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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

非王道な小話

作者:

自サイトの過去拍手から転載。

 破天荒な転入生に生徒会役員を骨抜き&仕事放棄されたこの学園の終わりは近いだろう。

 そんな哀れ学園の生徒会長を務めていた俺は、巻き込まれた普通の一般生徒を手助けし、こっそりと非難させたり、俺の親衛隊を使って他の親衛隊達に襲われたりしないように気を配っていたが、それも少し目を離した隙に転入生自らその一般生徒に大怪我を負わせ、入院させてしまった。

 意識が戻らない程に重傷を負わされた生徒の医療費は全て俺が負担した。

 こんな時ほど家の都合でしていた仕事で得た収入を重宝したことはない。

 学園内でこんなことが起きてしまったと頭を下げ、その生徒の家族達に謝罪をすれば、なんと出来た人達なのだろう。涙を堪えながらも、俺がこの生徒の手助けをしていたと知っていてくれ、逆に感謝の言葉を頂いてしまった。

 罪悪感が募る一方で、同時に多大なストレスも溜まってくる。

 叱り飛ばし、仕事に専念しろと言い聞かせても一向に生徒会室に来る気配の無い副会長、会計、書記、庶務に苛立って仕方ない。

 限界を迎えていたある日のこと。

 もう仕事仕事で疲れ果て、生徒会室の自分の席でぐったりしていた頭上に、とんでもない放送が降ってきた。


『これより緊急集会を行います。生徒の皆様と教務員の皆様方は、体育館へお集まり下さい』


 嫌な予感がしてならない俺はしかし、ここで行かなければ行かないで何かとんでもないことが起こってしまいそうだと、疲れた身体に鞭打って体育館へと急いだ。


     ○


『生徒会長をリコールします!』


 俺の親衛隊達は凄まじい勢いで反論をしたが、生徒会役員達と風紀が手を組んでいたのか、俺のリコールは決定されたものとなっていた。

 唖然。そして、呆然。

 俺がどれだけ必死こいて仕事をしてきたんだと、せめて最後に噛み付こうとしたのだが、それを遮る者の声が体育館に響いた。


「お前か。生徒会長にして俺の大事なカナトを親衛隊に襲わせ、意識不明の重体にさせた張本人は」


 声のする方を向けば、かなりの長身の男が立っていて。不機嫌そうに眉を顰めて見つめる先は、俺一人で………。


「なっ……!?違う!俺じゃっ……」


『その通りです。鳳凰様』


 鳳凰……世界各国に支社を持ち、日本でも有数の実業家達が集まるという、頂点に位置する者が名乗ることの許される姓。

 カナトというのは、転入生に巻き込まれたあの一般生徒の名前だ。

 つまり、カナトは、鳳凰に見初められた唯一の…………。


『生徒会長は仕事をしないことを注意して下さったカナト君を逆恨みし、自らの親衛隊を使って暴行を繰り返してきました……私達も何度止めたことか。それなのに、あのようなことになってしまい、本当に申し訳ありません』


 なんだそれはっ!?デタラメにも程がある!

 このまま言わせておけないと副会長に異議を申し立て、鳳凰に弁解をしてみた所で既にこの男は副会長達の言葉を鵜呑みにしてしまったようで、聞く耳すら持ってはくれなかった。


「丁度お前を欲しがっている奴がいてな……」


『どうぞ。そのような学園に相応しくない生徒会長はいりませんので、好きにして下さって構いません』


 トントン拍子に話が進み、気が付けば俺は実家からも縁を切られ、学園は退学扱いされており、更には日本からも追い出されていた。

 外国の金持ち達が集まる、秘密裏にされている裏カジノ。

 そこを経営している男に俺は売られてしまったようだ。

 凛々しい顔立ちに野獣のようなギラギラした金色の瞳。

 広い部屋の広いベッドの上で、俺は首輪をされて鎖に繋がれ、自由の無い身へと落ちた。

 身体を暴かれるのにも、男に奉仕するのにも慣れた俺は、毎日与えられる快楽に身を焦がし、いつしか男を激しく求めるまでに淫乱な身へと変貌する。


 ……あ、いや。だってな?


 こうなったら言わせてもらうけど、あんだけ仕事仕事で禁欲生活が数ヶ月も続いたんだぞ?その反動が来てもおかしくねぇだろ。

 それに、こんな良い男が身寄りもなくなった世間の弾き者な俺に夢中になってんだ。悪い気はしないし、する気もねぇ。

 それに付いてるナニは立派だし、あれやこれやは気持ちいいし、休日には俺に構い倒しだし。

 食事は美味しいし栄養あるしで、なんて幸せ贅沢三昧なんだ!


「どうした?」


「いや、人生にはやっぱり機転が付き物なんだなぁ……って思って」


「そうか。それよりタクミ。今度は何処へ行きたい?」


「んー……、でも結局はホテルでセックス漬けだろ?だったらここの部屋で良い」


「綺麗な景色が楽しめるのに、か?」


「俺は毎日綺麗なものを見てるから、いつだって楽しいぞ」


 そう言って男にキスをし、身体を密着させる。

 可愛い奴……と呟いて深すぎるキスをお返しにしてくる飼い主……いや、恋人に俺は頬を染めて全身を熱くさせた。


 ……くわぁ……やっぱ愛されるのって、幸せだなぁ……!


 学園?もう二度と戻りたくねぇし、あいつらにも会いたくないね!

 この間、男が教えてくれた情報によると、俺がいなくなった学園は荒れた状態が続き、副会長達が仕事していないのが皆にバレ、役員達と風紀委員達は実家から勘当された上に強制退学処分だと。ざまぁ!

 さらには生徒会長であった俺だけが仕事をしていた状態だったと、俺の親衛隊達が健気に真実を広めてくれた御陰で実家から戻って来いコールが。


 ……誰が戻るか。人の話も聞かずに縁切りしやがった癖に。


 カナトは意識を取りもどし、恋人の鳳凰とイチャラブ生活をしているようだ。

 まぁ良かった良かった。

 俺のこともきちんと伝えてくれたのか、俺に莫大な慰謝料とか、日本へ帰国させるとか言っていたけど、それも蹴った。

 だって、今更元の生活になんか戻れねぇ………。

 こんなにも“気持ちの良いこと”と“愛される悦び”を知ってしまった俺は、もう手遅れな地点にまで到達しちまったし。


「ん、……ふ、……ぁ……なぁ、もっとキス、ちょーだい」


「やけに今日は甘えん坊だな」


 クス、と笑って俺を愛そうと、大きな手と腕で包み込んでくれる男の香りを肌で感じながら、俺は背筋に奔った微量な甘みに身をよじらせた。




END.

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