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琴吹がタクシーを扉を開けて出ようとする時、誰かが琴吹を押し込んでタクシーに入って来た。
「琴吹、すまないがこれを付けてくれ」
「神崎君!」
タクシーに入り込んできたのは、遊園地のグッズに身を包んだ神崎だった。
「すまないが琴吹、これを付けてくれ」
神崎が取り出したのは、帽子、サングラス、マスク、と琴吹の顔が完全に隠れるものだった。
「えーー、まぁ、でも仕方ないか」
「悪いが我慢してくれ」
琴吹は嘆息するのも仕方がない。今日の為に早きをして、服や髪形をセットしてきたというのに変装をしてしまったら、その努力が無に帰ってしまう。しかし、このままではデートを続けることが出来なくなってしまうので、渋々、琴吹は神崎の提案を受け入れた。
琴吹が変装している間にタクシー代の清算を済ますと、神崎はタクシーを降りた。
「それじゃ、入場ゲートに行きますか、琴吹さん」
「あ、ちょっと待ってください、神崎君」
少し遅れて、タクシーから出て来た琴吹は神崎を追って入場ゲートに急いだ。
「もしかしてチケット、先に買ってくれたの、神崎君」
「この時間だし空いてたしな」
「あとで、さっきのタクシー代と一緒にお金払うね」
「別に金に困ってるわけじゃないから、いらないぞ」
「そういう問題じゃないの、気持ちの問題なの」
「わかった」
時間が10時半と言うこともあり、入場ゲートの列もなく、すんなりと2人は遊園地に入れた。
「それで遊園地で何がしたいんだ」
入場ゲートに列が無かったと言うことは当然、中には列が出来てると言うことだ。
「うーん、特に何も決めてなかったんだよね」
「それじゃあ、とりあえず、どれかのフェストパスでも取って、何かの列に並びますか」
「そうですね」
神崎は変装をする必要はないのだが、琴吹に合わせて顔を全体を隠している。ここがディズニーでなかったら、周囲から浮いてしまうだろう。
そんなこんなで短めの列のアトラクションの列に並んだ2人だが、時間が昼時も近いことがあって、食事の話になっていた。
「昼はどうしますか?」
「何処かに入って食べてもいいけど、たくさんアトラクションに乗りたいから、別に立って食べても全然、問題ないよ」
「それなら、並んでる間に何か、買ってきましょうか」
「お願いします」
楽しんでいる2人を横目に不穏な影が近づいていた。




