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コート・サイド・ラバーズ  作者: 大和麻也
Advantage ――猛追――
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♪土壇場

 藍先輩が苦手なものだから、初めて生徒会室に赴く緊張もあってついつい逃げ出してしまった。ほどほどに時間を潰したら、ちゃんと生徒会室に戻って忠の手伝いをしないと。

 適当に時間を潰すにはどうしようか。岡田先生に会うという嘘を吐いた手前、自販機のジュースを飲んで過ごすのは申し訳ないし、この時間に岡田先生がたまたま忠たちと出くわしてしまったら手痛い。

 結局、わたしは職員室に向かうことにした。岡田先生と適当に授業のことでも相談しよう。悩んでなんかいないし、むしろわたしの中では余裕があっての成績なのだけれど、成績を悪くしているのだから話題をでっち上げることくらい容易い。

 階段を一段ずつ踏みしめるたび汗が滲ませ、職員室の扉を開ける。ひやりとした空気に全身が包まれると、心臓がどきりと跳ねた。

 そろりそろりと岡田先生がいるはずの数学科のブースへ向かうと、岡田先生は女の先生と話していた。

「おお、恵那」

 誰だろと思っていると、岡田先生のほうから声をかけてきた。

「どうした、何か用か?」

「ああ、いえ、大したことではないんですけど……」

 わたしが視線を泳がせていることに岡田先生が気づく。

「前に行ったよな、美術の鎌本先生だ。ちょうど、テニスの話をしていてな」

 かまもと。

 え?

 つまり、鎌本春子?

 十年前の事件に関わっている可能性があるとして、忠がずっと調べていた美術科の非常勤講師。しかも藤井英人の妻である鎌本恵子の姉かもしれない人物!

「恵那さん、ということは、テニス部を作ろうとしている――」

 鎌本先生は驚いたようにわたしを見て、穏やかに微笑んだ。

 わたしは汗をかいた。


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