表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コート・サイド・ラバーズ  作者: 大和麻也
Love ――はじまり――
1/54

♪試合開始

 清瀬忠……高校生

 恵那みのり……高校生

 岡田幸介……数学教師

 藤井英人……テニスプレイヤー


※登場人物は各章まえがきで追加されます




「Wich?」


 境界を越えて右腕を差し出し、彼が訊く。

 でも、向こう側のふたりは意味がよくわかっていない。

「Smooth or rough?」

 まだ解ってもらえない。それでも彼は優しく微笑みながら問い直す。

「Up or down?」

「あ、……ダウンで」

 ようやく解ってもらえた。それを確認すると、彼は右腕の延長を手放しコマのように回転させる。やがてバランスが崩れると、カランコロンと音を立てて倒れた。

「Show me it」

 彼が手で示すと、向こうのふたりのうち男のほうが、倒れたそれを持ち上げる。見ると、メーカーの頭文字である『U』が逆さまに見えていた。

「Downだね、トスはきみたちの勝ち。どうする?」

 とは訊かれても、向こうのふたりはどうすればいいのかわからない様子だ。

 彼は笑顔を絶やさない。

「コートの選択権を選ぶ? サービスの選択権を選ぶ? ……それとも、僕たちに選ばせる?」

「じゃ、じゃあ、サービスで」

「OK.なら僕らは、レシーブで校舎側のコートを取るよ。よろしく」

 そう言って、彼はコートの端へと歩いていく。

 けれども、わたしも相手のように、ルールをよく知らないひとり。どうしたものかと立ちすくんでしまっていると、彼が助けに来る。

「みのりはそこで構えて」

「あ、うん」

 それだけ言ってまた持ち場に戻るかと思ったが、途中でちらりと振り返る。

「ラブゲーム、狙っていくよ」

 白い歯を見せ、彼はさっきまでの微笑みとはまた違った、茶目っ気のある笑顔を見せてくれた。その表情を見たとたん、理由もなしに自信と期待がみなぎってきた。

「……もちろん、任せて。(ただし)、頑張ろう!」

 わたしも笑顔で返すと、彼は何も言わずに相手を睨むように構える。この姿を見るだけで、わたしはとても幸せな気持ちになる。頼りがいのあるカッコいい相棒だ。

 もう言葉は要らない、わたしたちは互いに直感していた。


 七月、永正(えいしょう)学園高等学校。

 球技大会テニス、ミックスダブルス部門決勝戦。

 清瀬(きよせ)忠、恵那(えな)みのりペアが完全優勝を果たす瞬間だ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ