになんであたしは苗字なのよ」


 なんでそれを知ってるの!?


 誰もいない時にしか言ってないのに……まさか!?


 「糖谷がやけにニヤニヤしてる日があったからな。塩見に問い詰められて吐いたぞ」


 なにやってんのシュガー!


 そして、怖いよソルト!


 なんで笑ってんのカフェイン!


 お前もか瑠羽!!


 「珠美が名前なら、あたしだって当然そうよね。あたし達は仲間なんだから平等に扱わないとおかしいわよね」


 「平等って……」


 「それとも何?珠美は特別?」


 なんでそうなるのさ! 訳が分からないよ!


 「だったら、俺もいつまでもカフェインってわけにはいかないな。愁」


 カフェイン! お前もか! でも、こいつは絶対僕を弄って遊んでる。


 僕とソルトは良くカフェインにからかわれているから、今回も絶対にそうだ。


 だから、せめてもの反抗を試みる。


 「でも、ビネガーは……」


 「あいつは紅一郎にしか懐いてないから良い」


 僕のささやかな抵抗は無駄に終わった。


 「兄ちゃん人気者だね!」


 「違うよ瑠羽。兄ちゃんはからかわれてるだけだよ……」


 「ちょっと!! 人聞きの悪いこと言わないでよ」


 「お? 塩見。からかってるんじゃ無かったら本気で愁に名前で呼ばれたいのか。ほーう?」


 「な、え、あ、~~~~~~~!! カフィ! うるっさい! さっさとご飯食べるのよ!」


 「瑠羽、お代わり」


 「はいよー」


 こうして僕の家の食卓は、騒々しい日々が続いている。



■■■■■■



 とある日の夕方、学校の帰り道で僕はたくさんの人だかりに遭遇することになった。


 聞こえて来る話から想像するに、今、この場所で芸能人のロケが行われていて、その休憩時間ということでその芸能人がファンサービスを行っている最中だということだ。


 そういうのには全く興味の無い僕は、そのまま人垣を避けて進んでいく。


 その時だ。


 「あ、愁君。今帰りかい?」


 人垣の方から僕を呼ぶ声が聞こえる。なので、そちらの方を見ると、人垣の隙間をうまく避けて見知った顔がやってくる。


 「そうだよ、ぺっ……」


 「違うよね?」


 「下校帰りだよ……辛坊君」


 いつも通りの呼び方をしようと思ったら、明らかに不機嫌になったのでとりあえず言い直す。名前で呼ばれたペッパーものすごい満足そうだ。


 「ロケが行われてるって聞いたけれど、辛坊君だったんだ」


 「僕だけじゃないよ。蒼馬も一緒だよ」


 芸能界や芸能人に全く興味がなかったから知らなかったけれど、ペッパーこと辛坊紅一郎と、ビネガーこと酢谷蒼馬(すたに そうま)|は、最近話題のアイドルユニット【SPICE】のダブルセンター【コウ】と【ソーマ】だそうだ。


 しかも、ペッパーは自身が【フレーバーズ】であることを公表し、広報担当であるシュガーとともにマスコミ対応などをよく行っている。


 そのため世間ではペッパーがリーダーだと思われているし、ペッパーもそういうふうに振る舞っている。赤いしね。


 だけど、実際のリーダーはシュガーだ。特撮ヒーローという文化が根付いている僕の国ではありえない赤ではなく白がリーダー。しかも色被りの白。だから、表向きには赤のペッパーがリーダーということにしている。


 その方が皆にわかりやすいから。


 「そっかぁ。じゃあ、早くファンサービスに戻りなよ。ファンの皆が待っているよ」


 「あ、そうだね。君はさすがだね。それじゃあね!」


 僕がそういうと、ペッパーは思い出したかのようにファンの集まりの方へと戻って行く。


 良かった。さっきからファンの皆とビネガーから嫉妬のような、殺気のような視線をひしひしと感じていた

から、これで解放されそうだ。


 そう思いながら僕は、急いで帰宅する。さっき瑠羽からメールが来たけど、ご飯はカレーピラフだそうだ。お代わりもたくさん用意してくれたみたいだから本当に楽しみだ!


 「ただいま!」


 「おかえり、兄ちゃん」


 「遅いわよ。待ちくたびれたわ」


 「早く服を着替えて手荒いとうがいをしろ。風邪が流行ってるからな」


 「だから! なんで二人はもういるんだよ!」

 「安心しなさい。今日は、シュガーも後から来るわ」


 「さっき、連絡があったから、瑠羽がたくさんご飯を作ってるって言ったら、ロケが終わり次第ペッパーとビネガーも来るって言ってたぞ」


 なんて余計なことを……。僕の食べる分が無くなるじゃないか。


 「それは僕のお代わり……」


 「あんたは“カリィライッソォ“でも食べてなさいよ」


 「大丈夫だよ兄ちゃん、お代わりいっぱい作るから」


 「ありがとう! 瑠羽! 嫁になって!!」


 「やっぱり、兄ちゃんのおかわりは無しね」


 「ごめん! ごめんよ! もう言わないから許して!!」


 僕のカレーに包まれていた平穏な日常はこんな感じに、新しい仲間とともに変化している。


 なんだかんだ言っているけれど、人と食べるカレーはとても美味しい。


 「いただきます!」


 僕は今日も仲間とカレーを食べる。






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