1ー1 僕の名は
2000~3000文字書けたら投稿していこうと思います。
完全に勢いだけなのでご了承下さい。
近くで爆発音が鳴り響く。僕は咄嗟に身を伏せる。ギリギリ間に合わなくて爆風に吹き飛ばされる。
だけど運良く地面に叩きつけられるわけでも、壁とかに打ち付けられることもなく、転がるように跳ばされるだけですんだ僕は、とりあえず立ち上がって、安全そうな所を探す。
走り出そうとしたとき、手が空いていることに気づいて僕は落としたものを探す。
(…………あった)
僕が転がっていた場所に探していた物。蓋のしてある白い器を見つけた僕はそれを拾い、改めて安全そうな場所を探す。
そこら中で爆発音や金属を打ち合う音、やなにかが壊れる音が聞こえるこの場所で、安全な場所なんかあるわけない。
だったら、この場所から離れてしまえば良いのだろうけど、僕にはそれは許されていない。
(全く迷惑な話だよ!)
心の中で、この状況を作っている何者かに恨み言を言い、僕はとりあえず物陰に隠れる。
ここが安全かどうかなんてわからない。だけど、何もないよりは多分ましだ。そう思って僕は、僕のやることをする。
白い器の蓋を開け、その中身を懐に入れていた銀色の道具で掬い、それを眺める。
神々しいまでの金色の液体に、湯気が上る。色とりどりの物体が僕の心を踊らせる。白と金色のコントラストが、僕の喉を一気に潤わせる。
(いただきます!!)
この、心と体を爆発させる辛味、色とりどりの野菜から来る甘味。白いご飯と交わされる味の共演。
命の危機といえるこの状況でも、いや、この状況だからこそ、僕はこれを食べることをやめられない。
(こんな状況なのに、美味しい…………やっぱり最高だ…………)
これは僕のソウルフード、カレーだ。
僕の名前は雁井 愁。地元の高校に進学したカレーが大好きな高校生だ。
僕がカレーを好きになったのは、死んだひいじいちゃんが作っていたカレーがとても美味しくて好きだったから。
ひいじいちゃんは、とてもカレーが大好きで、当時は大きな戦争真っ只中だったのにカレーの本場だった敵の国にまで単身乗り込んで修業して、終戦後にひょっこり戻ってきて地元に【KariiCurry】なんていうカレー屋まで開いちゃったんだ。
当然いろいろあって大変だったみたいだけど、ひいおじいちゃんは溢れんばかりのカレー愛ですべてを乗り越えていったんだってさ。
じいちゃんが葬式の時にカレーを食べながら、泣いて話してたよ。泣いてたじいちゃんの顔はとても怖かったけど、多分深く聞いちゃいけないんだとその時思った。
溢れんばかりのカレー愛で包まれていた【KariiCurry】だけど、実際はそんなに繁盛してなくて、じいちゃんはカレーは好きだけど、生きていくのが大変だから跡を継がなかった。
跡を継いだのは、当時バイトで、何回振られてもアタックしつづけて母さんをゲットしたストーカー気質の僕の父さんだ。
僕の父さんも、ひいじいちゃんに負けず劣らずのカレー愛の持ち主で、カレーの本場に行き、カレー博物館を制覇し、最近ネットの世界ではカレーの帝王と呼ばれているようだ。
なのに、ネットでは自分の顔は見せないし、店の宣伝は一切しないので、【KariiCurry】は、やっぱり繁盛していないんだ。
そんな環境で育った僕だから、カレーはとても大好きだ。毎日三食カレーでも何の問題もないくらいには好きだ。おやつにカレーパン、夜食にカレーうどんを足しても問題ない程度には好きだ。
だから、小学校の時に着いたあだ名は【カレー愁】だったけど、むしろ誇らしかった。
ただ、僕には問題があって、料理が出来なかったんだ。だから、カレーを作ることが出来ない。レトルトならできるけど、カレールーを使ってカレーを作ることすら出来ない。いわゆるメシマズだ。むしろ、奇跡だよ。
だから僕には【KariiCurry】を継ぐことが出来ないだけが残念だけど、商売っ気のない父さんの代わりに経営面で見せを支えられればと思って、中学校の時に必死で勉強して、地元にある県内で1番の進学校へ進学した。
中学校の担任の先生には奇跡が起きたって言われたよ。だけど、必然なんだ。
【カレーへの愛は不可能を可能にする】
それが雁井家に伝わるカレー愛だからね。
そんな僕が、何でこんな状況でカレーを食べてないといけないのか。
それは…………
ーこの世界は狙われているー
そんな、訳のわからない戯言のような言葉が始まりだったんだ。
ご覧くださって有難うございます。