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2人は合流したあと、クイズをするために先生が待機している教室に向かって移動していた。
「ほら、急ぐわよ」
「追いかけられていた、俺に配慮はないのか」
「あら、最後は隠れていたんじゃないの?それに男子なんだから頑張りなさい」
桐野はそういうと、神崎の手を引いて走り出した。もちろん、近くにいた男子生徒たちは神崎に今すぐ殺そうと思うほどの殺気を飛ばした。
この殺気に神崎はどうでもいいやと開き直ってしまった。今更、気にしてもしょうがないし、一緒にペアを組んでる時点で殺気は嫌というほど、あてられたからだ。神崎は基本的にめんどくさいことが嫌いだ。なので、わざわざ自分から手をほどこうとは思わず、そのまま手を繋いだままにした。
どうこう言っている内に2人は最初の教室に着いてしまった。桐野が先導して扉を開けて2人は教室に入った。中に入ってみると教壇には2人の担任の本郷先生が立っていた。
「お前たちか。よかったな、神崎、みんなに人気の桐野がペアで」
本郷先生は神崎にニヤニヤした笑いを向けている。
「みんなに人気のせいで、こっちは大変ですよ」
「だろうな」
その横で桐野は、平静を装いながら心中では面白がっていた。言い寄ってくるでもなく、男子生徒たちに追いかかけられたことだけを嫌がっていることに桐野は興味がわき始めた。桐野はもっと面白いことをしたらどうなるかを考えていた。
先生と話していた神崎の背中に急に悪寒が走った。悪寒の原因であると思われる桐野を振り返ってみたが全く表情の変化がなかった。
「なんか、悪いこと考えてなかったか?」
神崎は自分の勘を信じて、聞いてみることにした。
「いいえ、なんにも考えてないわよ」
図星だったはずなのに表情を全く変えない桐野だった。
「では、お前らに問題を出す」
本郷先生はそう言うと、どこから取り出したのかフリップを教壇の上に出した。
「ナポレオンが最終的に島流しにあった島は?」
「「セントヘレナ島です」」
2人とも即答であった。言うまでもなく2人は成績がトップレベルなのである。特に桐野は全テストで満点を出すほどなので、こんな問題は問題のうちに入らなかった。
「2人とも即答だな。では次の問題、行くぞ」
そういうと本郷先生は次々と問題を出していった。もちろん、2人は回答に詰まることなくスラスラと答えていった。
20問答えたところで、本郷先生がフリップを仕舞った。
「それじゃ、終わりだ。次、行っていいぞ」
そう言われると2人は教室に入って来たときのように桐野が神崎を先導して出ていった。