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コート・サイド・ラバーズ  作者: 大和麻也
Advantage ――猛追――
45/54

♪推薦制度

 久しぶりに忠に出会って嬉しい気分でいたところを、先生との面談で水を差された。

 成績のことについてぐちぐち言われ、すっかりげんなりしてしまった。わたしだって、もっと真剣に挑めば忠にだって負けないくらいの点数を取れるはずだ。いまは何を言っても信じてもらえないだろうし、疲れたくないから現状維持を貫くのだろうけれど。

 だだっ広い職員室を出ようとしたところ、ちょうど、先日会ってはじめて名前と顔を知った白髪の長い顔も職員室を出ようとしているのに出くわした。

「あ、こんにちは」

 あいさつすると、校長先生は穏やかに相好を崩した。

「やあ、恵那さんだね。調子はどう?」

「まあまあです」

「部活?」

「面談で来たところです。きょうはもう帰ります」

 校長先生は、わたしがテニス部を再開させようとしていることをまだ知らないらしい。ただ、わたしたちが嗅ぎまわっていることについて快く思わない先生がいるわけで、事実鎌本先生が難色を示しているのからすれば、十年前も永正学園に勤めていたであろう八重樫先生が協力してくれるはずもないだろう。

 でも、それとなく試してはみよう。

「活動日が中学のころより多くないんですよね。高校生ってもっと忙しいと思っていたので、ちょっと意外でした」

「まあ、お盆も近いからね」

 八重樫先生は歩き出す。職員室から向かう場合、校長室に行くにも昇降口に行くにも、途中まで同じ廊下を歩くことになる。

「あんまり強くもありませんし。昔は強かったらしいんですけど」

 校長先生は柔らかく微笑んでいるだけだ。

「この学校、スポーツ推薦はないんでしたよね。だったら、そこまで上には行けないか」

「それだけ練習すればいい。それに、勉強だって大切」

「わたしのことを言われているみたいです」

「はは、いい心がけじゃないかな。スポーツ推薦だと、どうしても学力や怪我の問題にぶつかってしまう生徒が多いからね。心して、英語も忘れないように」

「は、はあい……」

 八重樫先生は校長室へ向かって去って行った。

 やはりいまの校長は、スポーツ推薦を反対しているらしい。柴村丈一郎の代にはあったものだから、柴村丈一郎の死後、反対派が主な職員となっていてもおかしくない。

 そういえば、忠は部室の『ドウシテ、殺シタノニ』の文面を、その通り殺人として考えることをやめないと言っていた。だとすると、スポーツ推薦を良く思わない誰かが柴村丈一郎を殺害した、ということになるのだろうか? 教員の誰かが――となると話はさらにややこしくなりそうだ。

 とはいえ、結論を急いで藤井英人が犯人だと仮定しても、話の辻褄が合うようには思えない。テニスプレイヤーを目指す過程でテニス部にも所属したわけだから、ひょっとすると藤井英人自身がスポーツ推薦で入学していた可能性もある。スポーツ推薦をなくしてしまっては、自らの首を絞めるのみ。

 一般入試で入学したと仮定した場合、藤井英人はスポーツ推薦、もしくはスポーツ推薦で入学した生徒に反感を覚えていたのだろうか。でも、それは誰?

 結局のところ、忠に頼るところは多いのかもしれない。


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